どんなに自信がある人でも、多かれ少なかれ仕事や人生で自信を無くしたことはあるはずです。しかし、少し意識を変えるだけで、自分に対する厳しい目を、自分を向上させるために利用することができます。絵本『ちびっこきかんしゃだいじょうぶ(The Little Engine That Could)』の話は、子供心に本当に頭にきました。本の中に出てくる機関車の気持ちと自分の気持ちは、恐ろしいほど乖離していました。機関車の前向きな態度は、私をものすごくイラつかせました。なんでそんなに思い込めるんだ? なんでそんなにできると信じられるんだ? 子どもながらに、機関車はもっと現実的な予測をした方がいいと思っていました。

私は、自分が自己不信をぬぐい切れない理由がはっきりと分かっていませんでしたが、それは自分の性格のようなものだと思っていました。根拠なく自分を信じるのと、まったく自分を信じられないのの、中間というのはあるのでしょうか?

自分を信じられないのはなぜか?

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この"自分"という言葉を使うことで、理解が難しくなっているように思います。脳の中に"自分"という場所はなく、ただ今まで起こった出来事から推測することしかできません。脳全体が自分の感覚というものを作るために動いているのです。自己不信に陥る理由は1つだけではありません。ただし、このことだけは分かっています。人間は、様々な理由のために人生であらゆる経験をし、そのいくつかの経験によって自分に自信が持てなくなります。

自己不信の状態というのは、自己効力感の反対だと考えられます。自己効力感というのは、自分の能力を使って、目標や望み通りの結果を達成することができると信じられることです。

私は以前、自己不信に陥るのは自尊心が低いせいだと思っていましたが、違いました。自尊心がきちんとある人も自己不信になることはあり、自尊心が低い人が常に自己不信をしているかと言えば、そうでもありません。ほとんどの人は、少なくとも以下の2つの理由から自己不信に陥るようです(必ずしもこの2つだけではありませんが)。

失敗するのが怖い

もちろん、誰でも失敗するのは怖いですから、それが頭をもたげているのでしょう。人によっては、失敗するのが怖すぎて、失敗は人のせい、成功は自分のお陰というような、セルフ・ハンディキャッピングのような、自己防衛的な行動に走ることがあります。

セルフ・ハンディキャッピングをする時は、自分自身と起こりうる失敗の距離をできるだけ遠ざけようとします。このようなことをする人は「自分の実力が足りなくて失敗しました」と言うことができません。逆に、先延ばしにしたり、自分ができる努力に限界を設けたりして、自分のパフォーマンスを不利な条件下に置きます。例えば、「試験がうまくいかなかったのは、昨日の夜遅くまで起きていたからだ!」と言ったりします。このような行動によって、失敗をさらけ出すことが少なくなりますが、自分に対する自信も無くなり、どんどん自己不信に陥っていきます。

理想の自分を表現できない

自己不信に陥るのは、今の自分に不満があるからだと考える人がいますが、最近の研究によると、そうではないことが分かりました。自己不信に陥るのは、理想の自分が見えていないからです。どんな人も、なりそうな自分となりたい自分(理想の自分)というのは分かっています。

  • なりそうな自分:自分の希望と恐怖をひっくるめた内面の表れ。
  • なりたい自分(理想の自分):自分が達成できそうな現実劇な目標があり、将来のチャンスを追求したり、目標を達成したりするために、理想の自分が自分に対して強力なやる気を出させる。

研究者は、理想の自分を強く持っている人は、他の人より自己不信に陥ることが少ない、ということを発見しました。そのような人の行動は、きちんと系統立っており、やる気に満ち、達成したい目標に対してブレていません。そのような行動が、自信を失いそうになっても、自分に自信を持ち続ける力を何度も与えているのです。

このような強い理想の自分が無い人は、やる気を継続したり、目標を達成するだけの力を身に付けられると信じることができず、自己不信に陥ります。自分の中に強い理想の自分が無いのではなく、目標に直結した行動の中で、理想の自分を明確に表現できていないのかもしれない、という意味です。

失敗するのが怖くても、理想の自分が見えていなくてもご安心を。自己不信は克服することができます。

中間地点を見つけてコントロールする

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私は、自己不信を払拭する方法や、自己不信の無い人生は素晴らしいという記事はいくつも読みました。不快な経験や感情は排除したいという気持ちは分かります。しかし、自己不信は現実的に目的を達成するために役立つことも分かっています

自分を信用できずに疑う気持ちは一生消えません。あらゆる記事が言っているのは嘘です。できるのは、自己不信を認めることだけです。人間が持つあらゆる感情や気分と同じように、何とかして感じなくすることはできません。バランスを取らなければなりません。

私たちは長い間、より自信がある方が、より良いパフォーマンスを出せると思いこんでいました。しかし、必ずしもそうではありません。自信があり過ぎるせいで、慢心して努力を怠ったり、ミスをしやすくなる人もいます。自己不信があるお陰で良いことがあることもあります。少し自分を疑うくらいの方が、目標を達成するための努力を惜しまなくなります。

では、適度な自己不信と行き過ぎの自己不信のちょうどいい中間は、どうやって見つければいいのでしょうか?

