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この作品「聖杯戦争の監督を任された監督生 2」は「Fate/GO」「Fate/GrandOrder」等のタグがつけられた作品です。
聖杯戦争の監督を任された監督生 2/こざかなの小説

聖杯戦争の監督を任された監督生 2

13,376文字27分

ツイステとFGOのクロスオーバーです!
オンボロ寮の監督生は藤丸立香。各寮の転生者たちをマスターとする聖杯戦争の監督役を任されちゃった話です。

《読了後推奨》↓

続いちゃったけどほとんど説明で終わったね。
時計塔とかアトラス院とかカルデアとか、機関の説明が大変なんじゃぁ・・・。
でもこれ説明しないとダメだと思ったので説明させました。知らなかった!と思ってもらえたら満足です。ありがとうpixiv辞典。あ、間違ってるとことかあったら教えてください!
自己紹介とか途中で区切らないとめちゃくちゃ長くなったので区切りました。あとルビを振った学生寮や君主はカレッジ、ロードと読んでください。全部にルビを振るのはキツかったんです...。

ランキング入りもさせていただいたので、とりあえず召喚までは次回させます。前作へのコメントありがとうございました!とても嬉しいです!
召喚するサーヴァントはもう決まってます。バーサーカーは話が通じるけど通じないあのお方。

2020/06/21~2020/06/27のルーキーランキング32位に入りました!
2020/06/22~2020/06/28のルーキーランキング50位に入りました!

コメント・urer入りタグ付けありがとうございます!!

2020年6月26日 17:55
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「藤丸立香。所属は人理継続保障機関フィニス・カルデア。元、マスターだよ」

カステラ?カルデアな。という声がハーツラビュルの列から聞こえた。絶対エーデュースだ。

「フィニス・カルデアというと、あのアニムスフィアの?」
「はい。アニムスフィア家が管理していた機関です」
「俺もその機関の話は聞いたことがある。あのキリシュタリアが勧誘されたって話題になっていた。そもそも、適性がない魔術師は選ばれないってな」
「では君も優秀な魔術師だったというわけか。失礼した」

コーディの改まった姿勢に思わず苦笑してしまう。

「お前、元マスターだと言ったな。あの機関でのマスターといえばたった1人生き残った素人だけだと聞いたぜ」

知っている人は知ってるんだな。集まったメンツからの懐疑的な視線が戻ってきてしまったところで、オホン!とわざとらしい咳払いが響いた。

「学園長」
「まさか君も、参加者だとは思いもしませんでしたよ。まぁ、猛獣使い的なセンスを持っている君だから、ということかもしれませんが」
「元の世界でも秘密にされていることです。たまたま自分が向こうでもこちらでも関係者であったにすぎませんよ」

まさか自分もこちらで聖杯戦争に関わることになるとは思ってもいなかったのだ。

「子犬、元の世界とはどういうことだ」
「あれ、先生方に言ってなかったんですか?学園長」
「え、ええっと〜・・・」

目を泳がせるようすに、思わずため息を吐いた。

「自分は異世界からこの世界に連れてこられたんですよ。黒の馬車で」
「異世界からだと!?では、魔力がないのは...」
「異世界の人間だからですね!」

笑顔で言えば、クルーウェル先生が崩れ落ちた。めちゃくちゃレアな姿だけど、ご自慢のコートが汚れるからやめた方がいい。

「まぁ、言ってなかった学園長が悪いので、気にしないでくださいよ」
「・・・わかった。そこの烏。後で覚悟していろ」
「ピッ」

学園長から変な音が聞こえた。あれは声ではない。

「ふむ。では君たちも異世界から来たということかね?しかし魔力も戸籍も持っているが」
「私たちは前の世界ではすでに死亡しています。ですので、こちらの世界の住人です。おそらく前の世界での縁で参加者に選ばれたということでしょう」

なるほど。この人達は自分のような異世界転移ではなく異世界転生とな。

「あのー、聖杯戦争というものの詳しい説明をしていただいてもよろしいでしょうか。私もあまり理解できていないものでして・・・」

学園長が復活した。

「そうですね。理解していないとマズいと思いますよ、いろいろ」

その前に、一応確認を取った方がいいだろう。

「本来、魔術は秘匿されるべきものです。それをここにいる人たちに明らかにすることは大丈夫でしょうか?」
「構わない。この状況では隠す方が危険にもなる。それに、この世界に置いて晒されても影響はない」

