磁器
じき
porcelain
完全に熔化(ようか)し、硬く、(施釉(せゆう)前でも)不透過性、白色または人工的に着色され、(かなりの肉厚でない限り)透光性であり、たたくと清音を発するビトレアス・セラミック・ホワイトウェアvitreous ceramic whitewareをいう。食卓用器や美術品など工業的な用途をもたない場合にはチャイナchinaという。
磁器にはいろいろな種類があるが、もっとも重要で多量に生産されているものは硬磁器hard porcelain(SK13~16焼成)と軟磁器soft porcelain(SK8~12焼成)であり、これらはイギリスやヨーロッパでいうファイン・セラミックスfine ceramicsの代表的なものである。磁器の構成成分は、成形に必要なカオリン、熔化をつかさどる長石、骨骸(こつがい)となる石英からなるが、これらのうちの一部を別の成分で置換すると新しい性質の磁器が得られ、このときに使用した成分がたとえばジルコンであるとジルコン磁器という名称を用いる。
[素木洋一]
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磁器
じき
porcelain; china
1200℃以上の高温で焼かれた硬質で吸水性のない焼物。素地は白色で,透明または半透明の釉 (うわぐすり) がかけられる。中国では唐末,五代に始り,朝鮮では李朝初期から,日本では江戸時代初期に,有田で帰化朝鮮陶工李三平によって始められたといわれる。なお,日本では有田,瀬戸,多治見,清水,九谷などがその主産地。西洋では一般に磁器を軟質磁器と硬質磁器に分け,初期のセーブル磁器のように磁土にカオリンを含まない焼成度の低いものを軟質磁器と呼んでいる。硬質磁器 (真正磁器) は 1708年ドイツのベットガーがドレスデンで磁土を発見,磁器の焼成に成功した。次いでウィーン,ベネチア,ドイツのヘフスト,ニンフェンブルク,フランスのサンクルー,シャンティイー,セーブルなどでもその焼成に成功し,その後 18世紀中頃にはヨーロッパ各地で制作されるようになった。
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磁器【じき】
良質の粘土,石英,長石,陶石等を成形し,1300〜1450℃で溶化するまで十分焼き締めたもの。英語ではporcelain。素地は白色,ガラス質で吸水性がなく,透光性があり,機械的強度が強く,打つと金属音を発する。釉(うわぐすり)は長石質のものを用いる。原料中のアルカリ分が多く焼成温度が比較的低い軟磁器,アルミナ分が多く焼成温度が高い硬磁器に分けられる。磁器製造は中国がもっとも早く,紀元前から唐末にかけて発達し,宋代に完成。朝鮮では11―12世紀,日本では17世紀以降(有田焼が最初),ヨーロッパでは1707年J.F.ベットガーによる白磁製造成功をもって嚆矢とする。
→関連項目セラミックス|染付|陶器|陶磁器
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じ‐き【磁器】
〘名〙
① 一般に素地のガラス質が磁化して半透明となり吸水性がほとんどなく、たたくと金属的な音を発する
焼き物をいう。陶土・石英・長石などの素地を素焼きにし、釉
(うわぐすり)をかけ、摂氏一一〇〇~一五〇〇度の高温で焼いたもの。有田焼、九谷焼、瀬戸焼などが特に名高い。〔原中最秘鈔(1364)〕
※都新聞‐明治四〇年(1907)七月三〇日「第三回は廿五年に大学生を伴れて、磁器の試験かたがた登山しましたが」
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じき【磁器】
土や粉末状の鉱物を練って成形し、素焼きした後、釉薬を施してさらに焼いて作るもののうち、比較的高温で焼くもの。特に食器や花器などのうつわ類。ガラス質で吸水性がなく、透明度の高い白色で、たたくと金属的な清音を発する。原料の配合や焼成温度などにより軟質磁器と硬質磁器に分類される。日本では、有田焼・九谷焼、欧米圏ではマイセンなどが代表的。⇒陶器
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磁器
ジキ
porcelain
陶磁器のうち,素地の吸水率の小さい(0~0.5%)もの.普通,磁器には硬質磁器と軟質磁器とがあるが,特種磁器にはアルミナ磁器やチタン磁器など,ケイ酸だけでなく種々の成分からなるものがある.吸水性がごくわずかあるものを半磁器ということもある.食器類,るつぼのような化学用容器,電気絶縁材料などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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磁器
土ではなく、石の粉を原料にして形を作り、釉薬[ゆうやく]をかけて焼いた器です。表面・内部ともにガラス化しています。
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世界大百科事典内の磁器の言及
【有田焼】より
…佐賀県西松浦郡有田町を中心とする地域で,江戸時代の初めから焼きつづけられている磁器。江戸時代を通じて,伊万里港から諸国へ積み出されたので,一般に伊万里焼として知られている。…
【釉】より
…釉薬とも書き,釉(ゆう),釉薬(ゆうやく)ともいう。陶磁器の表面を覆うガラス質の薄い膜のこと。純粋にガラスだけではなく結晶が析出している場合もある。…
【茶碗】より
…陶磁製の碗に対する総称として用いているが,本来は喫茶用の碗である(図)。また平安時代から室町時代にかけては〈茶碗(茶垸)の物〉などと,磁器をあらわす言葉としても使われている。しかし当時,日本では磁器はつくられておらず,この場合の茶碗は中国から請来された磁器を意味していた。…
【陶磁器】より
…可塑性に富んだ粘土を用いて所定の形に成形し,高熱で焼き締めた要用の器物で,土器clayware,陶器pottery,炻器(せつき)stoneware,磁器porcelainの総称。一般に〈やきもの〉とも呼ばれる。…
【土器】より
…陶器は,やはり粘土を材料とし,器壁は多孔質だが器表は釉薬(うわぐすり∥ゆうやく)のガラス質に覆われており,多孔質ではない。また磁器は,石(長石,ケイ(珪)石)の粉や骨灰(こつぱい)と粘土からなる材料を用い,全体がガラス質を帯びて多孔質でなく,不透明な炻器に対して半透明である。日本で,釉薬をかけないやきものの意味で〈土器〉という名称を用い,釉薬をかけた陶器と区別するようになったのは,江戸時代後半からのようである。…
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