やる気を出すために自己不信を利用する

私は、自分の内なる声や頭の中の思いつきすべてに耳を傾けなければならないと思い込んでいる、罪深い人間です。このような思考を野放しにしておくと自己不信が始まり、良くない結論にたどり着きます。しかし、自分を疑うというのは、チャレンジと同じような、なかなか熱いエネルギーでもあります。満足のいく仕事をすると、自分を疑っていたのは間違いだったと分かります。

クリエイティブな人は、やる気を出すために自己不信を利用している人が多いです。中には、自己不信なしに作品をつくることはできないと信じている人もいます。

「絵が描けないと内なる声が言ったのであれば、何としても描くことで、その声は聞こえなくなる」

──ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ

「偉大な芸術家ほど自己不信的である。完璧な自信というのは、慰めとして才能の無いものに与えられたのだ」

──エドワード・ロバート・ヒューズ

頭の中に自己不信があると認めると、それが目標に対するやる気となり、やる気を持続できるのです。

何を達成したいのか計画を立てる

目標達成に取り掛かる前に、自分の得意なことを把握しましょう。そんなの当然だと思うかもしれませんが、これによって実際に自己不信を克服できるということが、研究によって明らかになっています。自分が自信のあることに、自分の根を下ろしましょう。それから、達成したいことの計画を立てます。

概要を考えずに文章を書き始めると、計画性が無いせいで自己不信が暴走します。仕事のアウトラインを考え、目標を明確にすることで、ブレずに行動することができます。以下の画像にある「SMART」の法則を使ってみてください。

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Specific=特定の Measurable=測定可能な Action-Oriented=行動重視の Realistic=現実的な Time-Oriented=時間重視の目標を立てる

計画を立てたら、信頼している人にそれを伝えましょう。仕事に没頭し過ぎると、(他者のちょっとした協力無しには)全体を認識するのが難しくなることがあります。

記事を執筆している場合は、それがあなたという人間のすべてではありません。Webサイトの制作は、あなたの人生の最重要事項ではありません。そのような気がしているだけです。他の人に協力してもらうことで、客観的になることができ、道を踏み外さずに済みます。また、明確な計画を立てることで、そのプロジェクトがよりうまくいくように思え、達成に向けた足がかりとなります。

行動あるのみ

内省的な自己不信の人は、自分を疑うことに多くの時間を費やします。人間は、そうすることで向上でき、失敗を減らすことができると思い込んでいるせいで、自分の強味と弱味が何なのかを正確に知りたいと思っています。それこそが、いつまでも自己不信に囚われる理由です。

「自分にとって価値があるものは何なのか?」と自問自答してみましょう。自己不信に陥っているせいで何を犠牲にしているのか? その代償は高くつき過ぎていないか? 試行錯誤することや、まったくトライしないことは、どれほど悪いことか? その答えは、あなたが受け入れなければならないことです。

考えるのをやめて、行動を始める時です。安全地帯から出て、自分の可能性を少し広げましょう。また自己不信の悪循環にはまったら、その時はまた壊せばいいだけです。行動を起こし、一歩踏み出すことで、自己不信を壊すことができます。

私は、冒頭で紹介した本『ちびっこきかんしゃだいじょうぶ(The Little Engine That Could)』がまったく現実的に思えず、とても嫌いでした。「自分を信じることができれば、どんなことでもできるよ」なんて言葉は、まったく信じられませんでした。私は、自分を少し疑ってみることは怖くありません。むしろ、自分にとっては良いことだと思っています。自己不信を完全に無くさなければと思う必要はありません。やるべきことは、自己不信に陥るのをやめることです

Use Self-Doubt to Your Advantage|Crew Blog

Andrea Ayres(原文/訳:的野裕子)

Image remixed from Geralt (Pixabay) and Hans (Pixabay). Photos by Anais Gomez-C (Flickr) and John (Flickr).
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