【国家公務員総合職のエキスパート】池田俊明講師による受験生応援コラム第5弾
あらゆる国家公務員試験の科目の中で、企画提案試験ほど異色な試験はないと思います。
ネット検索をしても有意義な情報がほとんどないので、無対策で臨む受験者も多いですが、実は、教養区分1次試験の基礎能力試験と全く同じ配点比重という重要度の高い試験です。
このコラムでは、試験の全貌について、過去の受講生の情報を基に説明します。
令和4年度(2022年度)国家総合職(院卒者・大卒程度)試験日程
| 申込受付期間 | 3月18日(金)~4月4日(月) |
| 第1次試験日 | 4月24日(日) |
| 第1次試験合格者発表日 | 5月6日(金) |
| 第2次試験日 筆記 | 5月22日(日) |
| 第2次試験日 政策課題討議・人物 | 5月24日(火)~6月10日(金) |
| 最終合格者発表日 | 6月20日(月) |
企画提案試験とは?
人事院HPによれば、企画提案試験は「企画力、建設的な思考力及び説明力などを判定するための試験」とあります。
これだけでは具体的にどういう試験なのかイメージしにくいのですが、簡単に言えば、政策提案の論文執筆&現職官僚2名相手にプレゼン&質疑応答という、他の公務員試験ではまず体験することのない試験であります。
にもかかわらず、配点は全体の5/28と、1次試験の基礎能力試験Ⅰ・Ⅱ合計と全く同じという、かなり重要度は高いです。
そのため、早期から対策を立てればよいのでは?と思われますが、実は次章で述べている理由により、あまり早期から対策を始めても、努力があまり報われないのが現状です。
企画提案試験の内容
企画提案試験は、毎年、教養区分第1次試験合格発表日に人事院ホームページにて、参考文献や資料等が提示されます。
よって、多くの受験生はこの日から資料等を読み込み、内容を十分理解した上で試験に臨むこととなります。
企画提案試験の参考文献や資料例
ちなみに、参考文献は各省が発行する白書の一部が指定されることが多いのですが、2021年教養区分では、
- 内閣官房編「国土強靱化進めよう!」(令和3年3月版)
- 内閣官房編「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策(概要)」
- 内閣官房編「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の対策例」
が指定されていました。
そして、実際の本試験は、下記のような2部構成に分かれています。
★Ⅰ部:小論文
課題と資料を与え、解決策を提案させる(解答時間は2時間)。答案用紙は1枚(両面)
★Ⅱ部:プレゼンテーション及び質疑応答
Ⅰ部で書いた小論文の内容について試験官(2名)に説明、その後質疑応答を受ける。
(発表時間5分間、質疑応答:概ね20分間)
課題紙及び参考資料は,Ⅰ部終了時に回収するが,Ⅱ部の発表に当たり,準備時間(10分間)を考慮して,小論文のコピーとともに手渡される。なお,Ⅱ部終了時に,これらは回収される。
受験生による企画提案試験の再現
では、実際に、どのように試験が行われるのか、過去の受講生の情報を基に再現してみましょう。
1 午前中、小論文作成(2時間)
2 昼食休憩
休憩終了までに全員控室に待機。
1列(6~7名)づつ面接室に呼ばれてプレゼン&質疑応答を行うが、1列あたり準備時間10分、個別発表・質疑応答合わせて約25分の合計35分程度を要する。
しかも、この間、控室からの外出はもちろん、読書・携帯・雑談さえも禁止である。
(水分補給も許可がいる)
会場によっては、後列になった受験者は最悪3時間以上何もせずただひたすら待機する羽目になる。
(待機時における不自由さという点では、待機時間がやたら長い官庁訪問よりもひどい…)
※コロナ禍にある現在、密室における長時間の待機を避けるため試験会場を増やしたり集合時間を分ける等の努力をしており、コロナ前に比べると待機時間は大幅に短縮されている。
3 別室で資料が返され、10分間の準備時間(みんなメモしたりしていた)
4 現職官僚である面接官2人相手に、プレゼン&質疑応答開始
プレゼン(5分)→質疑応答(20分)
プレゼンは5分以内厳守であるものの、大きいタイマーが置いてあるため、事前に何度か練習をしていれば焦ることもない。
こんな感じです。なお、評価については、12点満点で例年の平均点は6点前後、また基準点(4点)未満は「足切り」となります。
企画提案試験の対策法
