ラッコが消える? 日本にわずか3頭、繁殖も輸入もできない…野生の群れ発見も保護までの道のり長く【福岡発】
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福岡市東区にある水族館「マリンワールド海の中道」。約350種類の海洋生物を見ることができる、幅広い世代に人気の水族館だ。
中でも長年愛されているのが、愛嬌たっぷりのラッコ。
来場者:
かわいいです、すごく。癒やされます
水族館になくてはならない存在のラッコ。しかし、そのラッコが今、ピンチを迎えているのはあまり知られていない。
ピーク時は122頭を飼育 激減の理由は
マリンワールド海の中道 岩田知彦副館長:
国内では、2カ所(の水族館)で3頭しか飼育していないような状況です。最初に日本に入ってきた第1世代は、結構繁殖しました。それがピークのころの90年代。非常に数が多かったんですけれども…
ピーク時には全国28の施設で122頭のラッコが飼育されていたが、その後は減少。
国内で最年長だった千葉の鴨川シーワールドのラッコの「明日香ちゃん」が2022年5月10日に死んだことで、ラッコの数は福岡のマリンワールドにいる「リロくん」、三重の鳥羽水族館にいる「メイちゃん」と「キラちゃん」のわずか3頭にまで激減している。
なぜ、いま水族館のラッコが減少しているのか。
マリンワールド海の中道 岩田知彦副館長:
2世代目、3世代目と代を重ねるごとに繁殖力が落ちていって、なかなか繁殖しないようになりました。ラッコは、もともと寿命は20年くらいしかありませんので、世代交代がうまくいかずにここまで減ってしまいましたね
2021年、マリンワールドでは水温管理や照明調整など、職員が自然に近い環境をつくるなど努力した結果、メスの「マナちゃん」が妊娠。
しかし、残念ながら死産となり、繁殖成功には至らなかった。
オスのリロは現在15歳で、人間でいえば50~60歳。2頭のメスが三重の鳥羽水族館にいるが、繁殖は難しいという。その理由は…。
マリンワールド海の中道 岩田知彦副館長:
1頭はリロの妹なんですよ。そして、もう1頭はリロよりも年上。なので繁殖は絶望的です
断熱効果のある毛皮を求め乱獲に
人間とラッコ。その関係には長い歴史がある。
マリンワールド海の中道 岩田知彦副館長:
こちらにラッコの毛皮を展示しています。ラッコは、実は哺乳類の中で最も毛の密度が濃い動物で、非常に優れた断熱効果を持っています。この毛皮は非常に重宝されて、昔、たくさん捕られ過ぎてしまったんです
この断熱効果を持つ毛皮を求め、約100年以上前にラッコの乱獲が始まった。
乱獲を危惧したアメリカでは、1972年に海洋哺乳類保護法が施行。しかし、それ以降も科学的研究や展示目的の輸出は認めていたのだが…。
マリンワールド海の中道 岩田知彦副館長:
これまで、日本のラッコというのはアメリカからの輸入だったんですけども、アメリカ政府が最近ではその許可を出さなくなってきたんです
野生のラッコの数の減少を受けて、1990年代の終わりにラッコは原則、輸出が禁止となったのだ。
北海道で野生のラッコの群れを確認
繁殖も輸入もできない。日本の水族館からラッコは消えてしまうのか…。そんな中、1つの可能性が見い出されたという。
北海道で野生のラッコの群れが確認されたのだ。このラッコを水族館で保護できないか検討されている。
しかし、ラッコの研究が遅れている日本では、野生のラッコと保護すべきラッコの判別ができるようになるには20~30年はかかると推測されている。
マリンワールド海の中道 岩田知彦副館長:
野生のラッコを保護したり、自然に帰せないなど、そういう事例はあると思う。そういったときには受け皿として水族館があるし、正しい知識を持っておけば、皆さんにこの魅力的な生き物を見せる機会も出てくるかなと思います
(テレビ西日本)
(FNNプライムオンライン6月6日掲載。元記事はこちら)
[© Fuji News Network, Inc. All rights reserved.]
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