FLAC形式のタグの混乱について
- 2017/11/20
- 22:05
最近、FLAC形式が広く使われるようになってきていますが、時折「タグを付けてるのに特定ソフトや機器で表示されない」、「(タグが原因で?)再生できない」といったケースが散見されます。
MP3形式やWAV形式にタグの混乱があることは割と知られていますが、実はFLACにもそうした問題はあるんです。
【混乱1:FLACでID3v2タグを誤用】
FLACの正規のタグはVorbisCommentという規格のタグです。ところが、間違ってMP3等で使われるID3v2という規格のタグを付けてしまっていて、しかもその間違いに気づいていない残念な方が時々います。
多くの機器やソフトが読めるのはVorbisCommentだけで、FLACのID3v2タグは大抵は読めずに楽曲情報が空白になります。場合によっては、ID3v2タグが付いたFLACは再生できないソフトや機器もあるようです。
FLACは2001年のv1リリース当初はID3v1/v2タグが使われていたようですが、翌年からVorbisCommentタグにも対応し、2003年にXiph.Org Foundation傘下に入った後、2004年にID3タグへの公式対応を打ち切ってVorbisCommentに一本化しました(Xiph.Org Foundation傘下の形式は基本的にタグはVorbisCommentに統一されている)。
そんな経緯でFLACの正規のタグは大昔からVorbisCommentだけですが、ファイルの基本構造が変わったわけではないので今もID3v2タグを付けることは一応可能なようです。
但し、最近の殆どのソフトはVorbisCommentにしか対応しておらず、FLACでID3v2タグが扱えるソフトは上級者向けのごく一部のソフトに限られます(それも多くは読み込みだけで、書き込みができるソフトは更に限られる)。
また、ID3v2タグはファイル冒頭に書き込まれるため、非対応のソフトだとこのタグの存在が原因で再生できないケースがあるようです(当方は、Lilith、MPC-BEなどでそうしたトラブルを聞いたことあり)。
(FLACのID3v2に対応してるソフト)
●FLACにID3v2を新規書き込み出来るソフト
・ExactAudioCopy(要設定)
・Quintessential Media Player(要設定)
・昔のdBpowerampMusicConverter(要設定) 現在は不可っぽい
・・・いずれも、特殊な設定をしたり誤設定により書き込み出来るという話であって、通常の設定では書き込みできません。
この中でヤバイのはExactAudioCopy。元々設定が専門的で難易度高めのソフトであり、知識のない人が設定の意味を理解もせずに間違った設定をしてFLACにID3v2タグを付けてしまうケースが結構あるようです(ExactAudioCopyには、可能であれば強制的にID3v2タグをファイルに付けるオプションがあり、それをオンにしてる可能性大)。
●FLACのID3v2を読めるソフト
・foobar2000
・Resonic Player
・VLC Media Player
・TagScanner
・MediaInfo
・昔のdBpowerampMusicConverter(要設定) 現在は不可っぽい
・XMPlay、uLilithなども可能だったかも
・・・他にもあるかもしれませんが、中上級者向けソフトでも今や非対応のほうが圧倒的に多いですね。機器類も同様だと思われます。
尚、foobar2000やTagScannerなどは一見編集もできるように見えますが、実際には編集して保存するとID3v2は元の内容のまま放置されて新たにVorbisCommentが書き込まれます。こうなると益々ややこしいことになりかねず、やはりID3v2は避けるべきです。
現在FLACでID3v2を使ってる方は、こうした過去の経緯を知った上で何らかの理由があってID3v2を敢えて使い続けている・・・という訳ではなく、殆どはExactAudioCopyの誤設定でID3v2を付けてしまい、更に音楽管理にfoobar2000(ID3v2も一応読める)を使っていて誤りに気付いてさえいない、という中途半端な中上級者?が多いようです(で、他のソフトや機器でタグが認識されなくて始めて異常に気付く、というパターン)。以前、某巨大掲示板でこの話題が出た時に「確認したら自分もそうだった」というEAC+foobar2000ユーザーが何人も出てきて驚いたことがあります。
尚、FLACのタグはID3v2だと言い切る変な方を稀に見かけますが、これはおそらく勘違いしてるだけです(楽曲情報のタグ全般のことを、英語では「識別タグ」といった意味合いで「ID-tag」と呼ぶことがあり、これをID3タグと混同してるっぽい)。
