濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
あの天心戦後、武尊から届いたLINE「3人でご飯行きましょう」卜部兄弟だけが知る“武尊の素顔”「K-1に無断で動いたこともあったはずです」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTHE MATCH 2022/Susumu Nagao、Yuki Suenga
posted2022/07/05 11:02
セコンドとして帯同した『THE MATCH』メインイベントや、武尊の素顔などについて卜部功也に聞いた
クレープ店でアルバイト…18歳の武尊は「ニコニコしてた」
武尊は故郷の鳥取で格闘技を始め、18歳で上京。名門チームドラゴンに入門し公式プロデビューを果たす。卜部功也と兄の弘嵩にとってはすぐ下の後輩。ジムには地方出身者が多く、先輩が後輩にアルバイト先を紹介したり、生活面から面倒を見るのが慣例になっていた。
「それで“武尊は卜部兄弟が世話してあげてね”ということになって。その頃の武尊ですか? いつもニコニコしてましたね。最初の会話、なんだったかな。“功也くん、K-1甲子園の試合見てました”みたいな感じでしたかね。僕にとっても兄にとっても初めての後輩で、ホントかわいくて」
武尊がアルバイトをすることになったクレープ店は、弘嵩が紹介したそうだ。
「僕たちがよく行くお店だったので“お前、ここでバイトすればいいじゃん。俺らも食べにくるし”って兄がねじ込んだというか(笑)」
卜部兄弟には食えない時代に凄くお世話になったと武尊から聞いたことがある。よく焼肉を食べに連れて行ってもらって、と。
「まあ安い焼肉屋さんなんですけど。食べきれないくらい頼んで、最後は全部武尊に食べさせてましたね(笑)」
武尊の素顔「自分から恥をかきにいける人間」
遊びに行く時は3人で。後楽園ホールの大会Krushで揃って活躍し、新生K-1ができると3人ともチャンピオンになった。特に卜部がよく覚えているのは、武尊がトーナメントを制してスーパー・フェザー級(-60kg)王者になった大会だ。
「兄も僕もその階級のチャンピオンだったので。“3人で同じベルトを巻けるなんて”って話をしましたね。嬉しかったです」
卜部から見た武尊は「自分より周りが笑ってくれるのが一番嬉しいという人間」だそうだ。「自分から恥をかきにいける人間というか」。後輩たちと一緒にいても、自分からおどけて笑いを誘う。
「後輩をいじって笑うみたいなことはしないんですよ。それなら自分が笑われたいっていう。最近は“武尊、もうそんな歳じゃないんだから”って言うんですけど“いや~、やらせてください”って(笑)」
武尊から減っていった笑顔
そんな武尊から、徐々に笑顔が減っていくのも見てきた。
「やっぱり天心くんとの試合が決まらないというのは苦しかったと思います。SNSでもいろいろ言われて、それを全部読んでましたから」
那須川からの対戦アピールがあっても、正式に実現に動き出すまでは何も話せない。マイクやインタビュー、SNSで“挑発合戦”のようなことをしても、逆にものごとは進まないからだ。K-1サイドが態度を硬化させ、お互いの名前すら出せない時期もあった。