憲法改正の最大の焦点は間違いなく憲法9条です。このことを理解するために、「主権」という概念について説明しましょう。
主権には大きく二つの意味があります [1]。
一つは国内における主権で、管轄権ともいいます。主に国内のすべての地域に法律を行き渡らせることを意味します。
もう一つは外国に対する主権で、独立権とも言います。主に海外からの戦争を防いで国の独立を守ることを意味します。
[1] 法学的には文中の意味に加えて「国政の最高決定権」を表すこともあります。憲法前文の「ここに主権が国民に存することを宣言し」のように使わる場合です。
これら二つを合わせて主権なのですが、それぞれ担当する組織が異なります。国内の主権の維持は主に警察が担当します。逆に警察が活動できるのは国内だけで、海外では日本の主権が及びませんから犯罪者がいても逮捕できません。
これに対して国の独立を守るのは軍隊です。もし外国の軍隊がやってくれば警察では対応できません。警察には「日本を外国の軍隊から守る」という任務がありませんし、実際に立ち向かうだけの能力(装備)がありません。そして何より国際法に違反してしまいます。
つまり国際社会では、国内の治安を維持するのは警察、国の独立を守るのは軍隊と、役割をはっきりと分けているのです。どちらも国家の主権を維持するために、必要不可欠な存在なのです。
ところが日本では、憲法9条で「戦力は保持しない」としています。軍隊を持たないのですから独立を守れません。そこで日本は苦肉の策として、自衛隊を創設しました。自衛隊には戦車や戦闘機、ミサイルまであるのに軍隊ではありません。何と言っているかというと、「自衛のための必要最小限の実力」(実力組織)と言っています。言葉遊びのような感じもありますが、憲法を変えられなかったのでやむを得ない措置でした。
そして9条ゆえに、日本では「軍事力=悪」というイメージができてしまっています。自衛隊は本格的な戦争が起きるまでは登場しないで、できるだけ警察で対応しようというのです。警察なら安全だが軍隊は危険だという訳です。上で説明したように、この考え方は根本的に誤っています。そしてその理由で、日本では独立を守るための軍事戦略が真剣に検討されてきませんでした。
最善の方法は、現実に合わせて憲法9条を改正することです。「軍隊=悪」という考え方を「軍隊=独立を守る存在」に変えるのです。
左翼勢力は「9条を変えれば戦争が始まる」「子供たちを戦場に送るな」などと言います。
しかし本当は「9条を変えないと戦争が起きる」「子供たちを戦場に送らないために9条を変えよう」なのです。