【混乱2:タグ項目名の食い違い】
VorbisCommentは、「項目名=値」という形で情報を記録します。例えば「Title=Yesterday」、「Artist=The Beatles」、みたいな形式。
ところが項目名は規定では提案(すなわち強制力なしと受け取れる)という形になっており、それも主要なものしか挙げておらず、このため項目名がソフトにより異なる場合があり、互換性が無くて表示できないケースがあります。例えば・・・
●アーティスト:「ARTIST」、「PERFORMER」
●アルバムアーティスト:「ALBUM ARTIST」、「ALBUMARTIST」、「ENSEMBLE」
●年:「DATE」、「YEAR」
●トラック番号:「TRACKNUMBER」、「TRACK NUMBER」
●ディスク番号:「DISCNUMBER」、「DISC」
●レーベル:「ORGANIZATION」、「LABEL」
●コメント:「DESCRIPTION」、「COMMENT」
●歌詞:「LYRICS」、「UNSYNCEDLYRICS」
・・・他にもあるかも。
また、これらの大/小文字違いにより認識できないケースも稀にあるようです。
(規格では項目名の大/小文字の区別はしないことになっているが、徹底出来ていないソフトや機器が稀にあるかも)
因みに、この問題は同じ VorbisComment を利用する OggVorbis形式、Opus形式などでも同様に起こり得ます。また、1つのソフトでもFLACとOggVorbisで項目名が違う、といったケースも現実に結構あったりします。
こうした問題への対策として、dBpowerampMusicConverter や MP3Tag は一部のタグ項目名を設定でユーザーが複数の選択肢から選べますし、MediaMonkey は一部の内容を複数のタグ項目名で併記します。また、上記のようなよくあるパターンはどれでも読めるように作られてるソフトもあります。
【混乱3:タグの複数値の取り扱い】
これはFLACに限った話ではないのですが・・・。
多くのタグ規格は、人名項目やジャンル等の項目は複数の値を設定できます。
勿論、FLACのタグであるVorbisCommentもそうです。例えば、ARTIST=John Smith、ARTIST=Joe Bloggs、の様にARTIST項目を複数記述することで複数値を設定できます。高機能な音楽管理ソフトなら、複数値に対応しているものは多いですね。
http://reika788.blog.fc2.com/blog-entry-10.html
ところが、低機能なソフトや古いソフト、機能面に制約の多い機器類だと、タグの複数値に非対応のものも結構あります。
そしてそうしたソフトや機器では、前述の例において、ARTISTが「John Smith」と表示されるものと、「Joe Bloggs」と表示されるものがあるんですよね。
普通一般的には、タグにはより重要なものを先に記述するのが通例なので、この場合は「John Smith」を表示するのが適切な処理と言えるでしょう。
ところが複数値の可能性を全く考慮してない残念なソフトや機器だと、まず先に出てきた「John Smith」を一旦ARTISTとして読み込みますが、後から「Joe Bloggs」が出てくると再びこれを読み込んで前のデータを上書き処理してしまい、結局ARTISTを「Joe Bloggs」と認識してしまうものがあるようです。
尚、機器の場合は処理プログラムの格納メモリー容量の制約上、タグの複数値に非対応のものが多いです。このため、気の利く音楽管理ソフトですと、機器に音楽ファイルを転送する際にはタグの複数値の最初の値だけを残し、他はタグから削除した上で転送してくれるものもあります(MediaMonkeyとか)。
このように、FLACもタグは完璧ではないので、タグ関連でトラブルに見舞われたら上記のようなことを疑ってみてください。
(補足)
FLACのタグの文字化けについて問い合わせを頂いたので、補足しておきます。
VorbisCommentは文字コードはutf-8と決まっているため、基本的に文字化けは起こりません。文字化けが起こりうるのは、色々な文字コードが使えるID3v2の場合です。
ExactAudioCopyは各種のファイルに強引にID3v2を付けるオプションがありますが、更にID3v2にユニコードを使うかどうかを選ぶオプションもあります。これをオフにするとID3v2がシフトJISコードで書き込まれるため、文字化けが発生する可能性があります。