確かに、魔法が普通にある世界で魔術を無理に秘匿する必要もないだろう。

「分かりました。でも一応、箝口令は敷きましょう。知ったことで何があるか分かりませんから。それと、自分は時計塔の人間ではないですし、知識は教えてもらったことくらいしかありませんので、付け加えたいことがあればお願いします」
「いいだろう」
「ありがとうございます。ではまず、魔術師から軽く説明しますね」

学園長が軽く杖を振る仕草が見えた。おそらく声を聞こえやすくしたんだろう。ここにはマイクはないから。

《魔術・魔術師》
「まず魔術師とは、『根源』へ至ることを渇望し、そのための手段として魔術を用いる者です」
「根源?」
「はい。魔術師とは根源への挑戦者であり、あり得ない事に挑むことが魔術という学問の本質。根源への到達は一代程度の研究では不可能です。なので、代を重ねて研究を子に継がせ続け、より強い魔力を持つ子孫を作り、子孫もそれを繰り返す。これを一子相伝によって続けていきます」
「魔術師は、魔術という学問を極めることを目的とした研究者でありその家系である、ということか。しかし一子相伝とは。非効率的では?」
「そうですね、トレイン先生。でも魔術とは、秘匿されるべきものなんです。"神秘"ですから。隠されていなければならないものなんです。だから、魔術回路と呼ばれる、魔術師にとって命そのものを持つ子どもだけに、魔術師の家系であることを教え、魔術を学ばせます。他の子どもには魔術の魔の字を教えることもありません。そうですよね?」
「あぁ。魔術回路を持つ子どもが何人か生まれた場合、兄弟同士で殺し合いをさせる家もあるくらいです。まぁ、最近は競争心を育てるために魔術回路を持った子どもは総じて魔術師として育てる家も多いが・・・。しかし、我々が研究するその道のりに果てはなく、抑止力という妨害もあり、どれだけ代を重ねても、根源にたどり着けることはありません。魔術師が最初に習うことは、『オマエがこれから学ぶことは、全てが無駄なのだ』ということです」

たどり着けるはずもない道の上を走らされるということに、先生たちの顔は理解ができないという顔だ。

「それと、魔術師の日常はその大半が「研究」です。それ以外で魔術を用いるものは少数派ですね。だから、この世界で日常的に魔法を使うのとはわけが違う。そもそも魔法は手段であり魔術とは原理が違います」
「なるほど。魔法と魔術は別物ということですね。では次に聖杯戦争について。これが1番の問題なのでしょう?」

《聖杯戦争》
「聖杯戦争とは、その名の通り戦争です。あらゆる願いを叶えるとされる万能の願望機・聖杯をめぐって7人の魔術師と7体のサーヴァントが最後の一騎になるまで殺し合う。時には一般人も巻き込んでね」

殺し合いという言葉に鏡の間が騒めく。死に近くない限り実感がない言葉だろう。

「い、一般人も巻き込むんですか!!??先ほど秘匿されなくてはいけないと言っていませんでしたっけ!!??」

学園長が混乱している。確かに秘匿されると言われれば隠れて行われると思っても仕方ない。実際はすごく周りを巻き込むけど。

「ある聖杯戦争では、自分が魔術師である自覚がないまま参加者になってしまった人物が猟奇殺人犯だったために、多くの被害者が出たと聞きました。そのときは流石に他の参加者で協力してその参加者とサーヴァントを処分したそうです。その現場にいた人は秘匿のためにもれなく処理されたと」

生々しい言葉の連続に心臓が弱そうな学園長がふらついている。

「処理とは、一体・・・」
「見られた人数が少なければ事故という形で殺し、多ければ記憶を消去するなどだそうですよ。それをしていたのは、監督役の聖堂教会という組織ですが。あくまで秘密裏に行わなくてはいけないので、見られた場合、サーヴァントが勝手に殺しにかかる場合もあるのだそうです。一応、昼間は戦いを行ってはいけないというルールもありますよ」
「こ、殺すとか軽率に言わないでくださいよ・・・」
「魔術師は殺し合いに慣れてますから」
「ヒェッ」

