転売集団の根城に潜入
道端に停められた黒のワンボックスカー。その周りに30代と思しき中国人男性たちがたむろしている。不審に思って声をかけると、ニヤッと笑みを浮かべつつ、片言の日本語で「友達でないと話せない」と一蹴された。
交渉の末、グループの1人が取材に応じてくれた。
聞けば彼らは近くの団地で暮らし、転売を生業にしているという。手招きされた車の後部座席には、Apple社のiPhoneやiPadが山のように積まれている。7月1日の大幅な値上げを前に買い込んだものか、と興味を示すと、一転、「買う気あるか」と猛烈な売り込みが始まった。
ここは、東京の下町風情が残った江東区のとある町。中心部の駅から徒歩7分、活気あふれる商店街を横目に歩を進めると、総戸数806戸の団地が目に飛び込んでくる。
1960年代に開発されたこの団地で今、中国人居住者が急増しているという。冒頭の「転売グループ」が拠点としているのもここだ。
人出の多い夕暮れ時にあらためて訪れると、中国人コミュニティの日常風景が広がっていた。買い物終わり、立ち話に興じる若い主婦たち。木陰のベンチで一休みするご婦人。広場で元気にサッカーを楽しむ子供たち。聞こえるのは中国語ばかりだ。
サラリーマン然とした中国人男性に声をかけてみた。
「ここには2年前から住んでいますが、品川でIT関係の会社に勤めているので、アクセスも良く気に入っています。礼金や更新料、保証人が必要ないので、中国人だからと入居審査でハネられることもない。
何より同胞が多いので、心強いんです。うちの妻や子供も、さっそくママ友や友達ができて、喜んでいますよ」