存在感は強いが、アクは感じられない
ほかに皇氏はタモリの特異性について、「芸人でもありながら、ゲラゲラと笑わせるタイプではないこと」を挙げる。確かに例え若いころであろうが、「R-1グランプリ」を勝ち上がるのは難しいかもしれない。
にもかかわらず、どうして45年近く第一線で活躍を続けられてきたのか。
「まず、嫌われないからではないですか。『タモリなんて嫌い』という人はほとんどいないはず」
これも常識をわきまえた普通の人であることと関係するだろう。まだある。
「存在感は強いが、アクは感じられないところがいいんでしょうね。これも欲のない人だから、そうなれる。また、知的なオーラが出ているものの、インテリであることをひけらかさないのもいい」
さらに皇氏が感服するのは『タモリ倶楽部』で一生懸命に遊んでいるところ。
「もともとタモリが遊ぶ番組ですが、一生懸命に遊んでいる。見る側にも楽しんでもらうためです」
確かにタモリが番組内で嬉々としていると、見ている側まで愉快な気分になる。やはり任された仕事は本気でやってくれる人なのだ。
結果、『タモリ倶楽部』は開始から38年が過ぎても色褪せず、『Mステ』を33年間も背負い続けている。『ブラタモリ』(NHK)も最初の放送から12年が経過した。
「大学時代にジャズマンだったので、アイドルたちも登場する『Mステ』には当初、戸惑いもあったようですが、楽しんでやってくれるようになりました」
もっとも、タモリの本心を知るのは簡単ではないという。サングラスを掛けているので目の表情が読み取れず、もともと感情が顔に出やすい人ではないからだ。
「『Mステ』の司会に就いてもらった当初は楽しそうに見えず、『もっと番組を楽しんでくれよ』と頼んだものです。ところがタモリさんからは『いや、私は十分楽しんでるんですけど』と言い返されました(笑)」
見る側はまだまだタモリに楽しませてもらえるだろう。