「一緒になろうとずっと過ごしておりましたし、彼女の議員活動もそういう気持ちで支えてまいりましたので、突然、このような状況になって大変困惑しておりますし、私自身もまだ気持ちが整理できていない状態であります……」
横浜地裁の法廷に立った40代の男性(以下、A氏)は、自身の切実な胸中をそう訴えた――。
A氏が「彼女」と語る人物とは、サービスエリアで有名な海老名市の現職市議会議員・舘登志子(49)である。昨年9月、本誌は舘市議に「不倫裁判」が勃発していることを報じたが、その裁判の判決が今年6月に下った。
「発端は昨年7月、元交際相手だったA氏が舘市議に対し、『不貞行為があった』と訴えたのです。しかもその不倫の相手というのが、海老名の隣町である寒川町の小泉秀介町議(43)でした。A氏は『自分は舘市議と内縁関係にあった』、『小泉町議に舘市議を寝取られた』と主張。550万円の慰謝料を求めて裁判を提訴しました。
一方の舘市議はA氏との交際は認めたものの、『小泉氏と交際を開始したのはA氏と別れた後』と反論。また、『(A氏と)入籍の約束はしておらず、婚姻届に判を押したりしていない。内縁関係にないので、不貞行為も成立しない』と真っ向から否定するなど、当初から泥沼裁判の様相を呈していました」(全国紙司法担当記者)
舘市議は東海大学で航空宇宙工学を学んだ〝リケジョ〟議員。一方、小泉町議は元ゲームシナリオライターという異色の経歴の持ち主だ。
「舘氏とA氏の出会いは’16年まで遡ります。二人は婚活パーティーで出会い、その後、交際に発展。当時、A氏には9年間別居状態の妻がおり、離婚が成立するまでは入籍ができずにいたが、気持ちの上での婚約のつもりで舘氏とともに婚姻届けに名前を書き、捺印を押しています。証人欄には舘市議の友人に名前を書いてもらっている。その後、舘氏は’19年11月に海老名市の市議選に出馬。見事当選を果たし、以降A氏は会計責任者として収支報告書の作成を行うなど彼女の政治活動を支えていました」(神奈川県政関係者)
舘市議の当選から3ヵ月後の’20年2月、A氏は前妻との離婚が成立。正式に舘市議と入籍をしようとしたが、彼女からは「離婚直後の男性との交際を公表するのは議員として体裁が悪いので2年後の選挙まで公表は待って欲しい」と伝えられたという。しかし昨年4月、舘市議から突如として別れを切り出された。
「舘市議から『別れたい』と言われ、A氏が理由を尋ねるとそこで初めて小泉町議との交際を打ち明けました。A氏は関係を解消したくないと舘市議に伝え、彼女も『もう少し時間が欲しい』と返答。ただ、その後も具体的な返答をしない舘市議に痺れを切らしたA氏は、昨年5月半ば、海老名市内にある彼女の自宅へ向かいます。そこに小泉町議の車が停まっていることに気づき、持っていた合鍵で自宅に入ると舘市議と小泉町議の姿がありました。A氏が不貞行為を指摘すると舘市議は『内縁関係ではなかった』と交際自体を否定し、口論に。警察が出動するまでの騒動になりました」(前出・神奈川県政関係者)
こうして、A氏は提訴へと踏み切ったのである。
冒頭の場面は、そんな「不倫裁判」のなかで今年3月に行われた「本人尋問」での一幕だ。裁判の焦点はA氏と舘市議が内縁関係にあったかどうか。A氏の「本人尋問」と同日には舘市議も法廷に立ち、初の直接対決の場となった。
A氏は未提出ながらも婚姻届けに署名をしていたこと、自身の両親が身に付けていた結婚指輪を舘市議に渡したこと、A氏の離婚成立後に舘氏の両親に報告したことを引き合いに内縁関係は成立していたと主張。それに対し舘市議は、「(結婚指輪は)A氏から借りたもので両親のものとは知らなかった」と反論。さらに「A氏の離婚後も結婚の話にはなっていない」とした。しかし、婚姻届のことについて話が及ぶと、終始、歯切れの悪さが目立った。
以下は法廷での場面の抜粋だ。
代理人弁護士「婚姻届けについての記憶は?」
舘市議「ほぼほぼこれのこともちょっと覚えてないので、記憶がないですね。覚えてないです」
弁護士「あなたが署名、捺印した場面も覚えていない?」
舘市議「まったく覚えていないんです。言われるとそうだったかなっていうふうにうっすら覚えているんですけど」
弁護士「あなたの署名で間違いない?」
舘市議「ちょっと思うんですけど、ちょっと、そこ、いつ、うーん」
そして、小泉氏との出会い、A氏との別れを決意した複雑な恋心についてはこう赤裸々に語った。
弁護士「小泉氏とはいつ知り合ったんですか?」
舘市議「知り合ったのはいつからかっていうのは明確なものではないですけれども、同じ党の所属議員なので、私が立候補する前に党のお仕事を始めたときのどこかで出会ってるんだと思います」
弁護士「いつ頃なんですか?」
舘市議「前回の参議院選挙のときのお手伝いではもうお互いを認識してたと思います」
弁護士「二人で出掛けるようになったのはいつからなんですか」
舘市議「二人でその頃から党の仲間と一緒にいろんなところに、党の勉強会等には出掛けてます」
弁護士「A氏との別れを決意したのは?」
舘市議「何が何でも私のせいにしてくるっていうところがもうダメなんだなって。この先、たぶんずっとこの人はこういう感じで何か不都合なことがあったら私のせいにして、私を責めて生きていくんだなって思ったときにもうやってられないっていう形で、もう終わりにしなきゃって思ったんです」
今年6月、「不倫裁判」は審判の日を迎えることとなった。果たして判決の行方はいかに――。
「横浜地裁は婚姻届けの証拠を元に、A氏と舘氏の間に内縁関係が存在していた、そして小泉氏との交際がA氏との別れの大きな要因になったと考えるのが相当とし、舘氏に対して慰謝料55万円の支払いを命じました。一方、A氏に対しても合鍵で舘議員の自宅に入り、小泉町議と鉢合わせた出来事が不法行為に当たると指摘し、5万5000円の支払い命令を下しました」(前出・神奈川司法担当)
裁判結果を受け、舘氏は控訴。現職議員による「不倫裁判」は第二ラウンドに持ち越されることとなった。
取材・文:土山悠