学園長はブルブル震えている。

「サーヴァントというのは、使い魔か?戦うのは魔術師自身ではなく、その使い魔だけでは?」
「サーヴァント=使い魔というのは合ってますよ、クルーウェル先生。でもサーヴァントは普通の使い魔ではありません。扱いやすいかどうかは呼ばれるサーヴァントによります。それと、魔術師が戦いの蚊帳の外になることはありません。サーヴァントに指示を出し、彼らに動力源となる魔力を送るのがマスターたる魔術師だからです。つまりマスターを倒せば戦いに勝利したも同然。だからマスターが真っ先に相手のマスターとサーヴァントから狙われます」
「oh...。では、サーヴァントが普通の使い魔ではないというのは?」
「サーヴァントは基本過去の英雄なんです」

首を傾げる皆さん。確かに何を言ってるのか分からないでしょうね。

「過去の英雄を使い魔として呼び出し、使役するんですよ。そうですね、例えばハートの女王」

こちらを見たリドル寮長の顔色が悪い。まぁ物騒な話しかしていないからな。

「ハートの女王は、グレートセブンと言われるほどのいわゆる"英雄"ですよね?リドル寮長」
「あ、あぁ。もちろんだ。・・・・・・まさか」
「そうです。聖杯戦争ではハートの女王をサーヴァントとして呼び出して使役することができるというわけです」
「ふ、不敬だ!!!」

各寮長達も顔をしかめている。自分の寮か頂く英雄を誰かが使役するというのがお気に召さないのだろう。それはそうだ。彼らがまともな価値観を持ってくれたことに感謝したい。魔術師はサーヴァントを使い魔として下に見る傾向があるから。

「不敬とかなんとか考えてらんねぇよ」
「な、なんだと!!」

サバナクローの寮章をつけた人が不機嫌にその尻尾を揺らしながら呟いた。彼はチーターの獣人だろう。男のケモミミに慣れてきた自分が怖い。

「マスターとして聖杯戦争に参加するってことは、命がけってこった。トロフィーは何でも願いが叶う願望機。死に物狂いで手に入れたいわけよ。だからこそ、強い護衛が必要なのさ。ちゃんと対応はするさ。自分のサーヴァントに殺されるなんて不名誉な死に方したくないしな。それに、サーヴァントととも利害は一致している。聖杯が手に入れば世界を手に入れたも同然なんだから」
「かつてどこかの聖杯戦争では軍が動くくらい喉から手が出るほどのお宝ですよ、聖杯は。だからサーヴァントも欲してる場合が多いんです。かつて叶わなかった願いを叶えるために」
「マスターとサーヴァントがそれぞれ2人1組で聖杯を奪い合うということか。そのために、下手に隠すと他の生徒に被害が出てしまうことから、この場での説明を行うにいたったと。それは魔法で防ぐことはできないのか?」
「通常の攻撃ならあるいは。しかしある攻撃はほぼ防御不可能でしょう。サーヴァントは宝具と呼ばれる、こちらでいういわゆるユニーク魔法を持っています。それを使えば、ものによってはこの学園を更地にし、更に地形を変えることも可能です。制御しなければ星をも砕く宝具もありますからね」

先生方は顔が真っ青。生徒諸君も真っ青だ。そこまでとは思っていなかったんだろう。サーヴァントの力をこの世界の基準に当て嵌めてはいけない。

「じゃ、じゃあどうするんですか!!!」
「そこで監督生の出番ですよ」

急な指名はやめてほしいな、コーディ。大注目を浴びてしまった。縋るような視線を感じる。主に教師陣の方から。

「・・・マスターには、3画の令呪が聖杯より与えられます」

右手の令呪をかざす。あの旅の中で何度使ってきたことか。時々夜這いをやめさせるみたいな使われ方もされることもあったけど。

「令呪はマスターとしての証であり、サーヴァントを制御する唯一の手段でもあります」
「それを使えば、サーヴァントを制御することができるんですね?」
「そうです。でも、長時間の拘束はできません。それに令呪の拘束を振り切る場合もあります。ですが、これで自害を命じることもできます。最終手段ですけど」
「自害・・・」
「サーヴァントが死んでもマスターは参加資格を失うだけですから」
「酷い世界だな・・・」

