推し活が、“アンガーマネージメント”になるハナシ
“朝ドラ”の愛称で親しまれてきた連続テレビ小説。
1961年に開始、現在放送中の「ちむどんどん」で106作目を迎えました。
その90作品以上を欠かさず見てきたという、朝ドラをこよなく愛するひとりの女性。
家庭で嫌なことがあっても、コロナでイライラしても、いつも心を和ませてくれたのは、推しである「朝ドラ」だといいます。
ただ鑑賞するだけでなく、彼女の得意分野と掛け合わせて行う推し活。
気持ちを穏やかにする推し活とは…?
(#教えて推しライフ 「日本のドラマ推し」 取材班)
推し歴46年 朝ドラと歩んだ人生
きょうも、朝ドラを真剣なまなざしで見ている東博子さん(55歳)。
彼女は、筋金入りの朝ドラマニアなんです。
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東博子さん
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「絶対見るというか、習慣ですね。生活の一部になっています。
ものすごくはまっている作品は、BSの朝7:30~、総合8:00~、昼12:45~、BSの夜11時まで4回観ます。(※BSの夜は現在放送していません)
朝ドラに占められていて、頭の中、全部朝ドラみたいな時もあります」
東さんの朝ドラ視聴歴はなんと、46年!今まで90作品もの朝ドラを見続けてきた強者です。
ここまでハマったのは、朝ドラ英才教育の影響か…!?
なぜここまで朝ドラにはまったかというと、その歴史を紐解くためには、
東さんの母・郁江さん(79歳)の話をしなくてはなりません。
東さんの祖父は、新しいもの好きで、当時では、めずらしかったテレビを購入。
自宅にテレビがやってきます。
郁江さんが、浪人中にはじまったのが、朝ドラ第一作品目『娘と私』だったといいます。
そこからは、習慣のように毎日朝ドラを見るようになり、現在までの106作、全部を見ているという超ツワモノ。
東さんが、おなかにいるときも、朝ドラは欠かさず見ていたんだとか。
もはや「胎教が朝ドラだったかも…」と東さんは語っていました。
(ちなみに、母・郁江さんの推しは、『エール』に出演していた山崎育三郎さん。携帯電話の待ち受けになっているそうです!笑)
ある意味、朝ドラの英才教育を受けてきた東さん。
ごく自然な流れで、朝ドラを見るのが習慣になっていたといいます。
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東博子さん
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「小さい頃からずっと見ていて、ほんと空気のようになっていて、自分で一番最初に意識したのは、小学4年生にやっていた『雲のじゅうたん』です。出演していた浅茅陽子さん、すごくかっこ良くって、「わーっ!」て思いました。一番古い記憶で残っているのは、浅茅陽子さんの颯爽(さっそう)と飛行機に乗っている姿で、忘れられません」
そして、漫画「サザエさん」が誕生するまでを描いた1979年の「マー姉ちゃん」で本格的にドはまり!
1983年の『おしん』の時に、自宅にビデオデッキがやってきて、毎日録画が可能になり、それ以来、特に好きな作品はVHSにとって残してきました。
当時、ビデオテープは高かったのですが、親に無理を言って買ってもらっていたそうです。
東さんにとっての“トップ オブ 朝ドラ”とは…
そんな朝ドラの中に、人生で一番好きな推しドラマがあるんだそうです。
それが…2019年に放送された『スカーレット』。
戸田恵梨香さん演じる陶芸家・喜美子の半生を描く物語です。
夫の八郎を松下洸平さんが演じ、そのキャラにハマる「八郎沼」なる言葉も生まれました。
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東博子さん
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「八郎さんが出てきた時から、あーって。気になって仕方がないってすごく思って。
松下洸平くんも大好きですけど、でも八郎さんと比べたら、八郎さんがいいかな。
強さと弱さが混ざり合って、いい感じに仕上がってるというか。弱いだけじゃない。でも、完全に強くもない。そういうところが魅力で、どこにでもいるような人だけど、なんか気になる。日に日に好き度が増していって…ハマったので言ったら(朝ドラ史上)一番だと思います」
これまで東さんは、どちらかというと、出演していた女性俳優たちを推す傾向だったそうですが、この時ばかりは、八郎沼にドボン。自分でも驚いたといいます。
そして、放送中からある想いが芽生えます。
八郎さんに「会いたい!」「寂しい!」。
特に八郎さんの出演がなくなったあとは、つらくてつらくてしょうがなかったといいます。
「どうしたら会えるのか…」、考えた先に出来上がったのが、この推し活でした…!
そうだ、描けばいいんだ…!絵に思いを込める
10代の頃は漫画家を目指していた東さん。
「会えないなら、私が描けばいい」と、絵を描く推し活を始めました。
スカーレット放送時は、3日に1枚のペースで八郎のイラストを描き始め、いまでは、その作品は、100枚以上になりました。
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東博子さん
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「本当に集中して書いていました。楽しかったです。毎日よく描けたなと思って。寝ずに描くんですよ」
脚本の隙間を空想する!あの時アレがあったはず!
