クマさんのバイク専科

自転車で骨が弱くなるなんてことありません!

 

ノーベル賞の科学者とタモリさんがメインキャスターのNHKの体を科学する番組、骨に関する特集で取り上げられていた自転車選手の骨の話はちょっと衝撃的でした。でも、もう一度見直せるひとは見直してみてください。これは刺激の伝達が上手く行かないひと(サイクリスト)の特異な例ですよ。確かに自転車は路面からの脚への刺激は少ないですが、自転車乗りがみんな骨が弱くなるような、少し誤解される紹介のされ方でした。

 

歩くのは少し汗をかきかきで時速6km、ランニングはトップ選手で時速17km、バイクは楽〜に走って時速25km、だいたいこんなところでしょう。では、足にかかる衝撃の負荷はどうでしょう。単位時間当たり、脚にかかる刺激の大きいのは確かにランニングです。次がウオーキングでしょう。次がバイクの順です。テレビで放映されていた自転車選手の骨密度が少なくなって異状が発生した例は、そのスポーツの衝撃が少ないからではなく、衝撃を受け入れて骨の細胞を増殖する因子への働きかけが伝達されにくい特異体質のサイクリストの症例として紹介されていました。

 

この人がランニングして強い刺激を受けたとしても、骨の密度を高める因子の刺激を伝えにくいので、不具合が発生していた可能性があるはずです。バイクのライドは、確かに単位時間あたりの脚への刺激は小さいのですが、だからこそ長く安全に心肺機能を刺激する運動を続けられるのです。逆に、ランナーが衝撃により膝関節や筋肉や靱帯のケガや故障をしやすい事は知られています。マラソンランナーがレースのダメージから、トップコンディションに回復するのに時間がかかる事も知られています。紹介されていた自転車選手が、骨を強化する因子を伝達しにくい体質が問題なのであって、自転車乗りの誰もが骨の密度が低下するわけではありません。でも、番組の、あの紹介のされ方では誤解されるよな〜。

 

水に浮いている時間が長いトップスイマーや水球選手の場合は、確かに骨密度の低下や、体感の筋肉の強化がオリンピック選手の強化で問題になったことがあります。トップスイマーでも1Gの環境下で体を支えて、関節にかかる刺激を受けて炎症を起こさずに、ランニングをこなせる選手が30人に1人という事が明らかになった事もあります。ウオーキングやイージージョグ、体幹強化が年間を通じて実施されて改善されて、スイムのパフォーマンスがアップした例もあります。世界のトップとか日本のトップを目指してスポーツの専業化が進み、トレーニング内容が偏ると全体のパフォーマンス低下を招く事もあります。1Gの環境下で体を支えて運動することがとても重要な刺激になっています。

 

骨を強化するという衝撃の積み重ねが、逆に骨を強化しない場合や、破壊してしまうという症例もあります。例えば剣道の選手は、打ち込みの練習を何百、何千と素足で行います、床材は板です。板に足の裏を打ち付ける衝撃が繰り返されます。この衝撃によって脚に何が起こるかというと、衝撃を受けた部分での赤血球の破壊です。食生活のバランスが良くても、剣道の上級者に貧血が発生する事もあります。ランナーのような刺激が加わると丈夫な骨が作られるとすれば、剣道の上級者も骨の密度が高くなるはずですが、上級者の足の骨の空洞化や疲労骨折が運動障害として報告されています。骨と貧血の問題は、中長距離のランナーでも報告されています。

 

ウオーキングを1時間、ランングを1時間、バイクライドを1時間なら、その衝撃による骨を強化するという体のコマンドを発する刺激の度合いは、ランニング、ウオーキング、バイクの順番でしょう。でもその骨を強化する刺激も、ほどほどにというのが、スポーツ医学の臨床例ではすでに明らかになっています。ところで、バイクライドの時間は1時間でしょうか?。ウイークエンドライダーでも2時間から5時間は走っているのではないでしょうか。小さな刺激でも長い時間走れば刺激は大きくなります。骨の強化のコマンドを発する刺激には十分な負荷になります。負荷の小さい自転車乗りだから骨が弱くなるという事はありません。

 

歩いたり走ったりするのが苦手だというロード選手もいます。運動がペダリングに特化して筋肉が発達しているためです。シクロクロスの選手はバイクライドだけでなく、クロスカントリーランニングしてランニングや刺激に対応できるようにトレーニングしています。MTB ライダーもXC系のライダーは心肺機能をダメージの小さいロードでキープして、クロスカントリーやトラックでのランニングも実施して、筋肉や関節や靱帯が刺激に耐えられるようにしています。そういうトレーニングの中で骨も強化されているのかな。ではでは。