1.現在、住宅ローン金利はどうなっている?
2022年7月時点では、「変動金利は下落傾向、固定金利は上昇傾向」と逆の動きをしています。なぜ逆の動きになっているのか、不思議ですよね。簡単に解説します。
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変動金利も固定金利も市場金利(債券市場で債券トレーダーが取引する金利)と連動します。具体的には、変動金利は短期金利(期間が半年の金利)と連動し、固定金利は長期金利(10年国債の利回り)と連動します。
短期金利は日銀がマイナス金利政策を実施しており、-0.1%から変動しないようにしています。加えて、銀行間の競争激化しており、変動金利が下落し続けているのです。
一方で長期金利は0.25%以下であれば市場の動きに委ねており、日銀もコントロールしません。2022年1月は0.15%だった長期金利がこの7月に0.25%まで上昇したため、固定金利もそれに連動して上がっているのです。
2.日銀はいつマイナス金利を解除する?
では、住宅ローンの変動金利はどうやって予測すればいいのでしょうか?ポイントは2つです。日銀の動きと銀行の動きです。金利は、①日銀が大きな方針を決め、それに沿って②銀行が住宅ローンの金利を決めるので、この順番で考えるとわかりやすいですよ。
結論を申し上げますと、変動金利の上昇は早くて2035年と考えており、上昇したとしても1%程度のわずかな上昇にとどまるでしょう。10年後もまだ低金利です。グラフにまとめると下記の通りとなります。赤い線が変動金利の動きです。以下に、その理由を記載します。
①日銀の動き
そもそも、私達は金利が上がりづらい時代に生きています。少子化により人口が減少しており、2050年には1億人を割り込みます。そうなると、需要も減るので経済成長はどんどん低下します。2030年〜2040年ごろからGDPがマイナス成長になるとの予想も出ているぐらいです。
一方で、政府は高い経済成長率を公約に掲げるため、どうしてもギャップが発生してしまうのです。そのギャップを埋めるには金融緩和(金利の引き下げ)しかありません。金利を下げてお金を借りやすくして、景気を刺激するのです。低金利は、人口が減少する成熟国の宿命とも言えるでしょう。
そうした中、日銀の黒田総裁は「『持続的なインフレ2%』を達成するまでは金融緩和を続ける」と繰り返し伝えています。この『持続的なインフレ2%』とは一体何のことでしょうか?これは賃金上昇→需要増大→インフレの良い経済サイクルが回っている状態です。ここで大事なのは賃金の上昇です。物価上昇だけでは家計が苦しくなるだけですので。金融緩和の解除には賃金の上昇は必須と言えます。なお、2022年6月の講演で黒田総裁は賃金という言葉を17回(!)も使っています。それぐらい日銀も重要視しています。
また、7月の参院選に向けたテレビ討論会にて、岸田首相は「金融政策は中小企業の金利と負担に影響を与える。景気全体の動向も考えた上で総合的に判断すべき」と述べ、「現状では変えるべきではない」と明言しました。公明党の山口代表も「金利を上げると、中小企業に大打撃だ。」「エネルギー、生鮮食品を除く物価は力が弱い。賃金も上がっている欧米と同じようにはできない」と発言しています。政府・与党の後押しを受けていますので、金融緩和は当面続くでしょう。
最新の賃金指数を見てみましょう。下のグラフは厚生労働省が発表しているインフレを加味した実質賃金指数ですが、直近はマイナス成長です。賃金上昇よりも物価上昇のほうが激しいため、賃金は実質的に目減りしているのです。安倍元首相の銃撃事件があり、岸田政権の方針が変わるのではという声も一部上がっていましたが、この状況での利上げは景気への打撃が大きいため、方針変更の可能性は極めて低いと考えていいでしょう。
では賃金はいつ上昇するのでしょうか?きっかけはバブル世代の退職(2030年ごろ)が考えられます。バブル世代は人口が多く、退職すると残っているのは人数が少ない若手・ミドル層のみ。そうなると、経営者は引き止めのために賃金を上げるでしょう。日本は過去30年間、賃金が上がっていない国です。バブル世代の退職という大きな労働環境の変化が無い限り、賃金上昇はしづらいと考えておいて良いと思います。
下のグラフは日本の総人口を20〜64歳の人口(≒労働人口)で割ったものですが、2030年あたりから急激に比率が高まっています。つまり、1労働者が支える需要が増えることを意味しており、労働力が逼迫することを表しています。日本は過去30年間、賃金が上がっていない国です。バブル世代の退職という大きな労働環境の変化が無い限り、賃金上昇はしづらいと考えておいて良いと思います。
ここまでの話をまとめますと、賃金が上昇するまではマイナス金利を続けることが想定されますので、マイナス金利解除は早くてもバブル世代退職の2030年以降となるでしょう。
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3.金融機関はいつ変動金利を上げる?