それが現実です、クルーウェル先生。ちなみにどこかの聖杯戦争で実際に自害を命じられたランサーが霊基に刻まれるほどのトラウマを抱えてことは言わない方が良さそう。

「マスターの令呪は3画までしか使用できませんが、皆さんに危険が迫った場合は、監督者権限で自分の令呪によって拘束します。これは本来、ルーラーと呼ばれるサーヴァントの役割なんですが・・・」
「ルーラー?」
「はい。ルーラーは聖杯戦争に問題があった場合に聖杯によって召喚されるサーヴァント。裁定者というクラスです。サーヴァントにはクラスがあって、聖杯戦争では、セイバー・アーチャー・ランサー・キャスター・アサシン・ライダー・バーサーカーの7クラスのサーヴァントが召喚されます。それぞれ有利不利の相性があります」

正直サーヴァントについては実戦とかしないとマスターとの相性も分かんないんだけどね。

「他に質問はありますか?」

トレイン先生が手を上げた。

「どうぞ」
「ディアソムニアの彼が言っていたが、時計塔とは?」
「あー、そういえばそうですね。魔術師の説明のところで言っておけばよかった」
「それは、我々が自己紹介するときにでもついでに説明すればいいだろう」
「自己紹介?するんですか?」
「一応、顔を覚えてもらわないと彼らも自衛しづらいだろう」
「なるほど。それもそうですね。皆さん時計塔の出身で?」

1人手が上がった。寮章はイグニハイド。

「僕は時計塔じゃないよ」
「あ、そうなんですか。じゃあ他の方が終わったらでお願いします」
「わかった」

イグニハイドの寮生には少し下がってもらって、コーディに場所を譲る。
大勢の生徒の前に立つ彼は、臆すことなく堂々と言葉を繋いでいく。

《自己紹介・時計塔》
「先ほども言ったが、改めて自己紹介を。私の名前はフレリア・ダート。先ほど名乗ったコーディ・ブレア・エインズワースは昔の名前だ。時計塔、降霊科に所属していた。寮はディアソムニア。3年だ。名前は聖杯戦争の間はコーディと呼んでくれ。魔術師として参加するのでな。皆もそのように頼む」

寮がディアソムニアというのはやはり納得。威厳があるし。闇の鏡は正確だった。

「時計塔というのは、元の世界では魔術協会における三大部門の一角。ロンドンという都市に拠点を置き、時代に適応し、人類史と共に魔術を積み上げる事を是とした魔術師が集う場所。西暦以後の魔術師たちにとって中心とも言える巨大学院。世界に於ける神秘を解き明かす巨大学府で、創立は今から2000年以上前。現在は魔術協会総本部とされ、魔術世界における最大勢力」
「凄いんですね、時計塔って・・・」
「はい。時計塔は心臓部分であるロンドンと、ロンドンを囲む様に作られた複数の都市で構成されていて、時計塔発祥の地はロンドン本部で、発祥から数百年後に規模が大きくなったため施設を増やしました。それがロンドンを中心にしてロンドン郊外に点在する各学術都市。ロンドン郊外に位置する中世と近代の入り混じった街、四十を超える学生寮カレッジと百を超える学術棟と、そこに住む人々を潤す商業で成り立つ巨大な学園都市。ほとんどが研究機関ですが」
「なるほど・・・ありがとうございます」

スケールが大きい話に、学園長の目が回っている。確かに時計塔は凄いけど、自分はやっぱり好きにはなれないなぁ。だって、身体をバラバラにされて保存されそうになったわけだし。永遠に幽閉も嫌だけど。

「俺はザール・マレア。昔の名前はリダ・アンナード。所属は時計塔だが全体基礎科だった。寮はサバナクロー。2年。」
「先輩はチーターですか?」
「チーターの"獣人"な」

この先輩、サバナクローにしては中々に親しみやすいな。

「なるほど、君は全体基礎科か。私と相性が悪そうだ」
「おや、何故です?」
「巨大な組織には派閥が付き物ってことっスよ、学園長。降霊科の君主ロードは貴族主義。対して全体基礎科の君主は民主主義筆頭。仲が悪くもなる」
「君主とは?」
「各学部を統括する学部長のことです。学部長とは別に、時計塔を束ねる貴族を指すときもありますが」
「簡単に言えば各研究科目のトップってこった」
「ここでいうなら、寮長のような肩書きですよ。その権限も地位も学園長くらいまであげたくらいの」