前章で説明したように、予想問題は1次合格発表日に公表される参考資料を待たないといけませんが、毎年の出題形式は下記の通りで、これはずーっと昔から変わっていません。
出題形式は毎年同じ
設問 次で求められている小論文を作成しなさい。ただし,資料は小論文作成に当たっての参考程度とし,資料に示された統計から考えられる施策のみにとらわれる必要はありません。
あなたが置かれている状況
あなたは,ある組織の行政官として上司から次の課題が与えられており,自分の提案を説明するための文書を作成しようとしている。なお、あなたの提案は組織内で検討されたのち,実現に向けて関係府省との調整等を経て,最終的には,国民に対して公表されることとなっている。
上司からの課題
(この部分が講評される参考資料を踏まえたものになる。また最後はいつも下記の文章で締められる)
「…課題達成のための具体的な施策を提案し、組織内の関係者に説明できるような文書(小論文)を作成しなさい。なお、文書中、提案した施策を推進する上での留意点についても必ず触れること。」
テーマは毎年異なりますが、前提や要求されることに変わりはないのですから、日常から対策を意識することはできそうですね。
論文とプレゼントに分けて対策を書きましたので、是非参考にした上で、必ず行動に移してください。
くれぐれもコラムを読んで、それで満足するのだけはやめてくださいね。
論文執筆の対策法
参考資料を踏まえて、論点を予想した上で施策を自分なりに勉強する
企画提案試験のように、資料が与えられる小論文は、基本的には無理に持論を展開するよりは、資料に沿って忠実に書くべきです。
しかし、課題用紙の冒頭には「資料にとらわれず自分の考えに基づいて施策を展開しなさい」と但し書きがあることから、当日渡される資料はあくまで参考にしかなりません。
それゆえ、面倒くさがらず、事前に指定された参考資料を踏まえて、論点を予想した上で施策を自分なりに勉強しておくことが必須です。
あまり詳しくない分野にまで踏み込んで書かない
知識量をアピールしようとするあまり、できるだけ色々な要素を小論文に詰め込もうとする受験生が毎年かなり多いです。
しかし、自分があまり詳しくない分野にまで踏み込んでしまうと、質疑応答で具体策や対応策を聞かれた時に沈黙したり支離滅裂な回答をする羽目になってしまいます。
ゆえに、不得手なことは書かず、厳しく突っ込まれても耐えられる範囲内で記述すべきです。
「複数省庁にとって利益がある」かつ「多様な国民にとって利益のある」提案を目指す
毎年、「組織内の関係者に説明できるような文書を作成せよ」という形式になっていることから、少なくとも提案した政策が所属する組織(省庁)の利益となるように意識しましょう。
しかし、これも毎年必ず但し書きに明記されていますが「その後に関係省庁との調整や国民への公表」が控えていることを考えると、一つの組織のみに利益となるような提案では、高い評価は望めません。
それゆえ、求められる提案は、「複数省庁にとって利益があることを説明できる」ものであり、かつ「政策のターゲットとなる国民以外の国民にとっても利益のあるもの」を意識する習慣を持つことが望ましいといえます。
プレゼン&質疑応答の対策法
大局的・長期的な観点から考える習慣を持つ
社会的に大きな関心をよぶ課題について、目先ではなく、大局的・長期的な観点から考える習慣を持ちましょう。
もちろん、最低限の知識と情報を蓄えるために、有識者の論説や評論を参考にすることはきっかけとしては悪くありません。
しかし、あくまでも参考程度にとどめ、それよりは、実体験や友人との議論を通じて思考を深めていくほうがよいです。
厳しいツッコミがはいることを前提に、繰り返し練習する
どれだけ頑張って事前準備をしても、そもそも政策立案なんてしたことないのですから本番ではかなり突っ込まれます。
ゆえに、叩かれることを前提に、繰り返し練習をした方がいいです。
日常的には、平易な課題でいいので、仲間と積極的に議論する習慣をもちましょう。
その際注意してほしいのは、この試験はディベートではありません。
ゆえに、相手を論駁するのではなく、また、不明な点については「素直に不勉強でした」と互いが謝ることができるような雰囲気を醸成できるよう、笑顔を最後まで維持することを意識しましょう。
その上で、人事院からの参考資料公表後は、予備校等で実施される模擬企画提案試験に積極的に参加しましょう。
池田俊明講師による受験生応援コラム
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