ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
何を「不公正」と感じるかは人それぞれである。容姿に恵まれなかった、貧困家庭に生まれた、病気になった、理不尽な仕打ちを受けた・・・など、さまざまだ。本人が不利益をこうむったと感じ、運命を恨む権利があると考えれば、それが自分は<例外者>だと思う口実になる。ときには、「あらゆる損害賠償を求める権利」を自分は持っているのだから、普通の人が遠慮するようなことでも実行してもいいと自己正当化する。
こうした傾向が山上容疑者にもあるように見受けられる。たとえば、2020年10月から働いていた京都府内の工場で、採用から半年ほど過ぎた頃から、仕事の手順を守らないことが目立つようになったというエピソードだ。この工場の男性責任者は「自己中心的でわがままな性格が出てきた」と話しているが、実際今年3月には同僚から手順違反を指摘されて激しい口論になり、山上容疑者は「そしたらお前がやれや!」と叫んだらしい。
このエピソードから見て取れるのは、本来守るべき仕事の手順であっても、自分だけはやらなくても許されるという思い込みだ。このように例外的な特権を要求することを山上容疑者は正当化しているように見え、<例外者>という印象を受ける。
こうした正当化からは、「裏返しの特権意識」とでも呼ぶべきものが芽生えやすい。これは、普通の人なら遠慮するようなこと、あるいは通常はばかられるようなことでも、実行する権利があるという思い込みにしばしばつながる。その結果、暴走して今回の銃撃事件を起こしたのかもしれない。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
ジークムント・フロイト「精神分析の作業で確認された二、三の性格類型」(中山元訳『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの 』光文社古典新訳文庫、2011年)

