②銀行の動き
では、2030年以降にマイナス金利が解除されたら、すぐに変動金利も上がってしまうのでしょうか?そうはならないと考えています。理由は「タイムラグ」と「競争激化」の2つです。ここからは銀行の動きについて解説します。
まず初めにタイムラグについてです。住宅ローンの変動金利ですが、基準金利から引下げ幅を引くことによって適用金利(実際に借り入れる金利)が計算されます。引下げ幅は一定のため、基準金利が上がれば適用金利も上がりますし、逆に下がれば適用金利も下がります。
ですので、変動金利が上がるかどうかは「銀行が基準金利を上げるかどうか」次第です。その基準金利ですが、過去30年間のグラフを見てみると、不思議な動きをしています。それは、市場金利(債券市場で債券トレーダーが取引する金利)が下がり続けているにも関わらず、基準金利は一定の水準以下にならず、下げ止まっているということです。
もっとわかりやすくイメージにすると下図の通りです。基準金利と市場金利が連動しなくなっているのです。
ですので、もし日銀がマイナス金利を緩和したとしても、ある程度まで市場金利が上昇しないと、基準金利も上昇しません。実際2006年に日銀が利上げし、基準金利が上昇したことがあったのですが、市場金利が0%から0.5%まで先行して上昇していました。ですので、マイナス金利が解除されたとしても、0.5%付近まで上昇しない限り、基準金利も上昇しないものと思われます。現在の金利は-0.1%ですので0.6%分の余裕があるのです。これがタイムラグの正体です。
続いて競争激化です。変動金利は現在、ネット銀行・メガバンク・地銀の3つ巴の戦いになっています。つまり、お互い牽制しあっているので、簡単には金利を上げられない状態なのです。
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なぜこんなに競争が激化しているかといいますと、原因の一つに預貸率の低下が上げられます。預貸率とは銀行が集めた預金のうち何%を融資できているかを示すものです。近年は預貸率が下落し続けているため、金利を削ってでも貸出先を見つけようというプレッシャーが銀行にかかっているのだと思われます。
タイムラグと競争激化を踏まえると、変動金利の上昇は2030年から数年後、早くても2035年以降と考えていいと思います。10年後も低金利のままでしょう。銀行の住宅ローン担当者にもヒアリングしたのですが、「もし市場金利が上がったとしても、すぐには基準金利を引き上げないと思う」(関東地銀 部長)、「他行との競争があるので、変動金利は市場金利の動きに遅れると思う。すぐには上がらない。」(中京地銀 課長)と変動金利の引き上げはまだまだ先という反応でした。
4.結論:変動金利が上がり始めるのは2035年以降だが、その後も低金利が続く
以上を踏まえ、変動金利が上がるステップを下記の図にまとめました。賃金が上がり、安定的なインフレ2%になってようやくマイナス金利が解除され、それからタイムラグすること数年後にようやく変動金利が上がり始める見立てです。
では、2035年以降はどうなるのでしょうか?おそらく変動金利は0.5%〜1%程度の低金利で推移すると思われます。理由は、少子化のため人口が大幅に減少し、日本には大きな経済成長が見込めないため、金融緩和が再開されるはずだからです。三菱総研が出している「未来社会構想 2050」では、2050年の成長率はマイナス0.4%です。マイナス成長を続ける国では景気刺激のために金融緩和を続けざるを得ないと想定され、故に2030年代にマイナス金利が解除されたとしても金利の上昇は一時的であり、また金融緩和へ戻るでしょう。この動きをグラフで表したものが下記となります。赤い線が変動金利の動きです。
少子化で人口が減少してGDPがマイナス成長になり、景気テコ入れのための金融緩和が予想されるので、今後、変動金利が大幅に上昇することはなさそうです。
これらの状況を踏まえると、住宅ローンはまず変動金利を検討されるのがよいと考えています。
いかがでしたか?本稿では変動金利がいつ上がるか?について解説してきました。
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