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2020年9月 4日 (金)

識者二人が述べる、安倍政権のレガシーと積み残した課題

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 昨夜の朝日新聞デジタルで、71%の人が安倍政権を評価しているという世論調査の結果が報道されました。第1次安倍政権の時は37%だったそうですから、かなり良い評価だったようです。しかも朝日新聞の調査で。

 ところで、第2次以降の安倍政権のレガシーを語る識者は多いと思います。中には事実を全く考慮せずに感情論だけで、レガシーゼロとかマイナスと評する、政治学者の御厨貴氏や、元朝日新聞記者の岩垂弘氏のような輩もいますが、一般論としては客観的な評価が多いと思います。

 そんな中で、二人のジャーナリストのレガシー論を取り上げます。一人目は以前「え!あの人が・・」で取り上げた田原総一朗氏。彼が、これも朝日系列の週刊朝日に掲載したコラムを始めに紹介します。タイトルは『田原総一朗「安倍首相の一番のレガシーは何なのか」』(AERAdot. 9/02)で以下に引用します。

 辞任を表明したが、史上最長の政権を担った安倍晋三首相。その功罪について、ジャーナリストの田原総一朗氏が考察した。安倍首相のレガシーは何なのか。

*  *  *

 実は8月27日に菅義偉官房長官と二階俊博幹事長に会って話した。2人とも「安倍総理は続投だ」と言い、続投ならばということで、安倍首相がやるべきこととして私が考えていることを伝えた。

 そして、翌日の辞任会見である。非常に驚いたが、私は辞任会見はいいことだと思った。第1次安倍内閣では「投げ出し首相」だった。今回は1時間の記者会見をし、体調が悪いことを伝えて辞任を表明したからである。

 ただし、難しい問題はいっぱいある。各紙の世論調査で、安倍内閣の新型コロナ対策はいずれも60~70%の国民が失敗だと見ている。うまくいっていない。一体どうすべきなのかという大問題が残されたままの辞任である。

 安倍政権は史上最長の政権になったが、一体何をやったのか。たとえば、池田勇人内閣は高度経済成長、佐藤栄作内閣は沖縄返還、中曽根康弘内閣は国鉄・日本電信電話公社・日本専売公社3社の民営化、小泉純一郎内閣は道路公団・日本郵政公社の民営化。安倍首相のレガシーは何なのか。

 世論には相当反発されたが、私は一番のレガシーは安保法制の改正だと思う。集団的自衛権の行使容認だ。

 米ソ冷戦が終わった時に、岡崎久彦氏、北岡伸一氏ら、外交専門家や保守系の学者たちが日米安保条約について強い危機感を打ち出した。東西冷戦下で、日本は西側の極東部門である。だから冷戦時代、米国は日本を守る責任があった。それが、冷戦が終わってソ連が敵ではなくなり、米国は西側の極東部門を守る必要がなくなった。

 米国はこのままでは日米同盟を持続できないと強く言ってきた。日米安保条約を今までの片務性から双務性にしなくてはならない。安倍内閣に安保法制改正、つまり集団的自衛権の行使を認めさせるという動きになったのである。反発は多いが、これが安倍首相のレガシーだと思う。

 さらに安倍首相に期待したかったのは、日米地位協定の改定である。日米地位協定は占領政策の延長で、イタリアもフィリピンもドイツも対米地位協定を改定しているが、日本は改定できていない。このしわ寄せが沖縄問題である。

 国土面積の0・6%しかない沖縄に米軍基地の70%がある。むちゃくちゃである。

 去年の春、安倍首相に「あなたの最大のレガシーになるのは日米地位協定の改定だ。やるべきだ」と言った。すると安倍首相は「やります」と言った。

 ところが、コロナ禍が起きた。ついに道半ばで実現できないまま終わり、極めて残念である。

 もう一つ、安倍内閣の問題は、自民党の国会議員が皆、安倍首相のイエスマンになっていたことである。森友・加計疑惑が起きても「安倍首相は辞めるべきだ」の声が出なかった。だからというべきか、その後スキャンダルが連発した。政治に緊張感がないことが一番の問題であり、これは政権の長期化による弊害である。

 いろんな問題がありながら、国政選挙で自民党は6連勝した。野党が弱すぎることもあるが、これは国民の多くが安倍内閣を認めていたということで、これほど連勝する政権は先進国で他にない。皮肉を込めて言えば、もっとも安定していた政権だと言えるのである。

 あの田原氏が、しかも朝日系列の週刊誌に述べた内容にしては、批判一点張りではなく、レガシーとして「安保法制の改正」を上げているところなどは、客観性はあると言えるでしょう。田原氏は持論として、日本の安全保障の実態やその取り組みに、危機感を持っていると思います。以前取り上げたコラムでもそうでした。

 一方二人目として、国際政治学者の三浦瑠麗氏のコラムも取り上げて見ます。必ずしも「ヨイショ」ではなく、氏の特徴である客観的な視点で述べています。タイトルは『歴代最長ゆえに築いた安倍政権のレガシーと次代に残す「副作用」』(iRONNA 9/02)で以下に引用して掲載します。