ハテナ飛ばす人多いから、ちょっとはこの世界に当て嵌めないと難しいよね。分かる。

「そういうことなら、僕も君とは合わないね」
「あ"?」

リダに挑発的に声をかけたのはハーツラビュルからの参加者。

「ルス・サントレッド。昔の名前はサリー・ナバレ・コルスタリア。所属は時計塔、法政科。ハーツラビュルの2年生」
「なるほどなぁ。貴族主義筆頭か」
「別に君主に思想まで引っ張られる必要はないけど、僕の家も貴族主義でね」

めちゃくちゃ気が強いなこの先輩。

「なぁ、その所属がそんなに大事なのか?」

カリム先輩からの質問の答えは、ここの人たちにとって分かるような分からないようなものだろう。何せ思想の影響力が違う。

「君主はここでの寮長のようなもの。それぞれの科目の象徴とも言える。その君主を頂く学生寮(カレッジ)も、その特色ごとに分かれている。選民思想な君主の学生寮は私設憲兵が置かれるほど排他的で、権力闘争とは縁遠いカレッジでは純粋に学問のみを追求する落ち着いた雰囲気、といったようにな。そして自分たちのテリトリーである学生寮に余所者が入り込もうものなら、個人間だけではなく学生寮同士の抗争にもなる」
「その点ではサバナクロー寮の皆さんは理解しやすいのでは」

マジフトのとき、寮の入り口でも難癖つけてきたし。レオナ先輩睨まないでくださいよ。

「ハーツラビュルのやつも言ってた通り、絶対に君主の思想に従わなくてはいけないルールはない。けど、主義は人それぞれ、家それぞれで絶対的なものなんだよ。それに、この対立は結構根深いんでな」
「時計塔には3つの派閥が存在しています。貴族主義派は血統を重視し、筆頭は三大貴族の法政科の君主。血統で劣っても才能ある若者を取り入れるべきという民主主義派。筆頭は三大貴族の全体基礎科の君主。派閥争い自体に興味を持たず研究を優先する中立派。ここは派閥としての権力は低いです。三代貴族のもう1人は民主主義派にいるので」
「つまり、基本的に貴族主義派と民主主義派は仲が悪いんですよ。僕とコーディ先輩は貴族主義なので民主主義のチーターとは相性が悪いってことです」
「おうおう喧嘩売ってんのかてめぇ」

みんな納得したのかしてないのか、よく分からなそうな顔をしているが、時計塔はめんどくさい組織だと思ってくれたらいいよ。だってこの知識、この世界ではほとんど必要ないし。でも魔術師的にはここ重要だもんね。でも早いとこ自己紹介を終わらせなきゃ引きこもりなイデア先輩の精神が心配に・・・。あぁ、あの人異世界というワードにオタクの心がワクトクしちゃってるよ。目が怖いって。

「興味がある人には、また詳しく時計塔の説明をさせていただくということで。次の人お願いします」

すっと前に出てきたのは、ポムフィオーレ寮生。ポム寮生の名の通り美しいお顔。

「シオン・フーレ。前の名前はユーリ・アレスチア・コット。時計塔、植物科所属。ポムフィオーレの3年生。ちなみに君主は貴族主義」

うん。貴族の御子息より、御令嬢って感じの先輩だ。でも可愛さはエペルが勝つ。

「オレはザレア・ダダリ。前の名前はリリス・アザリア。所属は時計塔、伝承科だった。スカラビア寮3年生。君主は中立派」

こちらもアラビア美人って感じの人だ。というか、どちらも前の名前が女性っぽいんだけどもしかして・・・。

「ちなみにシオンとは前世からの知り合いだ。貴族派と中立派と君主の派閥は違ったけどね。あと、名前で分かったかもしれないけど、オレたちは元々女だよ」

驚きを隠せない健全な男子生徒諸君に、リリスはあっけらかんと、男もいいもんだな!っと笑っていた。何人かの新しい扉が開く音がした。やめとけ今は立派な男だ。
そして、次はオクタヴィネル寮。

