「もう顔を見ているのは嫌だし、一緒にいるのが苦痛、こんな風に人は心が離れていくんだな。」
という言葉を受け、泣きました。
その時の彼の話では、私がどんなに慎重に言葉を選んで話していても、自分に向けられる全ての言葉や、子供と話している内容などが、自分の人格を否定しているように感じるそうです。
私を傷つけてすっきりしたいという気持ちもあったかもしれませんが、大部分は本気でそう思っているように感じました。
言われた方の立場としてはただ傷つくばかりですが、少し客観的にみると、このように自分に向けられる全ての言葉を否定的にとらえるという話が少し奇妙に感じられました。私の方は、そのような意図で発言したことがなかったからです。
「認知が歪む」という概念が頭をよぎりました。
専門家ではないので、今の彼の心理状態に診断がつくのかどうかはわかりません。けれども、ここに来る前と後の彼の言動と比較すると、今は、モノアミン系のバランスが多少なりとも変化しているように思うのです。
「あそこのラボに行くのは絶対にやめた方がいいよ。みんな病気になって帰ってくるって噂だよ。」
彼が留学先に今のラボを希望しているという話をしたとき、周りのほとんどの人から、PIの人格が問題だという理由で反対されました。
この時、彼と私を含めて、ほとんどの人が、精神的に弱い私の方を心配していたと思います。
今まで一緒に過ごしてきた印象として、彼は、自分の強い欲求をさらに強い理性で押さえつけ、冷静に状況把握に努め、最善の策を1人で考案し、それを着実に実行するタイプの人だと思っていました。
彼と出会って一緒に仕事をしながら、私はどうやったらこんな風に前頭葉が発達するのか、といつも感心し、尊敬していました。
こちらのラボにきてから、彼も私も思ったように仕事をさせてもらえませんでしたが、特に彼は、PIの嫌がるデータを持ってきた事で私よりも辛辣な言葉を浴びせられてきました。
最終的に彼の方が折れ、強要を受け入れることで事態は収束しましたが、彼の失望は大きかったと思います。
特に彼は、ここのラボからでた論文にとても感銘を受け、PIを尊敬していたので、猶更です。
私の場合、
- 今までの自分に欠陥が多く、これまで罵倒されたり蔑まれたりする経験が何度かあった事
- すぐに泣く事
- 友達や同僚に話を聞いてもらい、アドバイスを受けてきた事
などの要素が若干撓る余裕を生み、モノアミン系を最低限必要な程度にまでは戻せていたかもしれません。
このような状態の時には重要な決定は先送りにすべきだとあるサイトに書いてありました。
後日、今までの誤解を生むような言動を謝り、
- 彼に対して、これまで否定的な感情を持った事はない事
- どうすれば事態が好転するかを考えての言動であった事
- 今までも、そしてこれからも想っている事
を伝えました。
心理状態が不安定な時は、思考の過程にも波が生じます。現状が変化しない限り、このような事態はこれからも何度も起こり得ると考えておかねばなりません。
何の苦行か、と辛く思う時も多いですが、そのような時ほど衝動的にならず、一歩引いて現状を見つめなければと思うのです。
Patience is the key to contentment, for you and for those who must live with you.
— Og Mandino (1923-1996)
忍耐はあなたにとって、そしてあなたとともに生きてゆかなければならない者たちにとって、満ち足りた心の安らぎをもたらす鍵である。