偏った報道が「安倍ヘイト」を増幅させ悲劇が起きた
よく言われることだが、日本人は「革命」ということをした経験がない。
明治維新は結局、武士階級の内戦だし、戦後民主主義とやらもアメリカに負けたことで、自動的に移行しただけだ。
「市民」が自分たちで戦って何かの権利を勝ち得たとか、社会システムを変えたなんて経験はゼロなのだ。
経験がないので、世の中が悪くなっても「社会システムが間違っている」という発想にはならない。構造的な問題に目を向けるのは面倒なので、誰かのせいにした方がラクだ。世の中が悪くなったのは、新自由主義を掲げた小泉・竹中コンビが悪い、アベノミクスを進めた安倍氏が悪い、という感じで基本的に「個人」を叩く。
顔が見えるし、攻撃をすると自分が「正義」を実行しているようで気分がいい。安倍氏に対しても在職中は「安倍が総理をやめれば日本は復活だ」「さっさと政界引退しろ」なんて誹謗中傷を、高名な文化人などが平気で言っていた。
このような「個人へのヘイト」をあおっていたのが、マスコミだ。筆者は森友・加計学園問題で、安倍氏が批判されていた時、マスコミからかなり偏った印象操作がなされていることを度々指摘させていただいた。
このような偏った報道が、今回の事件の遠因にあるのではないかと個人的には思っている。先ほども言ったように、ヘイトクライムというのは、みんなが叩いている「わかりやすい敵」を叩く傾向にある。
近年、安倍氏ほど、マスコミなどから叩かれた政治家はいない。その中には真っ当な政策に対する批判もあったが、中にはSNSの誹謗中傷のように、人格をおとしめるようなものも多くあった。そういう「ヘイト」は当然、山上容疑者も把握していたはずだ。なにせネットで、教団関連団体に安倍氏がビデオメッセージを送ったのをチェックして、統一教会との関係も調べていたくらいなのだ。
そのような大量の「安倍ヘイト」に、山上容疑者も刺激された可能性はゼロではない。教団幹部の中で誰を殺せば最も教団にダメージを与えられるか、などと複雑な問題と向き合うより、「日本に統一教会を持ち込んだ悪の政治家・安倍晋三」を殺害すればすべて解決だと自分に言い聞かせた方が、山上容疑者的にもラクだし納得感があったのではないか。