遠藤まめた(えんどう・まめた) 社会活動家
一般社団法人にじーず代表。1987年埼玉県生まれ。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)、「みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT』(ちくまプリマー新書)ほか。トランスジェンダーの情報サイト「trans101.jp」主宰。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
政治家と結びつく一方で、各地で草の根の取り組みも
統一教会がこの流れにのっていくのは2003年、都城市の条例に性的指向の文字が入るタイミングである。都城市では当時、地元のLGBT支援団体が活発に活動しており市長は保守寄りではあったが、画期的な条例が作られようとしていた。当時のバックラッシュのことは『社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた」時代と草の根保守運動』(勁草書房、2012年)に詳しくまとめられている。本著の共著者でもあるモンタナ州立大学准教授の山口智美氏によれば、都城市では当時、統一教会の地元市民がチラシを配布し、統一教会系の新聞である「世界日報」の記者が東京からなんども訪れて反対運動を展開していった。
統一教会の動きは、単に政治家と結びついているだけでなく、各地で草の根的に展開されているところが重要だと山口氏は語る。
2005年には当時自民党幹事長代理だった安倍氏が座長、山谷氏が事務局長を務める「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が発足し、全国の学校で過激な性教育やジェンダーフリー教育が行われているとの調査結果をまとめた。特に、ジェンダーフリーにもとづき男女同室着替えをおこなっている事例があるとの報告は、それはさすがに行き過ぎだとの驚きをもって世間から大きな注目を集めた。
実際には、このプロジェクトチームによる調査後に、文部科学省が行った調査では「ジェンダーフリーに基づく男女同室着替え」は確認されなかった。
評論家の荻上チキ氏がまとめた「ジェンダーフリー&バックラッシュ騒動まとめ」では「『ジェンダーフリーの推進側』としてしきりにクレイムメイカーに拠って繰り返し批判されている日教組でさえ、更衣室の実態調査『更衣室の絶対的不足』を訴え、文部科学省に整備拡充を申し入れるなど、『ジェンダーに敏感な視点』から改善を訴えていた。つまり、この定義パターンは端的に流言飛語であった」と結論づけられている。
事実はこのようなものであったが、流言飛語の影響力はすさまじく、まっとうなジェンダー平等教育や性教育に対しても萎縮効果があった。日本で男女の固定的性役割是正や性教育についての取り組みが進まない背後に、当時のすさまじいバッシングがあったことは忘れてはいけない。
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