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「私は映画『牛久』に騙された」外国人収容所での隠し撮り、出演者が怒るワケ

出演同意書にサインした後に見せられた「隠し撮り」

サインイメージ ルイスさんが仮放免となって収容所を出たのは2020年11月のこと。その1か月後の2020年12月20日、映画の出演同意書にサインを求められた。その内容は「お金(出演料)はもらいません」「私の気持ちで(映画に)出ています」などというものだった」という。 「“入管の報復”が怖くて躊躇しましたが、『自分の伝えたいことが世の中に伝わるのなら仕方ない』と考えて了承しました。それ以外には、何か文面にサインした憶えはありません。そして後日、面会中に隠し撮りされた映像を見せられました」 “入管の報復”とは、「入管ににらまれたら、何をされるかわからない」という意味だ。難民申請者たちを国外強制退去にするか施設に収容するか、さらには収容施設での扱いや在留特別許可・仮放免許可の更新期間に至るまで、すべて入管の「自由裁量」に委ねられている。彼らは非常に不安定で弱い立場にあるのだ。  昨年の5月、アッシュ監督から「有楽町にある日本外国特派員協会での記者会見に出ないか」という話があった。ルイスさんの親しい友人たちは「あれは単なる映画のプロモーションだから、行くことはない」と忠告した。友人たちはすでに監督を疑っていて、「騙されていないか?」とたびたび心配をしていたのだ。 「私は会見に出席して、自分の過去の話をしました。しかしその場に集まった記者たちは、収容施設内部のこと“だけ”が知りたいようで、何か場違いな感じがしていました」  ある日、監督にこんなことを言われたことがあるそうだ。 「日本がアフリカ人をいじめるのはわかるのだが、(黒人ではない)デニズがいじめられるのはわからない」  ルイスさんは、監督の「黒人差別」とも思える発言にひどくショックを受け傷ついた。「この人には、『差別をなくしたい』と思う気持ちはないのではないか。本当に人権のために戦っているのだろうか?」と疑問を感じたという。

ルイスさんが本当に伝えたかったこと

「悲しい人生を生きてきたのに、監督のせいでさらに追い打ちをかけられ、怒りが収まらない」と語るルイスさん

「悲しい人生を生きてきたのに、監督のせいでさらに追い打ちをかけられ、怒りが収まらない」と語るルイスさん

 難民である事情や、日本の警察により自分の家族を引き離されたこと。そして牛久入管に収容されて、自分と同じように入管により家族がバラバラにされていること。こうした辛くて理不尽な事実を、ルイスさんは世の中に伝えたかったという。  生まれたのはカメルーンだが、幼いころに中央アフリカに移住していた。中央アフリカにいたころは幸せだった。ところが戦争が始まって家族の何人かが殺され、生き残った兄弟は散り散りとなり、いま誰がどこで何をしているのかは不明だ。 「私が日本に逃れてきたのは、日本はビザが出るのが早かったからです。日本人女性と結婚して娘が1人できました。さらに2人目の子供ができるところだった。家族がいる4年間はとても幸福でした」  ところがある日、知人に通訳の仕事を頼まれた。ホテルの一室で通訳をしている途中で、「これは犯罪の絡んでいる内容だ」と気づいた。そこで犯罪者側と口論になり、途中で退室した。騙されていることに気づいた交渉相手が警察に通報、ルイスさんまで警察に捕まって取り調べを受けることになってしまった。 「その時は1日で済んだのですが、後からまた連れていかれて23日間拘留されました。その間に、妻が書き置きを残して私の財産を奪い、娘とともに出て行ってしまいました。  その後の弁護士とのやりとりで、警察が妻に私の悪口を言ったり『これは偽装結婚だ』『あなたは騙されている』と嘘をついたりして、それをすっかり妻が信じてしまったということがわかりました。  私は事実無根であることを訴えたのですが、妻は2人目の子供をおろしてしまいました。警察は妻に、堕胎の説得までしていたのです。警察が私の子供を殺した」(ルイスさん)  こうした理不尽な仕打ちに、やり場のない怒りや悲しみが絶え間なくルイスさんに襲いかかった。この件は不起訴で終わったのだが、今度は詐欺グループ側の報復に遭い、別の罪を擦りつけられて有罪となり、在留資格を失った。
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多くの外国人が、入管や警察に理不尽な仕打ちを受けている
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ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~

マスコミが報道しない、非人道的な
入管の実態をマンガでリポート!!

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