「カット・マレス。前の名前はナハリ・ミオ。所属は時計塔、考古学科。君主は中立筆頭。オクタヴィネル寮の2年です。どうぞよろしく」

よくも悪くもオクタヴィネル寮生っぽい印象だ。実はヤバい方のウツボ先輩と似た笑みを浮かべている。契約書には気をつけよう。魔術師同士の契約はえげつないからね。

「それでは参加者の最後はイグニハイドのあなたですね」
「はい」

《自己紹介・アトラス院》
「僕はアネット・ダリス。前の名前はザット・フィーレ。所属はアトラス院」

おっとアトラス院か。これまた珍しいなぁー。

「アトラス院?時計塔とは違う組織ですか?」
「はい。アトラス院は時計塔と同じく魔術協会の三代部門の一角です。でも時計塔が魔術協会の本部となってからは交流が途絶えています。お互いにほとんど関わらない関係です」
「アトラス院は謎に包まれていて別名『巨人の穴倉』。蓄積と計測の院。魔術世界における兵器倉庫。禁忌の穴倉とも呼ばれてる。俺もアトラス院生はお初にお目にかかるぜ」
「なんか物騒すぎません?」
「実質アトラス院は物騒ですよ」

西暦以前から存在する錬金術師を極める者たちの学舎。錬金術に特化し、独自の成長を遂げた学院。
人類の滅びの未来を確定されたものとして、その滅びの到来を少しでも遅くすることを目的としており、人類が長く生き延びられるのならば種として変態・退行しても構わないと考えている組織。魔術の祖と言われる、世界の理を解明する錬金術師の集まり。

「僕らは魔術師としては底辺です。単体では自然干渉系の術はまったく使えない。だから、神秘を学ぶ過程において魔力に頼らず、多くの道具に頼ったんです。『自らが最強である必要はない。最強であるものを作ればいいのだから』との考えで。時計塔の魔術師が、暗算によって答えを求めるとしたら、アトラス院の魔術師はコンピュータに計算を任せるという感じですね」
「なんか、まさにイグニハイド寮生って感じですねぇ」
「ええ。だからイグニハイドは僕には居心地がいいんですよね」
「アトラス院の信条は、『人間とは運動機能(五感)をもった類い稀なる計算装置である。情報を収集し、解析し、生まれ出る数々の問題に、労働力としてダイレクトに対応できるよう進化した知的生命体が我々人間である』『自らが最強である必要はない。我々は最強であるものを創り出すのだ』というものだそうですよ。実際、多くの武器の製造をしているとか」
「武器か!気になるな」
「武器と言っても兵器です。良いものではありませんよ、バルガス先生」
「アトラス院が作り出した武器。その最たるものが魔術世界で言う、七つの禁忌。アトラス院は世界を滅ぼす兵器を七つまで作り上げ、その段階で自分たちの限界を認め、これを封印した。初代院長が演算した世界の終末を回避するために兵器を作り続け、そしてその兵器は世界を滅ぼしうるがために廃棄され続ける」
「世界を滅ぼす・・・?」
「だから下手にアトラス院と関わると世界を7度滅ぼすことになるとまで言われるくらいっスよ。そういえばホムンクルスもアトラス院が創造したんだっけか」
「ホムンクルス・・・」
「簡単に言えば人工的に創り出した生命体のことです。見た目は人間。でも寿命があらかじめ設定されていたりします」
「それこそ禁忌じゃないか!」
「おっしゃる通りです、クルーウェル先生。ですが、魔術師に人道的な禁忌を説いても意味はありませんよ。根源に至るために手段を選ばないのが我々です。アトラス院は魂をエネルギーとして生み出すことをしただけにすぎません」

言葉を無くす先生方。コーディの言うことは正解だ。魔術師を一般的な理で縛ることは難しい。

「アトラス院は、入る事は容易く、出ることは難しい、地下深くに広がる学術棟です。外に出る者に対しては多くのトラップが設置されています。人間に必要なもの、生活に必要なものが揃っているので、外に出なくても不便はありません。それに、神秘の秘匿における『自己の研究は自己にのみ公開する』という規律が、アトラス院では特に徹底されています。それぞれ独立した工房で各々の研究に没頭し、何のタブーもないため非人道的な兵器を作っても咎めはないですが、一つだけ条件があるんです」
「だいぶ放置的な機関なんですね・・・。そんな危険な研究をしているのに」
「そのために1つの条件があるんですよ。『ここで作られたものを、決して外に持ち出さない』というアトラス院の絶対原則。それを二千年以上、そのルールを頑なに守ってきているので、僕らが作った兵器によって世界が滅ぼされることはほぼ確実に無いのです」
自身満々に答えるザットだが、全体的に空気が重い。これからイグニハイド生が作る機械に入念なチェックが入ることは間違いないだろう。完全な巻き込み事故だ。
「アトラス院が物騒だというのはよく分かりました・・・」
「その総括はちょっと不本意なんですが、まぁいいでしょう」
「では、最後はこの聖杯戦争の監督役。君が1番謎だからね」
「お前たちでも分からないのか」
「えぇ。カルデアは出来たばかりの研究機関ですから」
「ほぅ・・・」

