N.O.M 任天堂のあらたなる挑戦『ニンテンドーDS』総力特集!
No.76
開発者インンタビュー NINTENDO DS
任天堂株式会社 開発技術本部
岡田 智 梅津 隆二 藤本 宏二 喜友名 毅 丸山 和宏
岡田 智 梅津 隆二 藤本 宏二 喜友名 毅 丸山 和宏
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これまでの携帯型ゲーム機にはなかった様々な機能を盛り込んだニューハード『ニンテンドーDS』。待ちに待った発売を12月2日に控え、完成までこぎつけた開発スタッフのみなさんにインタビューしてきました。仕様に関するコメントや開発秘話、ポロッと漏らしてしまった一言まで、最後まで目が離せない展開です!

まったく新しいハードを作るために総力を挙げて
N.O.M:岡田さんはニンテンドーDS開発を統括されていますが、これまで携わってきた開発商品などを教えていただけますか。
岡田: 入社して最初に開発したのが光線銃SPです。当時は人が少なかったので、電気部分の設計からパッケージのデザインまで全部自分で開発しました。その後、ゲーム&ウオッチの開発を経て、すべてのゲームボーイシリーズの開発を担当しました。ソフトでは『ファミコンウォーズ』を開発したり、『メトロイド』『ファミコン探偵倶楽部』などをプロデュースしました。今回もプロジェクトマネージャーとして、仕様の取りまとめや決定、スケジュール管理などのマネジメントを総合的に行っています。
インタビュー風景
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N.O.M:みなさんはどのようなお仕事をなさっていたのでしょう。
梅津: 私はCPUの開発を中心としたハードウェアのシステム設計を担当しています。岡田がイメージしたゲーム機を具体化する作業が中心となります。例えば、処理速度がどの程度必要だとか、表示解像度などハードの基本的なスペックを検討する仕事です。

藤本: 私は回路、基板の設計担当です。今回のDSでは回路ブロックごとに各担当がいるのですが、それら回路をひとつの基板の上で実現し、まとめていくような作業を主に行いました。外装部品を決める機構担当や工場側の生産の担当と調整しながら、基板上の最適な部品配置、回路配線を考えることが重要な仕事になります。

インタビュー風景喜友名: 表示デバイスの設計と評価に関わっていました。液晶とバックライトなどにまつわる仕事です。液晶画面の見え方にもじつはいろいろありまして、外からの光の入り方によって見えやすさが違ったりしますから、その調整などに力を使いました。

丸山: プロダクトデザイナーとして、見た目や形に関係する部分を手がけています。より操作しやすく、見た目にもスタイリッシュな商品になるようにと考えました。操作性・デザイン性の検証、そして生産ラインに乗るような形にするための仕事です。
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N.O.M:新ハードということで、いろいろとお話があると思うのですが、まずいつ頃から開発されていたのですか?
岡田: じつはゲームボーイアドバンスを作っていた頃から、構想はあったんですね。商品開発は、やはり先を見据えていかないといけません。ただ、現在の形であるタッチスクリーンや2画面というものは、初期の段階では考えていませんでした。

梅津: 岡田と私で、ああでもないこうでもない、というようなことは結構まえからやっていたんですよ。

岡田: ゲームボーイアドバンス(SPを含む)は「究極の2次元ゲームマシン」として作りました。今回のニンテンドーDSは、「携帯型3Dゲーム機」というコンセプトがありまして、開発の初期段階ではダブルスクリーンは、まったく頭になかったんです。なにしろ既存のゲームボーイアドバンスSPとの違いを打ち出すのがまず大変で。始めに見た目でインパクトがなければ、消費者へ訴える力が弱いですよね。その後、トップからの提案で2画面やタッチパネルという要素が盛り込まれていきました。

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タッチパネル、2画面、マイク入力、ステレオ。新機能あれこれ
N.O.M:やはり今回もっとも注目を集めるのは2画面とタッチパネルですよね。
岡田: タッチパネルというものをゲーム機で採用するのは初めてなので、信頼性の高いものを作らなければいけません。パネルはメーカーさんに強度の高いものをお願いして作っていただきました。最初はゲームでの使用に耐えるか心配しましたが、メーカーさんと協力して改良を加え、かなり強度を上げることに成功しました。ゲームで遊んでいると、どうしても力が入ってしまうので、ふつうのタッチパネルだとどうしても弱かったんですよね。
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N.O.M:そして目を引くのはデザイン性の高さだと思いますが。
インタビュー風景丸山: 初めは2画面というものがひとつの機体に収まらないのでは、と思っていました。2画面という設定が採用されてからチームに入ったのですが、発案したものがほとんど削られることなく盛り込まれたので、嬉しかったです。商品的にはけっこうボリュームがあるんですけど、それを感じさせないようなデザインに仕上げることが出来たと思います。

岡田: ゲームボーイアドバンスSPはかなりコンパクトですが、そのつぎに2画面のゲーム機が出てくると、やはり大きく見えてしまうわけですよね。だからできる限りスタイリッシュにしないといけませんでした。

