遠藤まめた(えんどう・まめた) 社会活動家
一般社団法人にじーず代表。1987年埼玉県生まれ。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)、「みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT』(ちくまプリマー新書)ほか。トランスジェンダーの情報サイト「trans101.jp」主宰。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
政治家と結びつく一方で、各地で草の根の取り組みも
統一教会の動きによって影響を受けたと思われる出来事もある。2020年に沖縄県宜野湾市で提案された「男女平等及び多様性尊重条例案」は性的指向の文字が入っていることを理由に否決されている。その前年、宜野湾市では統一教会による集会が開催されており、宜野湾市議会の上地安之議長や他3名の議員が来賓として出席していたことが、ジャーナリストの鈴木エイト氏によってオンラインメディア「ハーバー・ビジネス・オンライン」上で指摘されている。
宜野湾市での条例の可決に向けて活動していた砂川秀樹氏は、統一教会と議員の関係について「沖縄の新聞記者などもそのことは把握していることは直接耳にしていたので、もっと掘り下げて取材をしてほしかった。宜野湾市の条例は最終的に反対派の意見を受け入れた形で成立しており、反対派を勢いづかせてしまったと思う」と話す。
この事例で思い出すのは、宮崎県都城市の男女共同参画条例が2003年に制定されたときの統一教会のキャンペーンだ。この条例の最大の特徴は「性別又は性的指向に関わらず」人権を尊重するとうたったところで、そこに統一教会は危機感を覚え、統一教会系の新聞「世界日報」でネガティブキャンペーンを行った。このままでは都城市がフリーセックスコミューンになってしまうなどの扇動が行われ、2003年には1票の差で条例は可決されたものの、2006年には同条例からは「性的指向」の文字は外されてしまった。同じようなことが2020年代にも起きうるということだ。
一見して、統一教会による影響であることが見えにくい動きだが、実際のところ関わりがある事例は他にもありそうだ。たとえばLGBTの権利拡大に懸念を示す情報サイトのドメイン取得者を調べると、統一教会の広報担当者と同名の人物がヒットすることなどがSNS上では指摘されている。
統一教会の関連団体である国際勝共連合は、主な活動方針のひとつとして「行きすぎたLGBTの権利拡大」や同性婚への反対をあげている。このような動きはこの数年で始まったわけではなく、上にあげた都城市の事例のように2000年代から継続しているものだ。
男女共同参画基本法が1999年に制定されたことへの反動として当初は、日本政策研究センター(右派のシンクタンク)や日本時事評論(新生佛教教団が発行するオピニオン誌)らが中心となり、男女共同参画の取り組みや性教育へのバッシングが行われていた。
日本時事評論の「号外2002年6月1日号」では、男女共同参画社会によって「トイレも男女共用が望ましいという広報・宣伝がはじまっています」として男女別トイレや男湯・女湯とわかれた施設に大きくバツがついたイラストが添えられている。見出しには「Q 男女共同参画社会ってなーに? A 男と女の一切の区別をやめます」と大きく描かれている。
また男女共同参画によってひなまつり、鯉のぼりが否定される、など伝統が破壊されることへの危機感を煽る表現がなされている。このようなキャンペーンは安倍晋三氏や山谷えり子氏らを中心とした政治家の動きと連動していく。
2002年には中学生に対して避妊の方法を具体的に教えていた『思春期のためのラブ&ボディBOOK』が山谷えり子議員らから問題視され回収された。2003年には知的障害のある児童生徒にも理解しやすいよう、人形をつかって性教育をおこなっていた東京都立七生養護学校の取り組みが都議や産経新聞によって問題視され「まるでアダルトショップ」などのセンセーショナルな語られ方でバッシングが行われた。
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