そんな期待が籠った目で見ないでほしいな。お前のとこは大丈夫だよなって目線が痛いですクルーウェル先生。魔術師の施設に人道的な期待を持ってはいけないことを自分はマシュから学んだ。彼女は元気だろうか。

《自己紹介・カルデア》
「えーと、ユウです。昔の名前は藤丸立香です。あぁ、こっち風にいうならリツカ・フジマル。所属していたのは人理継続保障機関フィニス・カルデア。まぁ、あとは皆さんご存知、オンボロ寮の監督生です。あ、実は異世界から来ました」

うーん、どこから話したものかな。あ、そうだ。

「あの、1つ確かめたいことがあるんですけど、参加者の皆さんに」
「なんだ?」
「あなた達は、『空白の一年』を経験しましたか?」

『空白の一年』。それはあの人理焼却されていた1年にも実際に時間が進んでいたために起きた現象。朝起きたら世界の時間が1年進んでいたという摩訶不思議な出来事。その後の漂白もあるが、とりあえずはこれを経験したかどうかでカルデアの知識の度合いも変わる。

「俺は経験したぜ」
「僕も」

『空白の一年』を経験したのは7人中5人。以外にもコーディとナハリは経験していなかった。つまり、7人が死亡した時期もバラバラだと考えていいだろう。

「なんですか?『空白の一年』とは」
「あー、気になるとは思いますが、また改めて説明しますよ。これ話してると夜になっちゃいます」

そんなに!?と大袈裟に学園長は驚いているが、時計塔とアトラス院の説明に時間をかけすぎた。察せ。

「で、カルデアですが、時計塔の12人の君主の1人にして、天体科を牛耳るアニムスフィア家が管理する国連承認機関。 魔術的組織ながらも、世界的に認められた機関ということです。地球環境モデル「カルデアス」を観測することによって未来の人類社会の存続を世界に保障する保険機関のようなものですね」
「カルデアスとは?」
「カルデアスは我々の世界、惑星を小型化したオリジナルと同一のコピーのようなものです。100年後に時代設定したカルデアス表面の文明の光を観測する事により、未来における人類社会の存続を保障する事を任務としています。そのため研究施設ではありますが、内部規律は軍隊に近いですね。なにせ機密事項が多いので。施設に入れるのも、人間だと科学的・魔術的に認められた者だけですし」
「カルデアは科学と魔術の融合というわけか」
「そういうことです。そして100年後に人類が存在しないという観測結果が出たため、その原因を調査し人類の存続を守るために多くの魔術師たちが集められました。自分もその1人です。でも自分は、魔術師のヒヨコどころか卵だったんです。なーんにも知らないほぼ一般人。たまたまその任務に必要だった適性を100%満たしていただけの数合わせ。それが自分です。まぁ、そこで起こった事件によって色々あった結果、自分はサーヴァントの扱いが大体わかるようになりました。ちゃんと監督させていただきますよ。事件についてはまたお話しさせていただきますので」
「分かりました。ところであなた、元の世界で亡くなったわけではないんですよね?」
「はい」
「では何故名前が2つあるんですか」
「隠れるためですよ。自分、時計塔から封印指定されていたので」

封印指定と言う言葉に魔術師7人が反応した。封印指定は魔術界においては危険人物と同義だ。

「大丈夫ですよ皆さん。自分は危険というより、研究素材として封印指定を受けたんです」
「研究素材?」

ザットとリダは理解した顔をしている。

「不思議に思いませんでしたか?コーディ先輩。この聖杯戦争、必要なものが足りないってことに」
「足りないもの?」

マスターたる魔術師に令呪、そして聖杯。あと足りないのはサーヴァント。彼らを呼び出すのに必要なもの。

「サーヴァントを呼び出すのに必要な触媒。聖遺物です」
「!?もしかして君が・・・」
「はい。自分が封印指定になった理由がそれです。生きた人体でありながら、数多くの英霊を召喚できる触媒。研究対象として魅力的でしょう?」

