灯「ん？だから新しい結果を伝えようかと」


　巨大な水槽の中で四つん這い状態で両手と膝下を金属板に埋め込まれたシャリアが灯に叫んでいた
そして椅子のように固まったロナに座っている灯が淡々と答える

彩「私こんなこと聞いてなかったんだけど…」
シ「それは私も同じよ？」

　水槽の横、縦長のカプセルにはシャリアと共にここに来ていた彩が入れられていた

灯「うん、そこまでは伝えてないからね」
シ「全く…というか新しい結果ってその家具のように固まってる2人の事じゃなかったの？」
灯「どちらかというと くのこ の固め方の方が新しいけど今回は新しい素材として出来上がったものがあるからそれをね」
彩「ルイが渡した結晶布ってそんなに汎用性あるものだったんだ」
灯「特定の条件を与えると全く違う特性になるなんてのはそれだけで珍しい物だったからね、そこから色々な条件と特性を増やしていったのさ」

シ「で、それが今から私達が受けるものってこと？」
灯「いや2人で別々の物かな、まぁ終わったらしっかり色々と見せてあげるからさ、まずは体験してみてってことで」


　灯が操作盤のスイッチを入れるとシャリアが入れられている水槽にドボドボと音を立てて注水が始まった
水位はぐんぐんと上がっていき、一分もかからないぐらいでシャリアの肘辺りまでが半透明の薄黄色い水に浸かった




シ「っん！？」
灯「ふふ、どう？」
シ「つ、冷たっ！！」
灯「冷たいか、そう感じてるだけで水は常温だよ？」
シ「うそ、こんな氷水みたいに冷たいのに？それになんか体が…んん」

灯「疼くでしょ？それと水に触れてる部分は動かせる？」
シ「え？あ、あれ？水の中の体が全然動かせなくなってる？！」
灯「うんうん、その黄色い水に触れるとアクリル樹脂の性質が体に浸透していくんだ、それが冷たいと感じた原因」
シ「浸透…このかの力？」
灯「そう、「混ぜる」力っていうのは本当に可能性を広げてくれたよ、体に物の性質を足していけるんだからね」

シ「ということは私の体はもう半分が物になってるわけね」
灯「生きたアクリル像って感じかな、その浸透する過程で多少痛みがあるからそれを打ち消すために強めの媚薬でカバーしてるって事、だから体が疼いてしょうがないのは我慢してね」
シ「……んっぁあ！！」
灯「っと、もう胸辺りまできちゃったね、姿勢的に一番敏感な部分が同時に触れちゃうからキツそうだね」
シ「い…痛いよりいいわ…とりあえずここを超えれば……」

灯「疼きは収まらないよ？」
シ「は？どういうことよ？」
灯「いやロナとか千紗はそこが目的というかそれがないと意味がないから、かなり強く残るようにしてあるんだ」
シ「ちょ、ちょっとそれじゃあこのまま動けない状態でっ…ん、ごぼっ」
灯「あ…口に入ったから固まっちゃったか」

　灯と話をしてて顔の付近まで上がっていた水位に気づいてなかったシャリアは口の中に思いっきり液体を入れてしまい
口の中が一瞬でアクリル質に変わってしまい、大きく口を開いたまま硬化してしまった
そしてそれからは早く、顔を沈め頭までが完全に薄黄色い液体に浸かるとそのまま数分浸け置かれる事に


彩「沈んでるけどルイは大丈夫なの？」
灯「ぁあ問題ないよ、問題のあることはしないから」
彩（問題しかないんだけど）
灯「今頃は全身にアクリル質が浸透していってるのを感じてる頃だろうね」





シ（全身が冷たくて動かせないし、体中からピシピシ音がしてる…これが浸透してるって事なの？）

　液体に漬けられているシャリアの体は肌の表面だけでなく、体の芯までが完全にアクリル質へと変化して硬い音を鳴らしていた



彩「これって息できてるの？」
灯「してないよ、というかしなくていい体にしたんだ」
彩「え？しなくていい体？」
灯「体をアクリル樹脂質にしちゃえば息もいらないでしょ？だから見てごらん、口から空気も出てないでしょ？」
彩「そういえば…全然動かないし息も出てない」
灯「人と物の境目って感じ、でもここから一気に物へと傾いていくよ」


　操作盤を灯が再び操作すると今度は排水が始まる、ゴボゴボと液体が抜かれていくと徐々に水面がシャリアの頭に近づいてくる


灯「液面から抜ける瞬間をよく見てて」
彩「？」

　スーっと液面が下がり、シャリアの頭を下回る
そして液体から上がったところはシャリアのキレイな金髪……よりもさらにキラキラとした無機質な光沢

彩「あれ？表面がキラキラして…？」
灯「うん、上手く処理できてるね」





　液中に沈むシャリアは微動だにしないが人の色をしていて服の鮮やかな赤も見える
だが液体から出てきた部分はまるで金属のように光っており、硬い光沢をギラギラと放っている

　頭が完全に液体から抜け出すとそのまま顔も徐々に液体から出ていく
液体から出てきた瞬間にシャリアの青い瞳は金色に覆われ、周りの風景をただただ反射する金色の鏡と化していた





彩「これどういうこと？」
灯「メッキ処理さ」
彩「？」
灯「体をアクリル質にして硬化させた後に表面をさらに金属でコーティングして強度を上げて表面を保護してるのさ」
彩「新しい結果ってこれのこと？」
灯「そうだね、アクリル浸透液の効果とその後の全身メッキ処理の効果、あとはそれの感想をもらいたくてね、なんせ３人固まってるからさ」

　灯はロナに腰掛けて今や色々と物を置かれて完全にテーブルと化している千紗、そして全身ネバネバのまま固まって飾られてるくのこを指差した

彩「いや…」
灯「固めたの私なんだけど」
彩「うん」



　などと話をしている間にも液体の排水は進み、シャリアの体が半分は金色で半分は人の色を残した状態になっていた




灯「排水速度もこれくらいで平気そうだね、表面の金属膜の形成が間に合うかどうかの速度も知れたし、あとはしっかり服の中までされてるのかも確認しないとね」



　そしてそのまま無事に排水は終わり、水槽内には全身が金色に包まれたシャリアの黄金像が残された




灯「表面の質感に関しては本物みたいに綺麗ね、魔法使いみたいな完全な金属変換ってわけじゃないけども」
彩「これ変なところに飾って盗まれたりしないでよね、中身は生みたいなものなんでしょ？」
灯「そうだね、硬化してるとはいえ意識もあるしそこらへんはしっかりするから安心して固まっていってね？」
彩「え？いやそういう意味で言ったんじゃなっ…きゃぁあ！！！？」
灯「じゃ、私は完成品を見てるから」


　彩が入れらているカプセルに白い霧が噴射されたのを確認して、灯は水槽から取り出したキラキラと輝くシャリアの黄金像へ向かった




灯「さて、色々と調査…の前にまずは媚薬効果で疼いてるだろうからいっぱい撫でてあげようか」