司法試験の選択科目を何にするかということは、受験生なら誰もが一度は通る悩みです。
そこで、本コラムでは、選択科目の一つである労働法について、その特徴や勉強法について説明していきます。
選択科目として労働法を選ぶべきか、自分は労働法に向いているのか、労働法はどのように勉強をすれば良いのかといったことについて、一つの参考にしていただければと思います。
目次
【谷山政司講師が解説!】
アガルートアカデミー司法試験の谷山政司講師が、「選択科目」の労働法について解説します。
労働法は、身近で、また実務でも必須であり、受験者の1/3程が選択する人気科目です。
ぜひ労働法のメリットそして勉強法を知って、選択するか、どう学習を進めるかといった判断にお役立てください。
労働法の特徴
労働法の特徴1 最も選択者の多い科目
司法試験における労働法は、第1回(平成18年度)から一貫して最も選択者が多く、下表のとおり、受験生の約3分の1が選択する人気の高い科目です。
そのため、学者の執筆した基本書・判例集・演習書や、予備校の講座・書籍(再現答案集を含む)が多く世に出回っており、選択科目の中ではかなり教材が充実しているといえるでしょう。
また、選択者が多いので、自主ゼミを組んだり情報交換をしたりすることが容易というメリットもあります。
平成18年度 | 平成19年度 | 平成20年度 | 平成21年度 | 平成22年度 |
32.6% | 31.31% | 31.8% | 31.6% | 31.2% |
平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 |
30.4% | 31.1% | 31.2% | 30.79% | 29.07% |
平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 |
28.27% | 29.04% | 28.14% | 29.11% | 30.08% |
令和3年度 | ||||
29.75% |
労働法の特徴2 身近な法律
会社等でお勤めの社会人の方については言うまでもなく、学生や専業受験生の方でもアルバイト経験があるという方が多いでしょうから、労働法は、民法と並んで、多くの受験生にとって最も身近なところにある法律といえます。
そのため、選択科目の中では最もイメージが湧きやすく、取り組みやすい科目であるといえます。
労働法の特徴3 実務でも必須
例えば、一般民事を扱う弁護士になる場合、労働者から、解雇された、残業代を支払ってもらえないといった相談を受けることがあるのは当然です。
また、企業法務を扱う弁護士になる場合も、会社から、就業規則を改定したい、M&Aにあたって必要となる労働契約承継の手続についてサポートしてほしいといった依頼を受けることが多々あります。
さらに、裁判官であれば、当然労働訴訟や労働審判にも携わることになりますし、労働基準法には刑罰規定がありますから、検察官でも労働基準法違反の事件等を扱うこともあり得ます。
このように、法律実務家になるにあたって、労働法を避けて通ることはできません。
したがって、受験生時代から労働法を勉強しておいて損になることはないでしょう。
現代は「労働法」の時代
「働き方改革」という言葉に代表されるように、現代は「労働法」の時代です。
働き方改革関連法をはじめとする数多くの立法・法改正が矢継ぎ早になされ、社会の耳目を集める労働法関連の事件や裁判例も増えています。
そのような時代にあっては、労働法の専門家のニーズは増えていくものと予想され、実社会において労働法の占める重要性は今後ますます高まっていくものと考えられます。
すなわち、労働法を勉強するということは、皆さんの実務家としての価値を高めることに他ならないといえます。
※関連コラム:【司法試験・予備試験】選択科目ごとの合格率・難易度を解説!
労働法の勉強法・ポイント
広範な知識・暗記が要求される
選択科目労働法の出題範囲は、労働基準法、労働契約法などの「個別的労働関係法」と、労働組合法などの「集団的労使関係法」に大きく分けられます。
労働法の学習に占める割合としては、概ね、前者が7、後者が3といったところです。
労働法の絶対的な勉強量としては、選択科目の中でもかなり多い部類に入ります(少なくとも行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法と同程度はあります。)。
また、労働法の特徴として、①法律自体が非常に抽象的であることが多く(例えば、解雇の実体的要件について定める労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」としか定めていません)、②それ故、重要なルールの多くが判例法理(解釈)によって形成されているということが挙げられます。
したがって、労働法の勉強にあたっては、判例法理の深く正確な理解・記憶が極めて重要になります(これについては後述します)。
そのため、暗記・記憶が得意な人、あるいは解釈のダイナミズムが好きな人は、労働法に向いているといえるでしょう。
他方で、いわゆる現場思考型の応用問題が出題されることは少なく、出題されるのは典型論点を問う基本問題ばかりです。
実際に、過去問では、有名判例の事案そのままであったり、典型論点のみを問う問題であることが一見して明らかであるような問題が多く出題されています。
そのため、一定の知識量があれば、合格水準の答案を書くことは比較的容易といえます。
したがって、労働法の学習にあたっては、予備校の講座を利用するなどして、短期間に全体を俯瞰し、早い段階で一定の知識量を確保した上で、問題演習を積みながら定着を図るという勉強法が効果的であると考えられます。
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民法的・公法的な発想が要求される
労働法は民法の特別法であり、また、使用者と労働者の間には雇用契約(労働契約)関係が存在しますから、労働法(とりわけ個別的労働関係法)の問題を解くにあたっては、民法的な発想、特に契約法・債権法的な発想が要求されます。
具体的には、「請求→法的根拠→要件→効果」、「反論→法的根拠→要件→効果」の枠組みの中で、請求権の発生・消滅等を、条文の要件ごとに検討していくことになります。
したがって、民法的な発想が身に付いている人は、労働法の解法も容易に習得できるでしょう。
また、集団的労使関係法においては、労働組合・組合員が労働委員会という行政機関に行政救済を求める手法について問われることがあるため、一部行政法の知識も要求されます。
さらに、憲法は、27条2項において、勤労条件に関する基準は法律で定めると規定するとともに、28条において、いわゆる労働三権を保障しているなど、労働法は、憲法にルーツを持つ法律ともいえます。
すなわち、労働法には、弱い立場にある労働者の保護という公法的な側面もあり、公法分野に関心がある人も、労働法に興味をもって学習を進められるでしょう。
判例学習が重要になる
司法試験労働法の出題趣旨・採点実感・ヒアリングでは、判例学習の重要性が繰り返し指摘されています。
一例を挙げると、平成25年司法試験の採点実感では、「判例を踏まえ、適切な規範定立及びあてはめができているかなどを重視した」とされ、「優秀」の水準にあると認められる答案の例として、「判例の判断の枠組みを踏まえた的確な規範定立と当てはめを行い、説得的な論述を行っている答案」が挙げられています。
一方、「不良」に該当する答案の例として、「関係条文・判例に対する知識に乏しく、…例えば、規範を定立せずに単に問題文中の具体的な事実を列挙するにとどまるなど、…基本的な理解・能力が欠如していると思料される答案」が挙げられています。
そのため、まずは、各論点についての判例の立場をしっかり論証できるようになっておくことが最低限必要となります。
予備校の論証集などを利用して、判例の規範を論証の形で暗記してしまうのが最も効率が良いでしょう。
また、市販の判例集や判決原文がきちんと引用された予備校のテキストなどを用いて、判例を読み込んでいくという作業も必要になります。
このとき、単に判例の規範や理由付けをチェックするだけでは足りません。
判例がどのような事実関係の下において、どのような理由付けで、どのような規範を定立し、どのような事実に着目してあてはめを行い、どのような結論を導いたかといった視点で判例を読む必要があります。
言い換えれば、判例学習にあたっては、あてはめの「考慮要素」や「相場観」をも磨くことが重要ということです。
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