註:この記事は当初他の所にアップしていたものですが、そのサービスが終了したのでこちらに転載しました。
MP3形式やWAV形式にタグの混乱があることは割と知られていますが、実はFLACにもそうした問題はあるんです。
【混乱1:FLACでID3v2タグを誤用】
FLACの正規のタグはVorbisCommentという規格のタグです。ところが、間違ってMP3等で使われるID3v2という規格のタグを付けてしまっていて、しかもその間違いに気づいていない残念な方が時々います。
多くの機器やソフトが読めるのはVorbisCommentだけで、FLACのID3v2タグは大抵は読めずに楽曲情報が空白になります。場合によっては、ID3v2タグが付いたFLACは再生できないソフトや機器もあるようです。
FLACは2001年のv1リリース当初はID3v1/v2タグが使われていたようですが、翌年からVorbisCommentタグにも対応し、2003年にXiph.Org Foundation傘下に入った後、2004年にID3タグへの公式対応を打ち切ってVorbisCommentに一本化しました(Xiph.Org Foundation傘下の形式は基本的にタグはVorbisCommentに統一されている)。
そんな経緯でFLACの正規のタグは大昔からVorbisCommentだけですが、ファイルの基本構造が変わったわけではないので今もID3v2タグを付けることは一応可能なようです。
但し、最近の殆どのソフトはVorbisCommentにしか対応しておらず、FLACでID3v2タグが扱えるソフトは上級者向けのごく一部のソフトに限られます(それも多くは読み込みだけで、書き込みができるソフトは更に限られる)。
また、ID3v2タグはファイル冒頭に書き込まれるため、非対応のソフトだとこのタグの存在が原因で再生できないケースがあるようです(当方は、Lilith、MPC-BEなどでそうしたトラブルを聞いたことあり)。
(FLACのID3v2に対応してるソフト)
●FLACにID3v2を新規書き込み出来るソフト
・ExactAudioCopy(要設定)
・Quintessential Media Player(要設定)
・昔のdBpowerampMusicConverter(要設定) 現在は不可っぽい
・・・いずれも、特殊な設定をしたり誤設定により書き込み出来るという話であって、通常の設定では書き込みできません。
この中でヤバイのはExactAudioCopy。元々設定が専門的で難易度高めのソフトであり、知識のない人が設定の意味を理解もせずに間違った設定をしてFLACにID3v2タグを付けてしまうケースが結構あるようです(ExactAudioCopyには、可能であれば強制的にID3v2タグをファイルに付けるオプションがあり、それをオンにしてる可能性大)。
●FLACのID3v2を読めるソフト
・foobar2000
・Resonic Player
・VLC Media Player
・TagScanner
・MediaInfo
・昔のdBpowerampMusicConverter(要設定) 現在は不可っぽい
・XMPlay、uLilithなども可能だったかも
・・・他にもあるかもしれませんが、中上級者向けソフトでも今や非対応のほうが圧倒的に多いですね。機器類も同様だと思われます。
尚、foobar2000やTagScannerなどは一見編集もできるように見えますが、実際には編集して保存するとID3v2は元の内容のまま放置されて新たにVorbisCommentが書き込まれます。こうなると益々ややこしいことになりかねず、やはりID3v2は避けるべきです。
現在FLACでID3v2を使ってる方は、こうした過去の経緯を知った上で何らかの理由があってID3v2を敢えて使い続けている・・・という訳ではなく、殆どはExactAudioCopyの誤設定でID3v2を付けてしまい、更に音楽管理にfoobar2000(ID3v2も一応読める)を使っていて誤りに気付いてさえいない、という中途半端な中上級者?が多いようです(で、他のソフトや機器でタグが認識されなくて始めて異常に気付く、というパターン)。以前、某巨大掲示板でこの話題が出た時に「確認したら自分もそうだった」というEAC+foobar2000ユーザーが何人も出てきて驚いたことがあります。
尚、FLACのタグはID3v2だと言い切る変な方を稀に見かけますが、これはおそらく勘違いしてるだけです(楽曲情報のタグ全般のことを、英語では「識別タグ」といった意味合いで「ID-tag」と呼ぶことがあり、これをID3タグと混同してるっぽい)。
【混乱2:タグ項目名の食い違い】
