文章が大事じゃない世界は来るのか?

文章が大事じゃない世界は来るのか?

いつの時代も何かしらの機密文章ってのはあって、決まって重要な役割を果たすことがある。それは人類史上言葉を使い始めて、筆記することが開発されてきてからずっと続いてきているのだが、最近どうもこの文字を使いこなす人が減ってきたように思う。と、今日はそんな話。

Takeshi Iwata

2022/7/29

言葉を文字にすると意外と伝わらない

言葉を文字に起こす仕事をたまに依頼される。これがまた文章化することが難しい対談やインタビューは存在する。
たまたま頂いた仕事で、医療現場のカスタマーサービスだったか、IT化の話だったかだった。話の内容はとても興味深く、専門用語さえ理解していれば十分に納得できる文章に仕上がると思っていた。そして実際に文章化していざ読み返してみると、まったく理解のできない内容になっていたのだ。
つまるところ専門用語が多すぎて、読者に伝わらない内容だった。そして専門用語にいちいち注釈をいれていかないと理解ができないのだ。
専門家同士の学術的内容で学会に発表するような記事であれば文字起こしした文章で十分理解はできるのだが、いざ興味のない読者向きの内容かと問われたら疑問符がつくのだ。
言葉はあくまでも言葉、知っている人が知っている内容を話す行為はそれを知っている人向けの発信だと思う。文章とは万人に伝わる内容が文章であって、伝わらない時点で執筆者の負けなのだ。だからじゃないが、依頼された内容の納入品は正直納得できない品質だった。

言葉を文章にするにはどうしたらいいか?

言葉を文章にするには?となるだろうが、文章にする際に注釈を入れるか、専門用語を噛み砕いてわかりやすく伝える努力をする、この二点だと思う。専門用語ばかりの内容の本を読んだことがある人はわかると思うが、ある一定の理解を求められていて、それでいて知識を動員して読まないと理解できない本は本当に読み辛い。
読み辛いだけならいいが、読了感は最悪だ。読むのに疲れてしまう文章は暴力のそれによく似ているのかもしれない。
うまいライターはこのことを理解しているので、注釈を入れながらもスラスラと読める内容にまとめる。まとめた上で読了感をもたせるのだから文字起こしの本職は十分なスキルといえる。また、難しい言い回しを上手に変換するライターもいる。筆者はどちらかといえば言い回しを変換する方法を取る。自分が理解できない内容は文章にしたくないのだから、その作業は怠らないように心がけている。
言葉は間違いなく文章にならないと思いながら文字起こしを行わないと後でとんでもなく読みにくい文章が完成する。だからじゃないがインタビューの文字起こしは機械化できないのでは?と思う次第。実際にニュースや時事の内容が機械化されて文字化した時代にはなったが、血の通った言葉を文字化できても文章にはならないのだろう、これを解決したらITは文字起こしライターという職業を潰しかねない。

文章が大事じゃない世界は来るのか?

この先ずっと動画SNSが文章に成り変わる時代になるのか?という疑問が湧く。筆者の経験値から述べると、その時代は今だけだ。
この先も人が言葉を使う限り、文章が大事じゃない世界は続かないし、何より他人とコミュニケーションをとる手段が衰退することはないだろう。
SNSで140文字を書くのが精一杯とかでも続けて読むと実は文章になっている。書き手は減ってきて小説というジャンルが衰退することもない。物語を綴る人がいなければエンターテイメントは始まらないからだ。脚本家が言葉で伝えても伝わりきらない内容や小さなニュアンスを役者が汲み取るのも同じこと、文章が大事にならない時代は来ない。
ただし文章を読む能力がここ数年下がってしまい、文章の価値は落ちていないがもっと目線を下げなければ伝わらなくなってきたと感じる。とてもさみしいことだけど、他人は自分が思っているほど文章を読まない、読まなくなった。読めなくなったといったほうが正確で、漫画でさえスマホやタブレットで動画として流れて来る時代で、今の小学生は少年ジャンプの読み方がわからないと来ている。紙の雑誌はオワコン!ではなく、漫画こそ文章に触れる
Takeshi Iwata
愛知県出身、岐阜県在住のフリーライター。主な執筆先は名古屋情報通、和樂、All Aboutなど。愛知県尾張周辺の文化、風習をこよなく愛し、町とまつりが好きな40代。ええじゃないかの精神で日々執筆にあたる文筆職人は実は仮の姿で、実は本職は結構硬い士業だったりする。尾張徳川家7代目藩主、徳川宗春にリスペクトをうけ、その当時の風習や文化を研究する研究家。

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