 歴代最長政権の幕が下りました。首相個人の健康上の理由による辞任であったこともあるかもしれませんが、その最後は、積み上げられた時間の重みに比して少々あっさりとした、実務的なものでした。

 安倍首相自身が、第1次政権を去る際の政権「投げ出し」批判が強かったことを意識してのことでしょう。目下の最重要課題である新型コロナウイルス対策の進むべき方向性を明確にした上で、淡々と辞任に至る理由が語られたのでした。

 一つの時代に一つの区切りがついたとき、歴史的な総括やレガシーについて語られるのは、人間という生き物が自らの生きる時代や空間を把握したいという欲望を抱えているからでしょう。政治を評する者としても、歴史に参加しているという実感が得られる営みです。

 私自身、現実の政治について評論するようになったのは2014年からであり、当時は既に第2次安倍政権に入っていました。政権の後半には、安全保障政策や中期的な経済政策を議論する会議に参加する縁などもあり、首相やその後継と目される人々とも接する機会もありました。本稿は、同時代性を持って安倍政権のレガシーを定義する私なりの試みです。

 安倍政権の政策的なレガシーについては、5点挙げたいと思います。内政上のテーマが2点、外交上のテーマが2点、国民意識の統合に関してが1点です。

 内政上の最大の成果は、2012年時点では八方塞がりに感じられた日本経済に新たな息吹を吹き込んだことです。政権発足直後の2013年、日本銀行総裁に黒田東彦(はるひこ)氏を任命し、異次元の金融緩和策を推し進めました。

 目標とされた完全なデフレ脱却までは至らなかったものの、景気の「気」の部分にも働きかけたことによって雇用は改善し、企業収益が回復し、株価も大幅に上昇しました。この景気の底上げがあったからこそ、5%から8%、そして10%への2段階の消費増税が可能となりました。

 プライマリーバランス(基礎的財政収支)の均衡までは至らず、コロナ禍に伴う未曽有の支出によって日本の財政は再び危機を迎えていますが、消費増税のタブーを乗り越えた意義は大きいものでした。

 第二は、経済をキーワードにして時代にあった社会政策を推し進めたことです。「女性活躍」を合言葉にして、男女共同参画を「女性の問題」から「経済の問題」へと再定義したことで経済界を巻き込むことができました。

 少子高齢化社会のさらなる深刻化を踏まえた、幼児教育の無償化、年金の開始年齢の引き上げ、外国人労働者の受入れ、インバウンドの強化など、これまでも議論されていたけれど実現に至らなかった課題が前に進みました。

 それは、保守の本格政権であったからこそ、「伝統的家族観」の信奉者たちの攻撃をやり過ごすことができたからです。保守政権ならではの漸進主義により、成果は道半ばであるにしても社会の主流の考え方へと昇華させた功績は大きいでしょう。

 外交・安全保障政策における最大の成果は、安保法制の制定と日米同盟の強化でしょう。集団的自衛権について、保有はしていても行使できないという、いかにも戦後日本的な不思議な憲法解釈をようやく乗り越え、日米同盟の信頼性強化に大きく貢献しました。

 米大統領の広島を、日本の首相として真珠湾を相互に訪問したことによって日米の歴史和解を完成させました。本来であれば、今秋に予定されている敵基地攻撃能力の部分的容認と専守防衛政策の転換までを見届けていただきたかったものの、それは次期政権の課題として残されました。

 第二は、粘り強い交渉によってTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を完遂させたことです。

 日本はエネルギーの90%、食料の60%、安全保障上の打撃力の100%を海外に依存しています。日本という国は、自由な国際経済体制の下でしか繁栄を維持できないのです。そこに、中国の急速な台頭と、米国の内向き化が重なり、世界は米中新冷戦の様相を呈しています。

 そんな中、米国が抜けた穴を埋め、豪州などとも協力しながら「21世紀の経済のルール」を形にしたことは歴史的でした。並行して、日EUや日豪のEPA(経済連携協定)についても締結までもっていったことは高く評価されるべきでしょう。

 国民意識というのは、いまだに日本の政治を分断している歴史認識について、国民の大層が合意できるコンセンサスを打ち立てたことです。

 すなわち、先の大戦は国策を誤った戦争であり、日本には加害責任もある。他方で、われわれの子孫にまで謝罪の重荷を負わせるべきでないというものです。戦後70年談話や、慰安婦問題に関する日韓合意を貫く考え方です。

 当然、左右両極からは不満が寄せられたけれど、国民の大層はそれを受け入れました。保守優位の政治状況をうまく利用して、リベラルに歩み寄った成果であったと思います。

 反対に、負のレガシーは3点ありました。第一は、後継者を育てなかったことです。

 かつての日本政治にはそれなりのリーダー育成の仕組みがあり、首相は後進を育てる責務を感じていたように見えます。その後、諸改革の成果として日本政治は官邸主導型へと変化しています。