しかも人質にすればあの太陽王ですら召喚と同時に殺されるリスクも減る。逆に塵も残さず消される可能性もあるけれど。

「封印指定とは?良いものとは思えないんだが」
「良くて永遠に幽閉されて研究のためのモノとされる。悪くて身体を切り刻まれてバラバラになってホルマリン漬けです。それも世界中に散らばるでしょうね」

もし時計塔に捕まったら、確実にサーヴァントのみんなを使われてしまう。座に帰れば記憶は無くなる。でも記録は残る場合がある。心優しいサーヴァントは呼ばれてしまい道具のように使われてしまうかもしれない。それだけは避けたかった。

「ま、そんなわけで今回の聖杯戦争、触媒は自分です。だからどんなサーヴァントがどのマスターのところに呼ばれるかは運次第!あ、呼ばれるサーヴァントは向こうの世界の英霊です。こちらの英雄とは縁を結んでいないので」
「君はどんなサーヴァントでも呼ぶことができるのか?」

コーディは恐ろしいものを見るような目でこちらを見てくる。まぁ、時計塔の魔術師たちはみんなそう思っただろうね。

「自分がカルデアで起きた事件によって縁を結んだサーヴァントのほとんどは応じてくれるでしょう。エキストラクラスも含めて。でも今回は聖杯戦争のため7クラスのみ召喚されるでしょう。自分は有事の際に混乱を防ぐために主にエキストラクラスのサーヴァントを召喚して監督させていただくことになります」

エキストラクラスは癖が強いサーヴァントばっかなんだよね。そもそも別の世界軸ではアンリマユ呼んだらアインツベルンの聖杯は汚れて、天草呼んだら世界の命運をかけた大戦争になっちゃったって聞いたから大人しく皆さんは7クラスでお願いします。

「あ、ところでバーサーカー呼びたい人います?先に聞いておきますけど」
「誰が来るかも分からないのに話が通じないクラスを選ぶ奴がどこにいるんだよ」
「ですよね。でもちゃんと話が通じる人もいるんですよ。バーサーカーを故意的に呼ぶ場合は召喚の呪文に付け足しがいるので、聞いたんですが、まぁ結局は運ゲーなので誰が来ても恨まないでくださいね」
「今からガチャるんでござるか?」
「ガチャじゃないけどある意味ガチャですね。召喚は夜に行います。場所はオンボロ寮の裏の森の中。召喚によってサーヴァントが現れた瞬間から聖杯戦争はスタートです。見届け人は学園長と先生方、各寮の寮長と副寮長のみ。見せ物にされていると分かった瞬間皆殺しにかかってくる場合もあるので。それと、サーヴァントに話しかけられても名前を聞かないように。真名は聖杯戦争の命運を左右するほど重要なので。クラス名ならいいですよ。あと、今回の聖杯戦争の規約は放送にて皆さんにお伝えしますので、全員起きててくださいね」

では緊急集会は、これにて閉幕。





各寮のマスターを紹介するぜ!!!!

《ディアソムニア寮》
コーディ・ブレア・エインズワース。時計塔、降霊科。今の名前はフレリア・ダート。貴族主義。

《イグニハイド寮》
ザット・フィーレ。アトラス院。今の名前はアネット・ダリス。

《ポムフィオーレ寮》
ユーリ・アレスチア・コット。時計塔、植物科。今の名前はシアン・フーレ。貴族主義。元は女性。

《スカラビア寮》
リリス・アザリア。時計塔、伝承科。今の名前はザレア・ダダリ。中立。

《オクタヴィネル寮》
ナハリ・ミオ。時計塔、考古学科。今の名前はカット・マレス。中立。

《サバナクロー寮》
リダ・アンナード。時計塔、全体基礎科。今の名前はザール・マレア。民主主義。チーターの獣人。

《ハーツラビュル寮》
サリー・ナバレ・コルスタリア。時計塔、法政科。
今の名前はルス・サントレッド。貴族主義。

コメント

  • 🐧takuto🐧
    2020年10月6日
  • 豊後梅
    2020年7月5日
  • 真夜

    とてもとても素敵でした!! 続きを何卒!

    2020年7月1日
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