VorbisCommentは、「項目名=値」という形で情報を記録します。例えば「Title=Yesterday」、「Artist=The Beatles」、みたいな形式。
ところが項目名は規定では提案(すなわち強制力なしと受け取れる)という形になっており、それも主要なものしか挙げておらず、このため項目名がソフトにより異なる場合があり、互換性が無くて表示できないケースがあります。例えば・・・
●アーティスト:「ARTIST」、「PERFORMER」
●アルバムアーティスト:「ALBUM ARTIST」、「ALBUMARTIST」、「ENSEMBLE」
●年:「DATE」、「YEAR」
●トラック番号:「TRACKNUMBER」、「TRACK NUMBER」
●ディスク番号:「DISCNUMBER」、「DISC」
●レーベル:「ORGANIZATION」、「LABEL」
●コメント:「DESCRIPTION」、「COMMENT」
●歌詞:「LYRICS」、「UNSYNCEDLYRICS」
・・・他にもあるかも。
また、これらの大/小文字違いにより認識できないケースも稀にあるようです。
(規格では項目名の大/小文字の区別はしないことになっているが、徹底出来ていないソフトや機器が稀にあるかも)
因みに、この問題は同じ VorbisComment を利用する OggVorbis形式、Opus形式などでも同様に起こり得ます。また、1つのソフトでもFLACとOggVorbisで項目名が違う、といったケースも現実に結構あったりします。
こうした問題への対策として、dBpowerampMusicConverter や MP3Tag は一部のタグ項目名を設定でユーザーが複数の選択肢から選べますし、MediaMonkey は一部の内容を複数のタグ項目名で併記します。また、上記のようなよくあるパターンはどれでも読めるように作られてるソフトもあります。
【混乱3:タグの複数値の取り扱い】
これはFLACに限った話ではないのですが・・・。
多くのタグ規格は、人名項目やジャンル等の項目は複数の値を設定できます。
勿論、FLACのタグであるVorbisCommentもそうです。例えば、ARTIST=John Smith、ARTIST=Joe Bloggs、の様にARTIST項目を複数記述することで複数値を設定できます。高機能な音楽管理ソフトなら、複数値に対応しているものは多いですね。
http://reika788.blog.fc2.com/blog-entry-10.html
ところが、低機能なソフトや古いソフト、機能面に制約の多い機器類だと、タグの複数値に非対応のものも結構あります。
そしてそうしたソフトや機器では、前述の例において、ARTISTが「John Smith」と表示されるものと、「Joe Bloggs」と表示されるものがあるんですよね。
普通一般的には、タグにはより重要なものを先に記述するのが通例なので、この場合は「John Smith」を表示するのが適切な処理と言えるでしょう。
ところが複数値の可能性を全く考慮してない残念なソフトや機器だと、まず先に出てきた「John Smith」を一旦ARTISTとして読み込みますが、後から「Joe Bloggs」が出てくると再びこれを読み込んで前のデータを上書き処理してしまい、結局ARTISTを「Joe Bloggs」と認識してしまうものがあるようです。
尚、機器の場合は処理プログラムの格納メモリー容量の制約上、タグの複数値に非対応のものが多いです。このため、気の利く音楽管理ソフトですと、機器に音楽ファイルを転送する際にはタグの複数値の最初の値だけを残し、他はタグから削除した上で転送してくれるものもあります(MediaMonkeyとか)。
このように、FLACもタグは完璧ではないので、タグ関連でトラブルに見舞われたら上記のようなことを疑ってみてください。
(補足)
FLACのタグの文字化けについて問い合わせを頂いたので、補足しておきます。
VorbisCommentは文字コードはutf-8と決まっているため、基本的に文字化けは起こりません。文字化けが起こりうるのは、色々な文字コードが使えるID3v2の場合です。
ExactAudioCopyは各種のファイルに強引にID3v2を付けるオプションがありますが、更にID3v2にユニコードを使うかどうかを選ぶオプションもあります。これをオフにするとID3v2がシフトJISコードで書き込まれるため、文字化けが発生する可能性があります。
註:この記事は当初他の所にアップしていたものですが、そのサービスが終了したのでこちらに転載しました。
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