犯罪は社会を映す鏡
「この特定の宗教団体と安倍さんとの関係がネット界隈で、あることないことが言われている」「社会的風潮でこの宗教団体と安倍さんとの関係が歪(ゆが)んで歪んで犯人に伝わったとしたら、本当に納得できない」。一部には、容疑者が「反安倍団体」と関わっており、“洗脳”されたのではないかという報道もあるが、その真偽は不明だ。
犯罪は社会を映す鏡でもある。家庭連合に対してだけでなく、安倍氏についても「アベ死ね」など、憎悪を煽る書き込みがネットに流れている。「銃や弾の作製方法はネットで入手した」との供述からすると、容疑者はネット情報に日常的に接していたとみていい。教団への恨みがネット情報で煽られ、さらにそれが安倍氏に向かったというのが実状に近いのではないか。こうしてみると、距離のある、この二つがつながった謎を解くカギはネット情報にしろ第三者に煽られたにしろ、“歪んだ情報”にあるのは間違いない。メディアはもっとここにメスを入れるべきだ。
その代わりにワイドショーが視聴率稼ぎのために取り上げるのが母親の献金問題。中でもその金額に関心が集まるが、適切な献金の在り方は、個人の内面と経済状況などから総合的に判断されるべきもので、社会通念だけでは語れない。信仰は個人の心の問題だから、信仰を持たない人間が理解するのは難しいのである。そこで問われるのが教団の信仰指導の在り方だ。
「憎悪」の原因検証を
家庭連合のホームページには「家族とは、『愛を育て、幸福と平和を学ぶ場所』」とある。安倍氏銃撃事件の背景に、容疑者の教団への恨みがあったとすれば、愛を育て、幸福と平和を学ぶ教団の足元で、なぜ異常なまでの憎しみが生まれてしまったのか。それを自ら検証して社会に対する説明責任を果たすとともに、教団の説く家族の在り方や世界平和への貢献にどう新たに取り組んでいくのかが、宗教指導者としての教団幹部に求められている。
(森田清策)