近年レジ袋の有料化が始まるなど環境政策に注目が集まっています。
そのような中で司法試験の選択科目として環境法の選択を検討している人もいるのではないでしょうか。
ここでは科目選択の一助として環境法とはそもそもどのような法律なのか、どのような人に向いているのか、試験対策はどのように行ったらいいのかという点についてみていきます。
環境法の特徴
環境法の選択状況
令和2年の司法試験において環境法を選択した人数は143名(受験者全体の4.2%)であり、これは国際公法に次いで2番目に少ない選択者数です。
また、平成28年までは受験者数は年々増加傾向にありましたが、近年は減少傾向にあります。
このような受験状況のため、予備校の講座をはじめとする教材は極めて少なく、教材の充実度という面では勉強しにくい科目であるといわざるを得ません。
一方で選択者が少ないのでしっかりとした対策すれば得点が跳ねる可能性は高いといえます。
また最低ライン未満の受験者(いわゆる足切りされる受験者)の少なさも魅力的です。
現に、令和3年の司法試験では環境法で最低点を下回った受験生は5人、令和2年の司法試験では1人となっています。
民法の不法行為分野と行政法分野との関係が密接
環境法は環境の汚染除去予防を目的としています。
そして、その手段として挙げられるのは、差し止め訴訟等の行政的な手段と不法行為に基づく損害賠償請求といった民事的な手段です。
そのため環境法、とくに後述の環境訴訟分野からの出題に関しては行政法や不法行為法との重複が見られます。
したがって行政法や不法行為法が得意な人に環境法は向いているといえます。
※関連コラム:【司法試験・予備試験】選択科目ごとの合格率・難易度を解説!
環境法の勉強法
出題範囲及び出題傾向
環境法は環境10法と呼ばれる個別法が出題範囲となっています。
環境10法とは、
- 環境基本法
- 環境影響評価法
- 水質汚染防止法
- 土壌汚染防止法
- 大気汚染防止法
- 廃棄物処理法
- 自然公園法
- 循環型社会形成推進基本法
- 地球温暖化対策の推進に関する法律
- 容器包装にかかる分別収集及び再商品化の促進等に関する法律
を指します。
一見範囲は膨大でありインプットの比重が大きいようにも見えます。
しかし今までの出題傾向としてはこれらの個別法の知識を問われている問題は少なく、適切な条文を引くことができるのかという点を問う問題が多く出題されているため、インプットの負担は他も科目と比較したときそこまで大きいものではないと考えられます。
また選択科目は第一問、第二問各50点、合計100点が出題されます。
環境法では例年第一問で特定の政策の問題点や解決策を検討する環境政策の問題、第二問では差し止め訴訟等の行政訴訟や、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟などの環境訴訟の問題が出題される傾向にあります。
環境政策に関する出題への対策
平成31年環境法第一問設問2では資料付きで「A県は…全窒素,全燐及び全亜鉛の環境基準を達成するため, 従来の対策に加え,どのような措置を採ることができるか…論じなさい。」というような問題が出ています。
このように環境政策の問題では、どのようなとるべき具体的な政策について検討させたり、現に実施されている政策の問題点を論じさせる問題が頻出です。
採点実感・出題趣旨によるとこのような問題の採点は適切な条文を引けているかという観点からなされているようです。
したがって環境政策の問題で確実に点を稼ぐためには先の環境10法の基本的な構造を把握し、適切な条文を引けるようにしておくことが肝要です。
そこで環境政策に関する出題に対する対策としては、
各法律の六法の目次から出発して、
目次の各項目ごとに、どんな条文が入っているかの概要を確認し、
その中で条文が何を言っているか、
どんな場面を想定しているのか、
よくわからないものに関してはコンメンタールを参照したり、
基本書や実務書や行政機関のHPを参照して補強していく
といった勉強法が考えられます。
環境訴訟分野の出題に関する対策
先のとおり環境訴訟に関する出題は行政訴訟の問題と民事訴訟の問題が多く、問われている内容も原告適格や処分性、訴えの利益といった行政法とも重複する内容、過失や損害という不法行為法との重複がみられます。
それらの知識については行政法や民法の対策をしていれば自然と身につくものです。
そのため、環境訴訟の出題に関しては環境法固有のインプットの分量は少なくて済むといえます。
一方出題のなかでは普段聞きなれない汚染物質名が多く出てくるため具体的な事案がイメージ困難な場合があります。
そのためそれらに慣れるため問題演習を多くすることが重要です。
そこで市販の演習書が少ない現状においては過去問を繰り返し解いておくべきであるといえます。