ふぐの食中毒について
更新日:2022年7月7日
ふぐの食中毒は日本国内で毎年発生し、その多くは自分で釣ったふぐやもらったふぐを自家調理して食べることで起こっています。
ふぐの毒性や毒のある部位は、ふぐの種類によって全く異なります。ふぐの種類を鑑別し、有毒部位を確実に取り除くためには、専門的な知識と技術が必要です。
素人の取扱は非常に危険ですので絶対にしないでください。
(1)ふぐの食中毒ってどんなもの?
ふぐ毒はテトロドトキシンと言い、神経と筋肉に作用して身体の麻痺を起こします。
テトロドトキシンは、熱に強く、酸にも強いため、普通の調理ぐらいでは分解されません。水さらししても無毒化することは出来ません。
毒の量にもよりますが、食べて20分から3時間ほどで発症します。
どんな症状が出る?
最初は、唇や舌、指などのしびれから始まり、手足が動かなくなってきて、頭痛が起こります(おう吐する場合もあります)。
次第に感覚が麻痺してきて、皮膚感覚、味覚、聴覚などが鈍くなり、運動麻痺が起こり、倒れてしまいます。
さらに進行すると、全身の筋肉がだらんとなって指も動かせなくなり、言語障害が起こります。
最終的には呼吸中枢が麻痺し、血圧低下、呼吸困難となってチアノーゼを起こし、呼吸が停止し死に至ります。
治療はできるの?
今のところ、確実な治療方法や解毒剤はありません。
体内に入ったテトロドトキシンはやがて体外に排泄されるので、それまでの間人工呼吸器で呼吸を補う対症療法が行われます。また、胃に残っている残留物を出す胃洗浄や、尿の排泄を促進することも行われます。
もし、ふぐ中毒を疑った場合は、一刻も早く医師の診察と適切な治療を受ける必要があります。
回復した後は、後遺症が残ることはありません。しかし、免疫はできないため、ふぐ毒を摂取すれば何度でも中毒になります。
(2)ふぐのどこに毒があるの?食べてもよい部分は?
日本産のふぐでも、皮に毒があるもの、筋肉に毒があるもの、内臓に毒があるもの、毒のないものがいます。同じ種類のふぐであっても、産地によって毒を持つものと持たないものがあります。日本産のふぐは、「食べてはいけない部分」と「食べても良い部分」が国によって決められています。
ふぐの種類と食べてもよい部位は、以下の表のとおりです。
皮に毒のあるふぐは、筋肉に毒が移行しないように適切に処理をしなければいけません。
なお、全てのふぐにおいて、「内臓(肝を含む)」と「卵巣(まこ)」は食べることはできません。
(特別な処理によって毒力が臓器1グラムあたり10マウスユニット以下となったものを除く。)
また、まれに雌雄同体の両性ふぐがいますが、そういうふぐは卵巣と精巣が混じっているのでどちらも食べることは出来ません。
ふぐの種類 | 食べてよい部位 |
---|---|
クサフグ | 筋肉 |
コモンフグ | 筋肉 |
ヒガンフグ | 筋肉 |
ショウサイフグ | 筋肉、精巣 |
マフグ | 筋肉、精巣 |
メフグ | 筋肉、精巣 |
アカメフグ | 筋肉、精巣 |
トラフグ | 筋肉、皮、精巣 |
カラス | 筋肉、皮、精巣 |
シマフグ | 筋肉、皮、精巣 |
ゴマフグ | 筋肉、精巣 |
カナフグ | 筋肉、皮、精巣 |
シロサバフグ | 筋肉、皮、精巣 |
クロサバフグ | 筋肉、皮、精巣 |
ヨリトフグ | 筋肉、皮、精巣 |
サンサイフグ | 筋肉 |
イシガキフグ | 筋肉、皮、精巣 |
ハリセンボン | 筋肉、皮、精巣 |
ヒトヅラハリセンボン | 筋肉、皮、精巣 |
ネズミフグ | 筋肉、皮、精巣 |
ハコフグ | 筋肉、精巣 |
- 今後の鑑別方法や毒性の解明によって、追加や削除がある場合があります。
- この表は、日本の沿岸域、日本海、渤海、黄海、東シナ海で漁獲されるフグに適用されるものです。ただし、岩手県越喜来湾と釜石湾、宮城県雄勝湾で漁獲されるコモンフグとヒガンフグについては適用されません。
- ヒレは皮に含まれます。骨は筋肉に含まれます。
- まれにトラフグとカラスの中間種のような個体が出現することがありますが、そのようなフグについては両種ともで食べられる部位のみが食べられます。
- 1マウスユニットとは、体重20グラムのマウスを30分で死亡させる毒量です。
ナシフグについて
ナシフグについては、漁獲される海域によって食べられる部位が違います。
種類(種名) | 食べられる部位 |
---|---|
ナシフグ: 有明海、橘湾、香川県及び岡山県の瀬戸内海域で漁獲されたものに限る |
筋肉 (骨を含む) |
ナシフグ: 有明海、橘湾で漁獲され長崎県が定める要領に基づき処理されたものに限る |
精巣 |
(3)ふぐの提供に規制はあるの?
