毎回誤字報告してくれる皆さんに感謝
「……借りだなんて思わないからな」
七草真由美、渡辺摩利の二人が立ち去った後、硬直した空気を壊したのは森崎駿だった。
森崎は達也に向って吐き捨てるようにそう言った。その表情はまるで苦虫を潰したかのよう。
徹底的に二科生を見下している森崎にとって二科生に借りがあるというのは耐え難いのだろう。
「貸しだなんて思ってないから安心しろ」
達也はあくまでも冷静にそう返す。
事実達也はそう思っていた。
森崎を庇ったわけではなく、あくまでも妹のために起こした行動だ。
結果的に森崎を救う形になっただけでそれを貸しにするほど図々しくはない。
「……僕の名前は森崎駿。お前が見抜いたとおり、森崎の本家に連なる者さ」
「見抜いたなんてそんな大層な話じゃない。単に模範実技の資料映像を見たことがあるだけだ」
あくまでも冷静でその姿勢を崩さない達也、それを睨む森崎。
やはり二人の溝は深い。
その溝は一科と二科の間にある溝でもあった。
「僕はお前を認めないぞ、司波達也。司波さんは、僕達と一緒にいるべきなんだ」
あくまでも一科は一科で行動すべきだと主張する。
そう言うと森崎は達也から五条に目線を移した。
「それと、五条悟…さっきはすまなかった」
「気にすんなよ。マジで無傷だし」
自分の放った魔法で負傷をしているかいないかではなくクラスメートに対して危険行為を働いたことに罪悪感を抱いている様子だった。
根っから悪いヤツというわけではないようだ。
森崎はそれだけ言うと達也たちと口論していたA組メンバーを率いながらそのまま立ち去った。
立ち去る森崎の後ろ姿を見ながら五条は一人思案していた。
(そういえば雫とほのか、最初から達也陣営にいたけどいつ仲良くなったんだ)
五条は途中で気がついた。
口論は主にレオやエリカ、美月といった面子が中心だったためあまり目立っていなかったが深雪を守るように二人で深雪の前に立っていた。
(原作と乖離してる?……なにかおかしいな)
五条の胸にはまるで出そうで出ないくしゃみのようなもどかしさを感じた。
しかし五条自身にも原因がわからなかったのでとりあえずそれについて考えるのは止めた。
「じゃあ俺帰るから、お疲れサマンサー」
ふざけた挨拶をしながら五条もその場を後にしようとした。
ほのかや雫に手を振りつつそのまま校門まで歩いていくがそれを止める声があげられた。
「あ、ねぇ!ちょっと!」
エリカだった。
「よかったら君も一緒に帰らない?」
思わぬ誘いに五条の顔はスペースキャットになった。
◇◇◇
「で、五条くん、さっきのことについて聞きたいんだけど」
帰り道、エリカから誘われる形で達也たちと一緒に帰っていた。
だが背も高く、常にアイマスク着用という不審者スタイルの五条。
初対面において最悪の印象を与える五条を交えてしまったことで場の空気はなんとも言えない微妙なモノになっていた。
それを打開しようとエリカは喋りかけたのだ。
「ん?さっき?」
「ほら、私の攻撃を食らって無傷だったでしょ?そのことについてよ」
別に種明かしをしても問題はない。
バレようがバレまいが五条が負けることは絶対にない。
それは五条自身が抱く単なる自信でもなんでもなく事実だ。
だが先程から感じる皆の視線とあからさまにこちらを警戒する達也をうざく感じていた五条はあまり喋る気分にはなれなかった。
「あーそれについて?まぁ別に説明してもいいけどさ、お前誰だよ」
忘れているかもしれないが五条はここにいる半数の名前を知らない。
正確に言うと認知はしている。
だが名乗られたことが一回もないのだ。
原作知識がなければエリカだって「誰だ?」ってなる。
「あ、そういえばそうだったわ。私の名前は千葉エリカよ。よろしく」
「俺は西城レオンハルトだ。レオでいいぜ!」
「柴田美月です、えっと……」
「あー五条悟だ。五条でも悟でも好きにしろ。で、そっちは……」
五条は達也と深雪の方を見て言葉に詰まってしまった。
深雪は総代、達也はさっき名乗らされていた。
ここで名前を聞くのは不自然だと五条は感じた。
「司波深雪です。これからよろしくお願いします、五条くん」
「司波達也だ」
だがそんな五条の考えを知ってか知らずか二人は名乗った。
「うん、まぁよろ」
(……意外と普通だな)
五条は二人のことを意外と普通だと思った。
勘違いしないでほしいが五条は別に二人を嫌ってはいない。
ただ苦手なだけだ。
二人は勿論原作キャラだから一度は喋ってみたいと思ってはいるが苦手故に深く関わりたくはない。
しかし二人とのファーストコンタクト、意外と普通だった。
