山上容疑者、数十万円以上の借金 銃づくりの費用で経済的ひっぱくか
安倍晋三元首相(67)が奈良市で8日、参院選の街頭演説中に銃で撃たれて殺害された事件で、無職の山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=に少なくとも数十万円の借金があったことが捜査関係者への取材でわかった。手製の銃の材料を購入しており、カードの支払いや金融機関からの借り入れが残っていた。
ADVERTISEMENT
山上容疑者は「金がなくなり、7月中には死ぬことになると思った。その前に安倍氏を襲うと決めた」と供述しているといい、奈良県警は事件の背景の一つに借金があるとみている。
捜査関係者によると、山上容疑者は「昨年春ごろから武器を作り始めた」と供述。奈良市内のマンションの自室の家宅捜索で、手製の銃5丁と作製途中のもの二つのほか、数種類の火薬が見つかった。電子はかりやミキサー、工具類など計十数点が押収された。
こうした道具や、銃の弾が入る空の薬莢(やっきょう)などの部品は、ネットなどで購入していたことが判明。銃を自作する前に圧力鍋を使った爆弾の製造を考えていたといい、「爆弾を作るために、圧力鍋を購入した」とも供述しているという。
県警によると、昨年11月から今年2月ごろの間、銃に使う火薬を乾かす場所として、県内のシャッター付きガレージを月約1万5千円で借りていた。
山上容疑者が住むマンションの関係者によると、容疑者の部屋の家賃は月約3万5千円。軽自動車と原付きバイクを所有し、軽自動車は契約駐車場に止めていた。県警は軽自動車とバイクも押収している。
ADVERTISEMENT
山上容疑者は派遣会社に登録し、京都府内の企業の倉庫で働いていたが、「体調が優れない」などとして今年4月に退職を申し出て、5月15日に退社。県警によると、その後、大阪府内の会社に勤めたが、6月初旬に「自己都合」で退職した。
県警が山上容疑者の経済状況を調べたところ、カードの支払いや消費者金融からの借り入れがあり、借金は計数十万円あった。県警はカード会社などへの照会作業を進め、ほかにも債務がなかったか調べている。
銃の作製過程では、火薬の調合や試射を繰り返したとも話しており、銃を完成させるための費用がふくらみ、経済的に逼迫(ひっぱく)したことが事件の背景にあるとみて調べている。
山上容疑者は7月3日、安倍氏が岡山市で7日に演説する予定をインターネットで把握。事件2日前の6日には、岡山市までの新幹線の片道切符をJR奈良駅の券売機で購入していた。翌7日に岡山に向かったが、演説会場には受付があったため入らず、襲撃を断念して奈良市内に戻っていたという。
ADVERTISEMENT
山上容疑者は8日午前11時32分ごろ、奈良市の近鉄大和(やまと)西大寺(さいだいじ)駅前で安倍氏を背後から銃で撃ったとして殺人未遂容疑で県警に現行犯逮捕された。