従前、ふぐを取り締まる法律には、食品衛生法と各自治体が定めた条例とありましたが、平成30年の食品衛生法改正により、食品衛生法に統一されました。
ふぐの中毒は生命の危険が高いため、ふぐを処理する場合はふぐの種類の鑑別に関する知識や有毒部位を除去する技術などをもった『ふぐ処理者』の設置が必要となります。
食品衛生法第6条
食品衛生法では、有毒な物質が含まれるもの(及びその疑いがあるもの)の製造・調理・加工・販売などが禁止されています。
ふぐの内臓(肝や卵巣をふくむ)や、可食部位以外の部分は、すべて食品衛生法第6条第2号の『有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの』に該当します。(ただし、個別に検査して無毒が確認されているか、通達で定められた特殊な処理を行ったものは除きます)
飲食店でふぐの肝を提供したり、魚屋さんが肝のついた丸ふぐを一般の人に販売したりするのは、この条文の違反にあたります。
違反すると、食品衛生法第60条により、営業停止などの処分が行われます。
営業許可について
令和3年6月以降に施設で新たにふぐを処理する営業を行うには、その施設が『飲食店営業』や『魚介類販売業』、『水産製品製造業』、『複合型そうざい製造業』、『複合型冷凍食品製造業』の許可を受けていること、大阪府知事の登録を受けたふぐ処理登録者等のふぐ処理者を置くこと、有毒部位を保管する専用の鍵付き容器を設置すること、ふぐを処理する専用設備などが必要です(詳しくはこちら)。
『ふぐ処理登録者』になれるのは、大阪府が毎年開催するふぐ処理講習会を受講し、府知事の登録を受けた者です。また、他の都道府県等で同様のふぐ免許を受けた者や講習会を終了した者も、同等の資格として認められることがあります。
※従前の大阪府ふぐ処理業等の規制に関する条例に基づき堺市内でふぐ処理業の許可を既に取得している施設の場合は改めて手続きは不要です。
※令和3年5月30日以前に取得した飲食店営業や魚介類販売業(法改正前の旧法の許可)を取得している施設で、新たにふぐの処理を行う営業を開始する際は、新法の営業許可を改めて取得する必要があります(詳しくはこちら)。
厚生労働省(旧厚生省)通達「フグの衛生確保について」
昭和58年12月2日付環乳第59号(最終改正:令和2年5月1日生食発0501第9号))
ふぐの食中毒を防ぐために、詳細を定めたものです。
ふぐの種類による可食部位の一覧表、ナシフグの扱い、長期間塩蔵処理した卵巣等の扱い、ふぐ処理に当たっての注意事項、標準和名、輸入の有毒ふぐ(ドクサバフグ、コモンダマシなど)の排除、などについて定めています。
なお、ふぐ加工品の表示については、食品表示法(平成25年法律第70号)に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)で定められています。
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