 安倍政権は重要政策の全てを官邸で取り仕切り、実力派の閣僚は長老か能吏タイプによって担われており、次代を担うような人材の発掘と育成の機能を果たすことができていません。実際問題として、内政のかじ取りにおいても外交上の存在感においても、今後の日本は不安定な時代が続く可能性が高いでしょう。

 第二は、構造改革への踏み込み不足です。政権の発足当初こそ、アベノミクスの三つ目の矢として構造改革や規制改革への言及がなされていたものの、本音の部分では「保守が割れる論点」に対する消極性が目立っていました。

 人口減少期に入った日本経済を成長させ、社会を活性化させるには生産性の向上が不可欠であり、そのためには既得権にメスを入れて競争を促すべきであるのに、大玉の改革案件はことごとく先送りされてしまいます。諸外国対比の競争力は低下の一途をたどり続けてしまいました。

 第三は、憲法改正という本格保守政権でなければ手を付けにくい政策を推し進められなかったことでしょう。辞任会見においては、首相自身が憲法改正と並んで北朝鮮による日本人拉致問題とロシアとの平和条約を志半ばの課題として挙げました。

 首相の思い入れはあるにせよ、対北朝鮮や対ロシア外交については相手があることです。国際情勢の追い風がない限りは誰が政権の地位にあっても解決は困難であったでしょう。

 ただ、憲法問題はコントロールできたし、もっと踏み込むべきでした。8年近い時間をもってもなお、憲法を起点とする神学論争と底の浅い与野党対立を次代にまで引き継いでしまったわけです。

 お気づきのことと思いますが、これら負のレガシーはどれも長期安定政権を実現することの「副作用」として生じています。

 長期政権を実現するために次代を担うようなライバルの出現を許容できなかったし、保守が割れる論点には踏み込まなかった。そして、おそらく首相が最も成し遂げたかったはずの憲法改正も実現しなかったわけです。

 直近の各社世論調査では内閣の支持率が大幅に上昇し、日本経済新聞の調査によれば、国民の7割以上が安倍政権の成果を評価していると報道されています。国民は実際に長期安定政権を望んでいたのだということでしょう。

 当たり前ではあるけれど、政権のレガシーの多くは長期政権であったから可能になったものです。ただ、そこにはコストもあったということです。残念なのは、それらのコストの多くは、われわれが今後とも払っていかなければいけないものであることです。

 三浦氏の言うように、数多くのレガシーを残した安倍政権。あの悪夢のような民主党政権時代の、デフレまみれで円高に苦しみ、企業の海外逃避を防げなかった最悪の経済環境を、何とか救い上げた功績は大きい。またあの鳩山由紀夫元総理が破綻させた対米関係の修復も、大きな成果でしょう。

 そうした中で、残念ながら積み残した案件で大きなものは、憲法改正でした。いままで再三述べていますが、その憲法改正の重要性。多くの外交案件、特に領土や拉致被害に関する案件は、対話によるべきだと言う「きれいごと」が先行しますが、それでは絶対に解決しない、つまり強い軍事力を背景にした外交交渉力がなければなしえないと思います。

 米中ロ3国の外交力はすべて軍事力が背景にあり、あの北朝鮮のような小国でさえ、核をもって超大国アメリカと対峙できているのです。その軍事力を否定するような憲法を持つ国が、現状変更を伴う領土返還や、外国にとらわれている邦人の奪還などできるわけがありません。

 冷静に考えればわかりそうなこの理屈を、完全に封印してきた日本、そして歴代政権。自民党の立党宣言の中にもある憲法改正を、何故やり遂げられなかったのか。特にそれを政権の目玉にしてきた安倍政権までもが。

 確かに憲法改正、特に9条の改正を目指せば、日本に潜在する護憲活動家と護憲政党、護憲文化人たちが反日メディアを駆使して、「戦争できる国になる」「戦前の軍と徴兵制が復活する」と言うキャッチコピーで大合唱をするでしょう。そのくせ覇権国家中国、朝鮮にはだんまりです。

 中朝の共産党のスパイや韓国文政権のスパイが、本国による大枚の活動費を投入しながら、日本の活動家やマスコミ関係者を手足と使って、こうした反対運動を盛り上げ、一般国民を洗脳し、憲法改正の大きなハードルを作り上げているのが現状です。かつての「戦争法反対」や、最近の「安倍政治を許さない」などの反政権デモは彼らの工作そのものです。

 何故そんなことをするのか、理由はいとも簡単、日本が強くなってはいけないのです。弱いままでいれば中国、朝鮮そして韓国が日本をユスリタカリで脅し続けることができ、またその先には、東アジアに広大な共産主義や疑似共産主義圏を作り上げようと狙えるからだと思います。今韓国が疑似共産主義に突っ走っています。そうして日本を彼らの属国として、アメリカと対峙できるようにする、まさに「中国の夢」の完成版です。

 勿論そんなことはさせられません、いずれにしろ、日本がやらなければならない一丁目一番地は憲法の改正、9条の改正です。安倍政権を引き継ぐ政権にそれができるかどうか、それが日本のこれ以上の埋没を止めるための大きな試金石となるでしょう。

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