政界、特に自民党と旧統一教会こと世界平和統一家庭連合の蜜月。冷戦下で反共を目的にした国際勝共連合を介し保守派の大物らと結びついたのが発端だ。昨今の傾向をみると自治体首長、自治体議員への影響を強めている。それが顕著に表れたのが前回、取り上げた小田原市・守屋輝彦市長。日韓友好を目的に天宙平和連合(UPF)が開催する「ピースロード」を検証すると守屋市長は県議時代から交流があった。また近隣の首長、議員らの名前も浮上し“統一教会汚染 ”は想像以上に深刻だ。
加藤前市長時代から 統一教会からの 献金があった
「統一教会との関係が指摘された井上義行参議院議員は報道以来、恒例の小田原駅前のあいさつ運動も出てきませんよ」(小田原市民)
自民党関係者にとって“ 統一教会ショック”というべき事態である。さて問題は前回、報じた小田原市のトップ、守屋輝彦市長の動向だ。
「小田原市HPに世界平和統一家庭連合小田原教会からの寄付が掲載されている」「小田原市立病院の再整備をめぐり事業者選定前に守屋市長が応募企業と面談していた」。地元、神奈川新聞が同じタイミングでこの2つのニュースを報じた。病院整備については守屋市長からも反論があり、神奈川新聞側がどう反応するのか見ものだ。
ただし守屋市長と世界平和統一家庭連合の関係は明白。一連の報道を受けて守屋市長は相当な苛立ちがあったようだ。後援会関係者が語る。
「7月23日付で市長と後援会『守屋てるひこ政経懇話会』会長名で「緊急合同会議の開催について」という案内状が送られてきました」
統一教会寄付は7月19日、市立病院問題は20日に報じられており、会合は昨日24日、蒲鉾メーカー『鈴廣』の「鈴の音ホール」で開催された。文字通り緊急の会合だ。
案内状には「一部報道機関からの悪意に満ちた投稿がありました。皆様には市長よりこれまでの経緯、そして真実をお伝えさせていただき、皆さまとともに共有し、今後の対策も早急にお話させていただきたいと存じます」(原文ママ)とあるが、文面から怒りがにじみ出る。
参加者によれば会合に夫人も出席し、市長夫妻で支援者を迎えたという。市長の本気度が伝わる。
「会合では神奈川新聞に対する抗議文が配布されました。病院再整備の業者選定で事前に竹中工務店(優先交渉権者)と面談していたというのが神奈川新聞の主張です。しかし市長からは市職員を伴った視察で、同社だけではなく大林組にも行ったという説明がありました」(同)
視察は昨年10月18日に竹中工務店、11月10日に大林組、今年5月19日に大林組の順で行われた。面談を問題視するならばむしろ大林組の方が回数が多い。つまり最終的に病院再整備事業を入札した竹中工務店部分の“切り取り報道 ”の可能性も排除できない。
市関係者によれば神奈川新聞の報道には背景があるという。「加藤憲一前市長は鹿島建設派、対して守屋市長は竹中工務店派なんです。神奈川新聞はそこを突きたかったかもしれませんが記事が強引という点も否めません」(同)
事業者認定には新病院建設事業者選定委員会が行うもので、市長の一存で入札業者は決まらないというのが守屋市長の反論。
また抗議文によると神奈川新聞について「市職員への粗暴なふるまい、病気療養中の特別職への取材」などが指摘されており“活動家記者 ”が取材というより「粘着」したという姿は容易に想像できた。
対して目下、全国的に話題の統一教会問題だが…。
「会合ではほとんど触れられず“ 関係を改める”という説明でした。加えて統一教会からの寄付は加藤前市長からあったとの説明もありました」(参加者)
統一教会の説明は不十分だが、前市長時代から寄付があったのは驚きだ。
県議時代から夫人と ピースロードイベントに参加
同市長と世界平和統一家庭連合小田原教会の関係。ウォッチャーによると
「PEACE ROAD 2016 in Japan 神奈川・静岡のYouTube動画に県議時代の守屋市長が登場しますよ。動画のエンドロールで副実行委員長として藤曲敬宏静岡県議(自民党会派)の名前があります。また小田原市への寄付で守屋市長と記念撮影をした小田原教会の西村豊氏も登場しますね」
ということは守屋市長と西村氏は市長就任前から面識があったとみられる。
ピースロードは日韓友好を祈念し全国を自転車でリレーする行事だ。特徴としては地元の保守系の活動家、実業家が実行委員会に参加していること。自民党系自治体議員の関与も随所に確認できた。
また動画を視聴してもう一つ気になる点がある。
ピースロードのイベントに藤沢市・鈴木恒夫市長のメッセージを同市企画政策部長が代読していることだ。例えば寄付行為で市職員が庁舎内で記念撮影するのは業務上やむを得ない話。ところがイベントに赴くのは適正な行為なのか。
この通り地方議員、自治体の間でも統一教会の存在が浮かび上がる。そこで守屋市長との交流について小田原教会の西村氏を訪ねた。
「西村は不在ですので名刺を渡しておきます」
と職員が応対したが、驚いたのは受付付近に守屋市長の後援会会報誌「守屋てるひこ便り」があったことだ。
「勝共UNITEと憲法改正」のスローガンの下に自民党系市長の会報誌。自民と統一教会という問題を象徴するかのようだ。
かつて冷戦時代に共産主義に対する警戒があったのは理解できる。そうした歴史的経緯を踏まえなければこの問題は見えてこない。もはや反共という文字は色あせ“ カビが生えた”も同然。これを契機に保守派は旧統一教会との関係を是正すべきではないか。
ただし「改善は容易ではない」というのは反旧統一教会を自負する自治体議員。
「団体側は政治セミナーや勉強会といった目的で人を集めます。つまり政治活動と布教活動の線引きが難しいのです。それに首長や地方議員の場合、十数票差で当落が決まることもあります。そんな時に世界平和統一家庭連合の信者票はかなり大きい。選挙が絡むだけに関係を断つのは相当難しいでしょう」
なにより守屋市長自身も当選した2020年の市長選ではかなりの接戦。勝負の分かれ目で統一教会票は有効だったに違いない。旧統一教会こと世界平和統一家庭連合との決別は同時に「票」という問題も絡み今後も自民党、保守政治家の難題になるだろう。
なお小田原市や藤沢市、また神奈川新聞から後日それぞれコメントをもらうので追記する。