文学賞主催社の受賞数を数えてみる 集英・新潮・講談・角川編

非公募文学賞は公平なのか?

出版社が主催する非公募文学賞(厳密には財団法人が主催の場合もあります)で疑問となるのが、
公平な審査が行われているのか。自社の小説を贔屓しているのではないかという部分でしょう。

今回は2000年から2020年までの集英社、新潮社、講談社、KADOKAWA主催の文学賞で、出版社別の受賞数をまとめてみました。


集英社主催

柴田錬三郎賞
集英社出版四賞の一つで、柴田錬三郎氏の業績を称えて設立。集英社と一ツ橋綜合財団が主催。
7月1日から翌年6月30日までに刊行された小説が選考対象。

出版社受賞作品数
集英社(主催)8
文藝春秋5
新潮社3
毎日新聞社2
徳間書店1
角川書店1
角川春樹事務所1
PHP研究所1
祥伝社1
中央公論新社1

2000、2004、2009年は2冊が受賞。2000年は2冊とも文藝春秋でした。

講談社主催

吉川英治文学賞
吉川英治氏の偉業を記念して設立。吉川英治国民文化振興会が主催、講談社が後援。
1月1日から12月31日までに発表された、小説、評論などが選考対象。

出版社受賞作品数
講談社(主催)11
集英社2
文藝春秋2
新潮社1
毎日新聞社1
角川書店1
PHP研究所1
幻冬舎1

野間文芸賞
講談社の創業者である野間清治氏の遺志により設立。講談社が後援。
小説のほか戯曲や評論なども対象で、前年9月1日から8月31日までに発表された作品が選考対象。

出版社受賞作品数
講談社(主催)11
新潮社8
朝日新聞出版1
幻冬舎1

吉川英治文学賞は2006年は該当作なし、2014年は2冊受賞。
野間文芸賞は創業者の名を冠しているので講談社が一番でも納得してしまいますが、新潮社が多いのは意外でした。

新潮社主催

山本周五郎賞
一般財団法人新潮文芸振興会が主催。
前年4月から3月までに発表された小説が選考対象。ただし、小説以外も選考対象とすることがある。

出版社受賞作品数
新潮社(主催)11
集英社3
文藝春秋2
角川書店2
中央公論新社2
幻冬舎2
光文社2
講談社1
早川書房1
ホーム社1

三島由紀夫賞
一般財団法人新潮文芸振興会が主催。
小説のほか戯曲や詩歌なども対象で、前年4から3月までに発表された作品が選考対象。

出版社受賞作品数
新潮社(主催)10
講談社2
文藝春秋2
朝日新聞出版2
角川書店1
祥伝社1
扶桑社1
河出書房1
筑摩書房1
早稲田文学
(単行本は筑摩書房)
1

山本周五郎賞は2001年、2002年、2005年、2007年、2008年、2010年は2冊が受賞。2002年は集英社と集英社グループのホーム社が受賞。2008年は2冊とも新潮社。
三島由紀夫賞の2001年は2作品が受賞。

KADOKAWA

山田風太郎賞
山田風太郎氏の独創的な作品群と作家的姿勢への敬意を礎に創設。KADOKAWAと角川文化振興財団が主催。
前年9月1日から8月31日(奥付表記)までに刊行された小説が選考対象。

出版社受賞作品数
KADOKAWA(主催)3
講談社3
新潮社2
文藝春秋1
小学館1
双葉社1
光文社1

2010年に始まった賞のため、11回分のデータです。
2012年は2作品が受賞。2010年の1回目は文藝春秋が受賞。


どの文芸賞も主催者が一番多く受賞している結果となりました。
とくに講談社、新潮社は自社が受賞する傾向が強いようです。

唯一、山田風太郎賞は主催のKADOKAWAと講談社が同数でした。
しかし公平かというと、第5回・第6回・第10回を除き、候補作品の中にKADOKAWAの本が2冊、
多いときは3冊含まれています。

100万円前後の賞金と選考委員への謝礼、宣伝効果などを考えると、やっぱり自社の割合が高くなるようです。

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