「中絶禁止」容認、妊婦以外の患者にも影響? 在米産婦人科医の懸念
米連邦最高裁が6月24日、中絶は憲法で保障された権利とした1973年の「ロー対ウェード判決」を全面的に破棄してから1カ月。判決を機に中絶の禁止を含む条件の厳格化が進むとみられ、医療現場では危機感が広がっている。また、妊婦だけでなく、ほかの女性患者への影響も出始めているという。何が起きているのか。2013年から米国で産婦人科医として働き、現在はバージニア州の病院に勤務する川北哲也医師(38)に聞いた。
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――判決をどのように受け止めましたか。
「トランプ政権誕生後、産婦人科医らがSNS上で騒いでいたのは見ていて、中絶が禁止されることへの危機感が広がっている感じはしていました。ただ、当たり前だと思っていた中絶の権利がこうやって一瞬にして失われてしまうことには驚いたし、とても残念でした」
――どのような影響が想定されますか。
「中絶が禁止された州に住む貧しい人たちは、旅費や滞在費などの金銭的な問題もあって中絶できる州に行くことが難しいでしょう。そうすると、ドクターを介さない違法な中絶が増えるのではないかと心配です。ネット上で買った中絶薬を自己判断で飲むと、出血が多かったり感染の合併症が起こったりすることもあり、母体を危険にさらします」
「それから、どうしようもなくなって自殺したり、中絶できないまま生まれた子どもを虐待してしまったりすることも考えられます。貧しい人が、より困難な状況に追いやられるのではないかと思います」
「また、妊産婦の死亡率も上がるのではないかと危惧しています」
――どういうことでしょうか。
「中絶を禁止している州でも…
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