そして、東さんが描いたものをよく見てみると…ある特徴が。
ただのイラストではなく、ほとんどがストーリーのある漫画です。
実はこれ、ドラマでは描かれていないシーンを、東さんが空想をして続きを描いた話なんです。
例えば…
八郎 …「やっぱり飲み物買うてきますわ。何がいいですか?」
貴美子…「うちはつぶつぶ」
八郎 …「つぶつぶ買うてきます」
貴美子…「右出て、少し行った所に自動販売機が」
八郎 …「分かりました」
近くの自動販売機にジュースを買いに行った八郎。
しかし、なかなか帰ってこないというシーン。
この放送直後から空想を開始した東さん。
何で帰ってこなかったのか?近くの自動販売機に行ったハズなのに何がおこったのか?
3日かけて漫画にしました。
それがこちら!
喜美子が言っていた自動販売機は売り切れ。
他の自動販売機もつぶつぶだけ売り切れ。
町役場に行っても…「何で4本も買っているんや」ここでも売り切れ。
(タタタタ…走る八郎)
「何でつぶつぶだけないんや~!」と喜美子のために遠くまで探しに行っていたんです。
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東博子さん
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「話を膨らませるのが好きで、ストーリーがパッと浮かんで、あ、いいねって思って、面白くなったらすぐ描く。なんか降りてくる瞬間というか、描け!ていうか、そういうものがあるんですよ」
勝手にディレクターズカット版を作成!?
10代の頃、月刊誌に自分の作品を投稿するなど、漫画家を目指していた東さん。
漫画を描く技術はその時に勉強しました。
ペンは「Gペン」と呼ばれる、漫画家が使う本格的なものを使用しています。
「スカーレット」の登場人物の服のデザインは全て頭に入っているので、色付けは何も見ずにスラスラ塗っていきます。
そんな東さん、渾身の一作がこちら。
東さんが大好きだという『スカーレット』の第69回をまるまる漫画にしました。その枚数、約30枚分。
でも、ただ再現しただけではありません。
ドラマ終了後に買った小説版やシナリオブックには書かれているけれど、ドラマではカットされたシーンまで漫画にしようと思ったんです。
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東博子さん
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「もうだから嬉しいですよね。脚本をみて、え!こんなシーンが!お宝シーンじゃない!みたいな。でも、(映像化)してもらうわけにはいかないから、じゃあ自分で描こうみたいな」
この東さん流の「ディレクターズカット版スカーレット」は、書き上げるのに約2か月かかったといいます。
物語の続きやシナリオブックの考察…放送は終わっても、東さんの空想は永遠に続き、推し活も続いていくといいます。
推し活は、心を落ち着かせること
なぜここまで、絵を描くことに没頭できるのか…?
ふと疑問になったことを東さんに投げかけると、意外な答えが返ってきました。
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東博子さん
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「もやもやしている気分が吹っ飛ぶんです。家族にちょっとイラっとするときも、コロナで行動が制限されて腹が立つときも、生きていると日常茶飯事。でも、その怒りや悲しみが、絵を描くことで昇華される部分があるんです。心を和ますことができる。ある意味、自分の機嫌を自分で取っている感じですね」
幼いころから絵を描くことが好きだった東さん。
そのときから、「面白い」漫画を描いてきたといいます。
“面白ければ、面白いほど、悲しみや怒りが減っていく”
自分の世界に没頭していくことで、心の平穏が訪れるのです。
「割とイライラが解消されて、ニコニコして、笑ってるんですよ」
今回の取材で気づいたことは、推し活がアンガーマネジメントにもなっていたこと。
もちろん、狙ってやっているのではなく、結果として怒りをおさめる方法になったのだと思いますが、小さな怒りから、理不尽なことまで、悩みや怒りも推し活を通じて消えていき、心の安定が訪れるならそれはステキな推し活だなと思いました。
朝ドラ大集合した最新作とは…
最後に…東さんの最新作をどうぞ!
タイトルは「大坂の闇市」
“もし複数の朝ドラがコラボしたら…”
そんな空想ストーリーで描き上げた1枚です。
朝ドラを見続けてきた、東さん。
「朝ドラって闇市がよく出てくる!」と気づき、
『スカーレット』の八郎がいた闇市に、『まんぷく』の世良さんも
出入りしていて、『カムカム』の安子が芋飴を売ったらと考えた設定だそうです。
7月20日(水)放送「あさイチ・#教えて推しライフ 日本のドラマ推し」 見逃しは7/27まで!
ご紹介した東さんもVTR出演しています!
(見逃し配信はこちらから👆)