唯一無二の超大陸「パンゲア」に繁栄した"最強両生類"たちの復元

化石からCG復元!なんと動きまで再現

化石を手がかりに、科学技術を駆使して、古生物のさまざまな謎に迫る「古生物学」。それは、まさに"良質なミステリー"とも言える学問ですが、中でもその進化と滅亡、あるいは現在へに至る道程、「生命の歴史」は、とりわけ壮大なテーマの1つです。

そして、私たちに、その古生物を生き生きと想像させてくれるのが、そうした研究から生みだされた復元。イラストや図に描かれた姿は、まさに当時の世界を彷彿させます。しかし、現在描かれる復元が確定するまでには長い年月を必要とした生物も少なくありません。そして、また新たな知見が加われば、そうした姿もまた"更新"されることでしょう。

今回は、復元にいたる過程が特徴的な古生物とその研究を、『カラー図説 生命の大進化40億年史 古生代編』からご紹介します。時代は、超大陸「ゴンドワナ」と「ローレンシア」、「シベリア」の3大陸が合体し、唯一無二の超大陸「パンゲア」が舞台となる古生代最後のペルム紀です。

* 超大陸「パンゲア」については、前回の〈化石・イコール・姿形とは限らない!? 古生物復元の難しさ〉をご覧ください(リンクが機能しない場合は、下記の関連記事からどうぞ)。

史上最強の両生類

どっしりとした四足動物である。全長は、2.5メートル。やや平たい頭部は、それだけでも50センチメートル超の長さがあり、胴体は分厚く、がっしりとした四肢と長い尾をもっていた。エリオプスは、広い意味では「両生類」に分類され、「史上最強の両生類」と呼ばれることもある。

【写真】エリオプスの全身復元骨格エリオプスの全身復元骨格。豊橋市自然史博物館所蔵 Photo by yasuhiro yasutomo / Office GeoPalaeont

しかし「両生類」とは言っても、現生の両生類たちと祖先・子孫の関係があるわけではない。

現生の両生類は、カエルの仲間で構成される「無尾類」、イモリの仲間の「有尾類」、アシナシイモリの仲間の「無足類」で、この3グループは同じ祖先から進化した「平滑両生類」というグループにまとめることができる。そして平滑両生類は、広い意味での両生類の唯一の生き残りグループでもある。

なお、研究者によっては、平滑両生類以外に対して「両生類」という言葉を使うべきではないのでは、という見方もあり、このあたりは学界でも統一がとれていない。

かつての地球には、平滑両生類に属さない両生類もたくさんいた。エリオプスは、まさにそうした「平滑両生類ではない両生類」であり、「分椎類(ぶんついるい)」と呼ばれるグループに分類される。

古生代の最後を謳歌するエリオプス

もっとも、エリオプスの所属が「両生類」であろうと、「分椎類」であろうと、その強さには関係ない。エリオプスほどの巨体と、がっしりとした骨格をもつ両生類(あるいは、分椎類)は、当時の地球には他に数えるほどしかいなかった。

エリオプスの口には小さいけれども丈夫な歯がびっしりと並び、しかもその先端が内側に向けて曲がっていた。つまり、食いついたら、獲物を逃さない"仕様"となっていた。

【写真】エリオプスの頭部エリオプスの頭部。鋭い歯が並ぶ Photo by yasuhiro yasutomo / Office GeoPalaeont

2013年、パリ自然史博物館(フランス)のソニア・ケムネールたちが、エリオプスの骨の内部構造を調べた研究を発表している。

ケムネールたちの分析によると、エリオプスの骨は、現生のクジラの仲間や、アザラシの仲間のような構造であるという。つまり、がっしりとした四肢をもつものの、エリオプスは水棲、もしくは、半水棲だったようだ。なお、化石の産出する地層の分析からは、エリオプスが大小の河川や湖沼などを生活の場としていたことが示唆されている。

エリオプスは水際世界に君臨し、古生代最後の時代を謳歌していたのかもしれない。

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