猛暑の中でも常にマスクの日本人 外せる場面と着けるべき場面
熱中症対策も気をつけなければいけない夏、日本では外にいて、人との距離が十分に取れている場面でもマスクを着けている人の姿が目立ちます。マスクとどう付き合っていくのがいいのでしょうか?
熱中症対策も気をつけなければいけない夏、日本では外にいて、人との距離が十分に取れている場面でもマスクを着けている人の姿が目立ちます。
最近では厚労省もマスクを外せる場面では外すよう呼びかけていますが、なかなか行動は変わりません。厚労省のアドバイザリーボードも、子どもへの影響を心配し、適切にマスクを着脱することを求めています。
改めて、公衆衛生の専門家である国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんにマスクの適切な使い方について聞きました。
周りに人がいない屋外では着ける必要はない
周りに人がいない屋外では着ける必要はない
——暑くなってきましたが、屋外で一人歩いている時も、広い公園で遊んでいる時もみんなマスクを着けています。これって必要ですか?
屋外で周りに人がいなくて、会話も限定的であればマスクなしで良いとおもいます。公園やお散歩に行くときはマスクをする必要はありません。通勤の時に自転車で移動する時も必要ないでしょう。
買い物に行く時もお店までの道のりは着けなくていい。スーパーなどの店内でもあまりしゃべる機会はないかもしれませんが、着けるよう求める店も多いので、今はそのルールに従って着けてもいいかもしれません。車中も1人か同居家族だけだったらもちろんマスクは不要です。
——これは最近に限ったことではなく、前からずっと言っていますよね。
新型コロナが問題になり始めた2020年の夏にも、熱中症のリスクもあるので、外で一人歩くときはマスクを外せるという広報は行われていました。
——それなのになぜこんなにマスクをつけ続けているのだと思いますか?
どうでしょう。マスクされている方に聞いてみた方がよいでしょうね。それぞれ違う目的かもしれません。
どこかでマスクをしなくてはいけないことを考えると、初めから着けておいた方が面倒くさくないだろうと思うのかもしれません。もうマスクに慣れたという方も多いかもしれません。顔を見せたくないという人もいるでしょうか。
学校に行く時、子供たちに登校中はマスクをつけなくてもいいと言っていますが、学校に着いたらマスクをつけなくてはいけない。忘れたり、カバンからゴソゴソ出したりするよりは、ずっと着けておいた方いい、という心理なのかもしれませんね。
でも毎日暑いですし、外せるところでは外してもいいのではないかと思います。私もそういう場面はマスクを外すようにしています。
おさらい:マスクを着ける場所、着けない場所
——おさらいさせてください。マスクはどんな効果があり、どんな場面でつけるべきですか?
マスクの一番の目的は「自分の飛沫を外に出さないこと」です。
会話をする機会があって、公共の場面で、室内で距離を取れずに複数でいる場合にはマスクはしてもらうことが望ましいです。
職場はそういう場所でしょうし、車に同居家族以外の人と乗っていて話すことがある場合は、マスクをしておくのがいいと思います。
電車は意見が分かれるところですが、誰も喋っていなければ、いらないのではないかという考えもできなくはない。呼吸だけで感染が広がっているというわけではないからです。
しかしいろいろな人がいますから、今のところは電車に乗る時は着けることが求められるのでしょうね。
——スーパーやコンビニもそれほど話すわけではないですが、つけていますね。
買い物中にどの程度話すかによりますが、線引きが難しい。今のところは、屋内ではつけてくださいと店が呼びかけ、利用者もそれに応じているということになっています。
でもそこも感染リスクに応じて白黒つけて行きたいという声が高まれば、見直されるかもしれません。ただ、くれぐれもトラブルにならないようにしていただきたいです。
子どもはどうする?
——子供の場合は、どんな時にマスクを着けて、どんな時にマスクはつけなくていいと言えるでしょう?
大前提として、症状がある時は必ずマスクを着けておいてほしいです。熱が出たり喉が痛かったりする場合は、マスクは必要です。
あとは地域の流行状況も重要です。今は比較的落ち着いている状況です。子供の遊びにもいろいろあるので、「この遊びはいい。この遊びはだめ」とはなかなか言えませんが、子供たちが屋外で遊んで密にならない場合は、できるだけマスクなしで過ごせるようにしたいと考えています。
特に幼稚園、保育園の場合は、室内なら換気を良くすることで、マスクを厳しくつけなくてもいいようにしたい。何も対策をしなくていいわけではなく、できる対策を重ね合わせた上で、マスクを外せる場面を増やしてくださいと言っています。
——アドバイザリーボードで子どもに関しては緩めるように提言しているのは、顔の表情を読み取ることができないなど、子どもへの悪影響を心配しているからですね。
子どもたちがマスクをちゃんと使えるのかという問題もあります。きちんとつけられる子ももちろんいますが、できない子もいるわけです。
できない子にできるよう叱りながらでも、マスクを徹底させる必要があるかと言うと、そうではない。
この感染症は大人が中心になって広がることがわかっています。だからまず子どもたちにマスクを強いるのではなく、大人の中で感染を抑えていく努力が重要です。
インフルエンザも流行し始めたらマスクを徹底
ただ、今後、インフルエンザが出てくることを考えると、マスクの考え方も変わってくる可能性があります。インフルエンザは子供を中心に広がり、大人にも広がっていく感染症です。
今年は冬にコロナとインフルエンザのダブル流行が起きるとも言われています。ここ2年はインフルエンザの流行が抑えられてみんな免疫が下がっていますから、大きな流行になる可能性があります。
例年ではインフルエンザ感染者の半数以上ぐらいが18歳未満の子供です。小さい子ほど免疫がないから感染します。
そんな流行が起きた時にはコロナ対策というよりはインフルエンザ対策として一時的にマスクを徹底してもらうことはあり得るかもしれません。
今は人の往来も増え、夏でも沖縄ではインフルエンザの流行が以前はありました。まだこの季節ですがインフルエンザも視野に入れて、対策を考えなければいけません。
【和田耕治(わだ・こうじ)】国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授
2000年、産業医科大学卒業。2012年、北里大学医学部公衆衛生学准教授、2013年、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師、2017年、JICAチョーライ病院向け管理運営能力強化プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2018年より現職。専門は、公衆衛生、産業保健、健康危機管理、感染症、疫学。
『企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル』(東洋経済新報社)を昨年6月11日に出版。Youtubeでも情報発信中。