安倍晋三元首相の銃撃事件をめぐり、宗教法人「世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)」が7月11日、東京都内で記者会見を開いた。逮捕された山上徹也容疑者が統一協会に「恨み気持ちがあった」と供述し、犯行に及んだことについて田中富広会長は、
「教会への恨みから安倍元首相の殺害に至ることは大きな距離があり、その理解に困惑している」
と語ったが、安倍氏と旧・統一協会との関係は密接だ。
会見で田中会長は、
「友好団体が主催する行事に、安倍元首相がビデオメッセージを送られたことはある」
と述べる一方で、
「家庭連合の会員として登録されたことも、顧問になったこともない」
友好団体の活動と宗教団体との活動をあえて使い分けるところが巧妙だ。
もちろん山上容疑者が統一教会を恨んでいたとしても、安倍氏の銃撃など許されるべきではない。
そんな中、NHK「クローズアップ現代」が7月11日の放送で、安倍氏が昨年9月12日に、関連団体「UPF」が昨年開催したイベントにメッセージを送る映像を放送した。トランプ前米大統領もオンラインで参加しており、安倍氏はここで、
「演説する機会をいただいたことを光栄に思います。UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価致します」
まるで日本の統一教会の象徴とも勘違いしてしまうような演説である。
このイベントをめぐり、全国霊感商法対策弁護士連絡会は昨年9月、「昨今、国会議員や地方議員の方々が統一教会やそのフロント組織の集会、式典などに出席して祝辞を述べ、祝電を打つ行為が目立っています」とした上で、その行為が「統一教会により、自分達の活動が社会的に承認されており、問題のない団体であるというお墨付きとして利用されています」と安倍氏に抗議文を送っている。
21年秋の衆院選前に「週刊アサヒ芸能」が報じたところによると、「桜を見る会」にも統一教会幹部が招待され、自民党衆院議員候補の多くが統一教会と関連を持っていた。09年に関連会社が捜査当局の摘発を受けてから一時、活動が沈静化したが、安倍長期政権下で自民党に再び影響力を持ち始めたと指摘されているのだ。
(健田ミナミ)