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2020年1月21日 (火)

動物福祉:動物愛護団体雑感⑤~日本動物虐待防止協会の藤村晃子がEVAの杉本 彩を訴えた~

 ご存じの方もいると思いますが、昨年(2019年)、茨城県内で次のような動物愛護法違反事件がありました。問題の団体は動物愛護法違反で起訴されたようですが、ところがそれとは関係のないところで動物愛護団体間で場外乱闘まがいのトラブルがあったようです。

『動物愛護団体の日本動物虐待防止協会(横浜市)は13日、茨城県古河市のNPO法人が犬や猫を劣悪な施設内で飼育しているとして、動物愛護法違反などの疑いで同県警古河署に告発し、同日付で受理されたと明らかにした。(茨城のNPOを刑事告発 「保護犬、猫を虐待」 共同通信2019/5/13)』

『 センターによると、このNPOについては昨年、市民から「不衛生な状況で動物を保護している」などと情報提供があり、昨年10月にセンターが立ち入り調査した。同12月に改善勧告を出したが、改善が見られなかったため、今年2月に改善命令を出した。

 センターの担当者は「不衛生だが、施設内で犬猫は健康状態は良く、衰弱などはしていないことを確認している。虐待とは考えていない」としている。(犬猫100匹超、劣悪環境に 保護施設運営NPOを告発:朝日新聞デジタル2019.5.17)』(この茨城県の見解についてですが、動物愛護法上の基準違反があったが故に動物愛護法第23条に基づき勧告や命令を行っている訳です。動物愛護法上の罰則が適用できる‘虐待の疑いがある’と判断できなければ警察は告発状など受理しませんし、告発を受理する過程で茨城県警は必ず茨城県の生活衛生課に捜査照会を行っているはずです。改善命令まで行っておきながら警察には‘虐待の疑いはない’と説明したのでしょうか? ちなみに、第2種動物取扱業は「届出」に過ぎないため、行政として対応できるのは命令までで業務停止や取消などの不利益処分はできません。それ以上の措置となると掲示告発して刑事処分を求めるしかありません。)

その後、「週刊女性(主婦と生活社)」に次のような記事が掲載されました。

『女優の杉本彩さんが理事長を務める公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」(東京都)は約2年半前から同団体を問題視。県などに現況を訴え、改善を求めてきた。(中略)

行政がようやく重い腰を上げたのは昨年10月。県の調査で不衛生な飼育状況が確認され、同12月の再調査でも改善はみられず、県は動物愛護法に基づき行政指導の改善勧告を出した。

しかし、今年2月までの期限内に状況が変わらなかったため、動物愛護団体に対しては異例の改善命令を発動。ようやく同法人は清掃や頭数管理などに本腰を入れるようになったという。(茨城・古河》2か月で19匹が死亡、ネグレクト動物保護施設で見た「地獄絵図」 | 週刊女性PRIME2019年6月11日号①)』

『こうした現状に、前出のEvaなど複数の動物愛護団体が同法人を動物愛護法違反の疑いで刑事告発し、茨城県警古河署の捜査が始まった。

告発に踏み切った非営利一般社団法人「日本動物虐待防止協会」(神奈川県)の藤村晃子代表理事は、「3月にA氏の施設に入り、現場の撮影に成功したので、これを証拠として動物虐待を告発しました」と経緯を説明する。(茨城・古河》2か月で19匹が死亡、ネグレクト動物保護施設で見た「地獄絵図」週刊女性PRIME2019年6月11日号②)』

この週刊誌報道の直後に日本動物虐待防止協会の藤村晃子代表のブログに次のような記事が掲載されています。

『日本動物虐待防止協会の協会名を記述したご指摘がありましたのでここにご返答させていただきます。 (※2019年5月31日 公益社団法人EVA Facebook 記述に対し) (中略)2019年3月19日 悪質な茨城県NPO法人を査察・調査し、動物虐待環境下に置かれている動物たちの証拠映像を撮影し、虐待された動物を保護致しました。

2019年3月29日 古河署に証拠映像と告発状、それに伴う膨大な証拠資料を提出し、告発に向けて受理していただくよう相談に行きました。

2019年4月17日古河署と告発状を再度確認し合い、又、翌日に環境省記者クラブで記者会見を行い、そこにはTBS、テレビ朝日、共同新聞、NHKなど各社報道機関も集まることから、告発したと、発表して良いかの確認を取りましたところ、告発したと発表しても良いとのことでしたので、翌日4月18日に告発を正式に表しました。

