独走のリーダー【中】アベノミクスの申し子 高島市政の実像に迫る
こちらは高島市政2期目の実像に迫った、2016年11月29日付朝刊の記事です。年齢や肩書などは当時の情報です。
福岡市長高島宗一郎は今、首相の安倍晋三と最も近い首長かもしれない。
1月11日。地元の山口県下関市・赤間神宮に夫人の昭恵、母親の洋子らと新春参拝をした安倍のそばに、高島の姿があった。参拝後、安倍は5千人近くが詰めかけた地元後援会の会合で前座のあいさつに高島を指名し、上機嫌でマイクを握った。「きょうは関門海峡を越えて高島市長が駆け付けてくださった。福岡市は今、クルーズ船がたくさん来ていてすごい。下関にも2、3隻回してほしいぐらいだ」。この日、ごく少人数の会食の場で安倍は高島に語り掛けたという。「九州、西日本をけん引してもらいたい」
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6年前の福岡市長選当時、自民は野党だった。高島陣営を仕切った「生みの親」の現副総理・麻生太郎は選挙前、安倍を呼び出して政治経験ゼロの36歳の名前を告げ、予言した。「福岡から自民ののろしを上げる」。高島は現職を破り初当選、2012年には安倍が党総裁に返り咲き、衆院選で政権交代を果たして首相に復帰した。安倍は福岡市を国家戦略特区に指定、ロンドンでの対日投資セミナーにも高島を同行させた。
蜜月が決定的になったのは14年、2期目の市長選投開票日だったという。
「アベノミクスの成長を福岡で実感できるようにしていく」。当選インタビューでこう宣言した高島に対し、安倍はすぐに「ありがとう」と架電。以来、2人の間には携帯電話とメールのホットラインが通じる。
ミャンマー国家顧問兼外相のアウン・サン・スー・チーが来日した今年11月、安倍は歓迎夕食会に首長で唯一、高島を招いた。用意されていたのは、「ポスト安倍」候補に名前が挙がる防衛相の稲田朋美に近いテーブル席。安倍と20年来の親交があり、高島のブレーンでもある県議は「安倍の高島へのほれ込みようは異常なぐらい。フィーリングが合うんだろう」と話す。
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安倍は規制緩和などで高島を全面支援し、福岡をアベノミクスを宣伝する象徴都市にしたい。高島は安倍に応えてスピーディーに街づくりの成果を出すことで、安倍政権を支える-。
2人の関係は一蓮托生(いちれんたくしょう)のように見える。ただ、かつて同じように安倍と太いパイプを築き、維新という一大政治勢力を率いた前大阪市長の橋下徹と違い、高島は自身の動かせる「数」をバックに相対しているわけではない。
市幹部OBは顔を曇らせる。「官邸から(福岡市の案件で)指示が降ってくるので、霞が関(の省庁)は良い印象を持っていない。自治体は『全方位外交』をした方が良いんだが…」 (敬称略)