名取裕子主演の映画『吉原炎上』が35年経った今でも「傑作」と呼ばれるワケ

仁支川峰子、友近、五社巴が語り尽くす
週刊現代 プロフィール

名取裕子が見せた覚悟

仁支川 赤は監督が好きな色で、女の情念や悲しみ、苦しみが込められている、と教わりました。

五社 あのシーンは真夏の設定ですが、撮影自体は、真冬なんですよね。

仁支川 そうそう。撮影は真冬の京都だったから、すごい寒かった。

友近 え~、すごく夏に見えます。

五社 吐く息が白くなるのを防ぐために、先に氷を口に含んで、口の中の温度を下げてから、撮影に臨んだ。女優さんたちは、ものすごく大変だったみたいですよ。そうそう、本物の花魁に近づくために、女優たちは眉毛も全部剃らされたんですよね。名取さんはそれも嫌だったみたいですね。

仁支川峰子さん
 

友近 そうだったんですか。

五社 眉毛を剃らなきゃいけないし、脱がなきゃいけない。清純派女優でデビューしましたからね。名取さんがあまりに悩んでいたので、当時の事務所の社長に「もう、好きにしなさい。最後はあなたが決めなさい」と言われ、彼女は一人で新幹線に飛び乗って京都にいる父に相談に行った。そこで、「主演を張るチャンスはそうない、私を信じて任せなさい」と説得されたそうです。

仁支川 でも、裕子ちゃんは撮影時にはちゃんと覚悟が決まっていましたよ。私と似て、サバサバした性格なんです。

友近 私も舞台で、名取さんと共演させてもらったことがありますが、本当に気さくな方なんですよね。

まだまだ続く映画『吉原炎上』の裏話。仁支川さんのあの演技の舞台裏ではなにがあったのか......。後編記事『「噛んで~!」友近も仰天『吉原炎上』の“名シーン”はこうして生まれた』で引き続き紹介する。

「週刊現代」2022年7月16日号より

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