2019年5月13日 古河署と告発状並びに、証拠映像、証拠資料を提出し、正式に告発受理となりました。

2019年5月17日 古川署と茨城県警本部、警察の方と共に2019年3月19日の証拠映像をもとに事件日を3月19日として供述調書を作成いたしました。告発人は日本動物虐待防止協会代表理事藤村晃子

2019年5月23日 悪質な茨城県NPO法人へ家宅捜査が入りました。その経緯を各管轄機関よりご報告をいただきました。

このような経緯の中で、同じ案件で資料を一本化できるのであれば協力し合い一本化することにより、より円滑な事件調査が進められることのご指摘があり、日本動物虐待防止協会としては、ならば一本化できるものはしようという意図の呼びかけの記述を致しました。(最近の日本動物虐待防止協会に関する報道に関して | 本日も・・・aki日和♪2019.6.15)』 週刊女性の誤報?解説」GOD新証言!内部記者も認めた?(YouTube)

一方、杉本 彩が代表を務めるEVAは、昨年12月までホームページに次のような内容の記事を掲載していました。

『去る8月20日、日本動物虐待防止協会代表が、当協会代表杉本彩の名前を出し、当記事削除要請の動画をyoutubeに公開したあと、8月27日に当該代表からEvaにメールをいただきましたので下記のように回答しました。(中略)

告発の要件を満たしていれば捜査機関は受理を拒絶できませんし、仮に警察が貴殿が書き込んだような趣旨のことを言うのであれば、犯罪を申告し処罰を求める権利の妨害にあたるとおもわれることから、古河警察署に対しそのようなことを貴殿に言ったのか確認したところ、「そのような事実はない」、「そのようなことは言っていない」との明確な回答があり、これらの書き込みが真実とは異なるものであり、記述の削除をするよう貴殿に伝えるとの事でした。(中略)

また、当協会は、日本動物虐待防止協会の告発とは無関係に、以前より告発の準備を進め告発に至ったものであり、日本動物虐待防止協会の動きに追随し告発をしたものではありません。

当協会は、適法な手順を踏み告発を行っておりますので、当協会や当協会代表を誹謗中傷するような行為に対しては法的措置も含め対応を検討させていただきます。(当協会の告発に関する書き込みについて - 公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)』(このページは昨年12月7日以降に削除されています。) 茨城の動物愛護団体代表が起訴確定 | 杉本彩オフィシャルブログ 杉本彩のBeauty ブログ 

私も含めて両者の間で何があったのか知らない方には全く訳がわからないと思います。これらを読んだ限りでは両者間でトラブルになっていたのは事実なのようで、一本化だとか誰が刑事告発したかなど虐待事件の本筋とは全く関係ない部分で争いが起きているようです。

まず、「日本動物虐待防止協会」と藤村晃子代表についてですが、この団体の代表が某ブログで糾弾されていたので名前は知っていましたがおかしな団体はいくらでもあるのでこの団体にも特に関心はありませんでした。この件で改めて代表のブログをいくつか読んでみましたが、その偏った内容に呆れてしまい、私もいわゆる動物愛誤団体だと思いました。例えば、プラセンタを採取するためだけに牛や豚を妊娠させて、子牛や子豚を殺しているかのように書かれていましたが、プラセンタのために何故、そのような非合理なことをしなければならないのでしょうか?私は牛の出産を目の前で見たことがありますが、普通、胎盤は母牛が食べてしまいますのでそれを採取して使用すれば済む話です。牛は人工授精です。プラセンタのためだけにわざわざ妊娠などさせる訳がありません。今はBSEの問題から豚を利用しているようですが、養豚でも同じでしょう。無菌豚も、まるで子宮ごと子豚を摘出しているかのように書かれていましたが、そうして取り出した豚を種豚として一般の豚と隔離して繁殖させた豚に過ぎません。不見識で、プラセンタ憎しで養豚業界を攻撃するのは非常に問題がありますし、プラセンタ化粧品やサプリメントを取り扱っている杉本 彩を攻撃したいだけのように思えます。但し、プラセンタ化粧品やサプリメントにはその効果や吸収されるのかと言った疑問はあります。特に、サプリメントは、消化器官で分解吸収されルので、その目的どおりに再合成されるとは限らないでしょう。これは、目玉を食べると目が良くなる的な怪しい話です。くすりの話 プラセンタ – 全日本民医連

