「ヘイトクライム」あおったことを反省すべき

 もちろん、これはあくまで筆者の推測に過ぎない。現時点でひとつだけはっきりしているのは、我々が安倍晋三という非常に影響力のある政治リーダーを失ったということだ。

 そしてもう一つ、リベラル文化人がよく言っていた「安倍晋三が消えれば日本は良くなる」というのが真っ赤な嘘だということを、これから我々は思い知るということだ。

 例えば、日本経済の低迷は、企業の99.7%を占める中小企業の生産性が低いなどの産業構造や、明治時代につくられた政治・社会システムが継続している弊害なので、そこに手をつけない限り、日本の衰退はもう止まらない。「安倍ヘイト」という個人攻撃は実はなんの意味もない、ということを我々は安倍氏の死によってようやく理解できるのだ。

 そういう検証こそをマスコミはやるべきだ。朝から晩まで安倍氏が銃撃される瞬間をエンドレスリピートにして、子どもたちにトラウマを与えている場合ではないのだ。

 そして、安倍氏を襲った「ヘイトクライム」の危険性を、それをあおった自分たちの反省も含めてしっかり伝える義務がある。

 最後になりましたが、安倍晋三元首相のお悔やみを心から申し上げます。どうぞゆっくりお休みください。合掌。

(ノンフィクションライター 窪田順生)