丸山: これは商品としてかなり魅力があるものだと思いますから、その魅力をデザインが邪魔しないようにということを念頭においてデザインしました。カラーリングに関しては、外でも持ち歩けるようにファッション性を考えつつ、重さ・ボリュームを感じさせないようにという意味で輝きを抑えたシルバーと黒のツートンカラーにしました。
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N.O.M:ワイヤレス通信機能について教えてください。
岡田: 数年前からワイヤレスには着手し研究していました。その第一弾として『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』でワイヤレスアダプタを発売しましたが、それを見てやはりこれはいけそうだと感じまして、さらに発展させてやろうと思いました。ケーブルがあると、持ち歩かなくてはならないし、邪魔に思う人もいるだろうと。さらにアダプタをつけるよりは、もう本体に入っているほうが使いやすいですよね。将来的には、インターネットと接続することもできるように考えて作ってありますし、今後の展開が楽しみですね。
N.O.M:マイク入力についてはどうでしょうか。
インタビュー風景岡田: マイク機能を入れるのって、コスト的にはけっこう安いんですよ(笑)。ついてたらおもしろいよねということで入れたんですが、携帯ゲーム機では新しい試みですよね。マイクの信号はアナログなんですが、それをデジタル信号に変えて認識できるようにしてあります。
N.O.M::新発想の機能もたくさんあり、さらに試行錯誤で仕様が変更されているんですね。
岡田: そうですね。初期構想でのサウンドはモノラルだったんですが、ソフト開発チームから「ステレオにしてほしい」と要望がありまして、サラウンド効果も楽しめる高性能なステレオにしました。ゲームボーイアドバンスで遊ぶユーザーさんの中には、音を消して遊んでいる人も多いらしいんですよ。でもステレオにして音声を美しくすれば、きっとサウンドも楽しんでくれる人が増えるんじゃないかと思います。ゲームボーイアドバンス用ソフトもDSで遊ぶとステレオサウンドが楽しめますよ。

インタビュー風景梅津: 私はスリープ機能をぜひ見てほしいです。スリープモードにすると電源のランプが点滅するので、「スリープ中」というのがわかるようにしてあります。ゲームボーイアドバンスでは電源ランプがそのまま変わらないので、どうなっているのかわからなかったんですが、これには絶対入れてくれと頼んでこの仕様にしてもらいました(笑)。例えばスーパーマリオ64DSでセーブポイントまで電源を切りたくないときでも、DSを畳むだけでポーズ状態のまま長時間そのままにしておけますから、とても便利ですよ。
それとACアダプタですが、ゲームボーイアドバンスSPのものに較べて小さくなっています。コンセント周りがすっきりしますし、コードが細くなって旅行なんかにも携帯しやすくなっています。

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開発陣もこれから出てくる新しい遊びに期待!
N.O.M:ピクトチャットについて、お話を伺いたいのですが。
岡田: せっかく標準でワイヤレス通信機能がついているので、通信対応ソフトがなくても使えるようにというソフト開発部門からの要望で組み込むことになりました。ただ、最初考えていたメモリの容量よりも多くなったので、そのへんの兼ね合いがいろいろありました。ハードを作る側と、ソフト側との思惑のやりとりが(笑)。
N.O.M:付属のタッチペンは、よく滑るような気がするのですが…。
岡田: よく滑るような素材で作ってあります(笑)。ゲームを遊ぶときはどうしても力が入りすぎますから、できるだけタッチパネルに傷がつきにくい材質で作ったんですね。やはり市場に出回っているPDA用とはちょっと違うものになっています。

喜友名: もしタッチペンをなくしても、先の尖ったものなどで代用しないようにしてくださいね(笑)。綿棒とか良いですよ。
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N.O.M:新しいものを作るにあたって、どのような部分で苦心されましたか?
インタビュー風景藤本: とりあえず試作品を作るというところまではいいのですが、やはりそれを評価するにつれて色々と問題点が浮き彫りになります。例えば補強のために外装部品を変更したりすると今度は基板に制限が出てきて部品の配置を変更しなければならなかったり。そのような評価結果による変更のほかに外装デザインを変更したり、スピーカーを2つにするなどの仕様の変更など、あらゆる変更を短い期間でやらねばならなかったので、そこは本当にたいへんでした。

梅津: 
ゲームアプリケーションを動かすための基本ソフトを作っていたのですが、仕様が変わるとそれに伴う変更がかなりハードで、スタッフはたいへんそうでした。量産するにはコストダウンがかなり重要なので、開発の初期の段階から、生産部門と打ち合わせをしょっちゅうやるんですよ。でも、ソフトウェアの人から「これを入れてくれ」というような要望が入って、打ち合わせのたびにコストが上がっていくということになったり(笑)。今回はコストダウンよりも、機能アップをかなり重視しています。
インタビュー風景喜友名: ディスプレイはゲームボーイアドバンスSPのときのフロントライトからバックライトに変わりました。ゲームボーイアドバンスSPにはライトがついて、それがすごく好評でしたよね。明るくなって見やすいというだけで、かなり受け入れられました。だから今回は明るさをアップすることはもちろん、ほかの箇所でもさらに性能を上げなくてはいけなかったんです。当時はまだ技術が発展途上で、イメージした色が出せなかったこともありましたが、今回はゲームボーイアドバンスSPよりもさらに見やすくなっています。
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N.O.M:では、発売を心待ちにしているユーザーの方へのメッセージをお願いします。
丸山: DSがみなさんのあいだでどう評価されるのか、いまから発売が楽しみです。皆さん、よかったらぜひ手に取ってみてくださいね。

喜友名: 
私は常に「多くの人に使っていただけるように」と思いながら開発をしています。それと同時に、「一日ゲームばっかり」という状況を望んではいません。ゲームは"退屈な時間を楽しいひとときに変える道具"であってほしいと思っていますから、どうぞ上手に使ってください。

藤本: 色々な遊びを提供できる、素晴らしいゲーム機に仕上がったと思います。是非、一度体験してみてくださいね。

梅津: このハードの新しい機能を使った、これまでにないアイデアのゲームがたくさん出てくることを、みなさん同様に私も期待しています。今後がとても楽しみです。

岡田: ニンテンドーDSは2画面、タッチスクリーン、ワイヤレス通信、マイク入力など、とにかく新しい機能が満載です。これらの機能を使った面白く新しいゲームソフトに期待してください。
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N.O.M:今日はどうもありがとうございました!




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