原作を知らなければこんな奇妙な感想を抱かないだろう。
「じゃあ自己紹介も終わったことだし改めて聞くけど、私の攻撃を受けて何で無傷なの?」
エリカは勘違いしていた。
そもそも五条には当たっていない。
五条は食らった時にも「当たっていない」と言ったがそれは嘘で本当は攻撃は当たっているとエリカは考えていた。
「だから当たってねぇってば、しつけーな」
「でも確かに私は手応えを感じたわ。あれで当たってないなんて信じられない」
五条は頭を掻き、面倒くさいと思いつつも少し説明することにした。
ちなみにエリカ以外の面子も話には入らないがずっと話を聞いていた。
「お前の攻撃は俺に当たったんじゃなくて『無限』に当たったんだよ。だから手応えを感じた。わかった?」
「無限?」
「五条、その無限とはなんだ?」
達也が五条に尋ねる。
「お、なになに達也〜もしかして気になっちゃう?」
五条は煽るように聞いた。
ここでどんな反応をするか見てみたかったのだ。
「気にならないと言えば嘘になるな」
五条の煽りをモノともしない冷静な態度に五条はどこか寂しく感じた。
(コイツ…本当に感情ないんだな。いやないというより薄い…か)
五条にとって人とは感情を持ったモノだと思っている。
例えロボットでも自我があり感情があればそれは五条の価値観において人間だ。
体が肉か鉄かは関係ない。
だが目の前の司波達也という男は体は肉で出来ているが感情が薄過ぎる。
果たしてこれは人間といっていいのだろうか。
「五条?」
「…あー悪い。少し考え事してたわ」
五条はらしくないと頭を振った。
「で、何の話だっけ?」
「無限について」
雫が教えてくれた。
感情が表にあまり出てはいないとはいえ、こちらに興味を持っているのがわかる。
だが、五条はその期待に応える気はなかった。
「いや、もう説明は終わりよ。終わり」
正直説明が面倒だし、そんな気分ではない。
「ここまできてそれはないぜ、悟……」
レオは思ったよりも気になっていたのかガックリと肩を落としていた。
脳筋に見えるがやはり彼も魔法科。
見たこともない魔法が気になるのだろう。
そしてレオ以外の面子に関しても少々ガッカリしたような表情を浮かべていた。
(え、なんかめっちゃ微妙な雰囲気になったけど俺のせい?俺悪くなくね?)
この世界において他人の魔法、術式、技術を詮索するのはマナー違反にあたる。
それは魔法師という存在が人体実験や人為的な交配の末に生み出され、強化されてきたという歴史に基づく配慮だ。非人道的な、血塗られた歴史の上に成り立つ魔法師の力は、軽々しく吹聴されるべきものではないと考えられており、マナーというよりタブーという言い方の方が適切かもしれない。
つまりこの状況において五条は説明しなくても全然いいのだ。
ただ五条は隠す様子もなく魔法を披露していたため皆聞いてもいいと思ったのだろう。
「アキレスと亀」
「え?アキレス?」
突然の発言に皆戸惑う。
「勉強は大事ってこと」
皆の様子に思わず言ってしまったがこれ以上は説明する気はない。
「アキレスと亀…ってなんだ?」
「……私に聞かないでよ」
ちなみにエリカとレオはもうギブアップの様子だった。
「アキレスと亀……ゼノンのパラドックスのアキレスと亀か?」
「さぁ?後は自分で考えなよ」
達也の質問を躱しつつ、じゃあ俺はこっちだからと五条は達也たちと別れて帰った。
元々この小説は友人と楽しむために作った作品で最初は感想欄やお気に入りも友人だけだったのですが私が予想していたよりも多くの人がこの作品を読むようになっていました。
それ自体はとても嬉しいのですが正直作品のクオリティに比べて評価が高すぎると感じていますし、同時に身に余る評価が怖く感じています。
低いほうがよかったというわけではありませんがお気に入り件数が10以上になるなど想像もしていませんでした。
また、内輪特有の悪ノリ感想欄で遊んでいたら予想以上に外部からのコメントが多くなってしまい、本来内輪ネタとして消費するはずがいつの間にかそうもいかなくなっていました。
感想は応援もアンチコメントも批判なんかも含めて全然ウェルカムなんですけど、外部コメントが半分以上になってしまい、内輪遊びでふざけたコメント返しを本気で捉えてる人が多くなってしまいました。
誤解と不快な思いを与えるようなことをしてしまいすみませんでした。
通常投稿はしていませんが魔法科高校の五条悟~追憶編~も既に限定投稿をしていてそちらと同じようにお気に入りユーザー限定にしようかと考えています。
まだ考え中の段階なのですが作者にはそういう考えがあるということをご理解下さい。
よろしくお願いします。