このような先入観を抜きにして、これらの記述にある藤村晃子が刑事告発に至った経緯を考えてみましたが、特に不自然さは感じませんでした。何かと面倒臭い警察と言う相手のいる話で狂犬病予防法違反のように(*1)、告発しても不受理ってこともよく聞く話で、告発するにはそれなりの準備が必要でしょうし、告発の報道をみていると告発状だけ受け取って、後日正式に受理することもよくある話です。いずれにしても、受理されたのであれば、受理するに足る証拠が揃っていたってことなのでそれ自体に疑義は無い訳です。(*1 自治体が、無登録の飼い主を狂犬病予防法違反で刑事告発しても無登録程度では警察はまず受理しません。警察が刑事告発を受理した場合、必ず検察に書類送致されることになっているので、検察もそれを処理しなければなりません。それを踏まえて警察は対応する訳で、EVAが告発は受理しなければならないと言ってますが、本気で警察や検察が告発の全てを受理すると考えているとするならよほどの世間知らずです。告訴・告発の方法/刑事告訴・告発支援センター

一方、EVAについては、ホームページであのようなものを掲載していたことに「公益法人」の振る舞いとしてどうかと思いました。利権体質の獣医師会でさえ表向きは泰然自若としています。実態はさておき曲がりなりにも公益性が求められる公益法人とはそう言うものでしょうし、公益性が厳格化された精度改革後は特にらしい振る舞いが求められるはずで、ある意味、法的手段をちらつかせて他団体を恫喝しているとも受け取れるような内容の記事をホームページにて公表する行為には「公益法人」として非常に違和感を覚えるものです。(要するに当該ページに公益性があったのかってことです。単なる他者との争いでしょう。)

この件に関しては、次のように、杉本 彩が訴えられたと言っているブログもありますが、真偽は不明でどこまで信用できるのかわかりませんので私も全て信用している訳ではありません。タレント杉本彩が日本動物虐待防止 協会から告訴された!GODが 全てを語る! | GOD|ゴッド(ゴッドプロデューサー) official ブログ by ダイヤモンドブログ(藤村晃子のブログに裁判についての記事もありましたが、具体的な話は書かれていないので訴訟の内容はわかりません。)故人の動物愛護家の方のようですが、次のようなブログもあります。NPO法人 ワンライフを巡る裁判 | クローバーのブログ*猫と不思議と日々雑感

疑問に思うのは、週刊女性の記事にある次の部分です。『公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」(東京都)は約2年半前から同団体を問題視。県などに現況を訴え、改善を求めてきた。』とあります。2年半前と言うと、2016年の秋には虐待の実態を知っていたことになります。であるならば、何故、その時点で証拠を揃えて掲示告発しなかったのでしょうか?これは誰でも疑問に思うのではないかと思います。証拠があれば刑事告発できたはずで、告発しなかったと言うことは、告発できるだけの証拠を握ってなかったか、その気がなかった。それはわかりませんが、虐待の情報を得ていたとしてもEVAでは対応できなかったために茨城県に対応を求めたと考えるのが自然ではないかと思います。

では、茨城県の動きはどうだったのでしょうか?朝日新聞によれば、2018年10月に情報が寄せられ立入検査を行って、12月に是正勧告、翌2019年2月に命令とあるので、週刊女性の記事にあるイーVAの説明と齟齬がありますし、EVAが2016年秋に茨城県に連絡していたとするなら勧告までに2年を要し、いくら何でも時間がかかりすぎています。これについては、茨城県にいつこの件を認知して立入検査に入ったのか、その時期や回数を確認するとわかることです。

EVAのページによると、日本動物虐待防止協会の動きに追随し告発をしたものではないとのことで、事実、そうなのでしょう。たまたま二番煎じ】になっただけってことなのでしょう?であるならば、告発状の提出日と受理された日付くらいは週刊女性の記事にあってもよさそうなものです。ところが、週刊女性の記事にも、削除されたページの何処にもその日付がありません。(具体性を欠いているってこと。)

『同じ案件で資料を一本化できるのであれば協力し合い一本化することにより、より円滑な事件調査が進められることのご指摘があり』これについては特に疑問には思いません。一本化したなら、追加の証拠提出で済むでしょう。警察の立場では、同じ案件で事務処理が重複することを避けたいと考えるのは不自然なことではないと思いますし、そもそも、他団体が掲示告発し受理された案件を、重ねて刑事告発することの意味がわかりません。そんなこと(一本化)を言ったのかと第三者が警察に問い合わせて、茨城県警と告発人(藤村晃子)とのやり取りを県警が第三者に伝えるものなのでしょうか?また、正当な主張であれば何故、EVAが上記のページを削除したのか、それも腑に落ちません。

裁判については今後明らかになるのかもしれませんが(今は間接的に伝えられているだけなので訴訟になっているのかもまだ半信半疑。)、一本化だとか誰が掲示告発したかなんてことはどうでもいい話で、何故、そのようなことで争うのか私には全く理解できません。

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