週刊現代
「一緒に死のうか」
五社 『吉原炎上』の舞台は、明治の終わり。吉原遊郭「中梅楼」に、女郎として売られた久乃を軸に物語が展開します。
仁支川 全編を通した主役が久乃で、春夏秋冬、4つの章にそれぞれのヒロインがいる。言ってみれば、久乃は狂言回し的な立ち位置ね。春は九重。夏は吉里（藤真利子）。冬は菊川（かたせ）です。その中で、秋のヒロインの小花だけ、なかなか配役が決まらなかったみたいなの。ギリギリまで悩んだんでしょう、クランクインの8日前に私のところにオファーが来ました。
友近 仕事のスケジュールは大丈夫だったんですか。
仁支川 大丈夫。だって、私の役は出ずっぱりというわけじゃなかったから。脚本読んだ瞬間に、もう断る理由がなかったもんね。即承諾って感じです。
五社 久乃は、それぞれの季節のヒロインたちとの触れ合いを通して、逞しく成長していきます。
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仁支川 吉原で生きる女郎たちは、トップを取るために本気で生きてるんだよね。そして、本気だからこそ、狂気に陥っていく。あの女たちの情念というか、生き様が、久乃の目を通して描かれる。
友近 九重の後に一番花魁を継いだ吉里が半狂乱になる最期が悲しいですよね。懇意にしていた越後屋に、冗談で「一緒に死のうか」と言われた吉里は本気で心中しようと剃刀を片手に越後屋を追いかけ回し、彼と誤って金魚売りの首を斬ってしまう。彼女が倒れ込んだ路上には、割れた金魚鉢から飛び出た金魚が、ピチピチと跳ねるんですよ。
五社 その金魚に「こんなとこ、いるんじゃないよ。お逃げ。逃げんだよ」と語りかけ、自分の首を斬るんですよね。
友近 金魚も赤いし、吉里がまとっている長襦袢も赤い。剃刀も金魚売りの血で染まっている。「赤」を基調とした画が、また綺麗なんですよね。
