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第1特集
【プレミア限定ロングver.】宗教と信仰とマンガの深〜い関係【2】

『DEATH NOTE』と『聖☆おにいさん』は宗教タブー!? さとうふみやが初めて語る幸福の科学と『金田一少年』【前編】

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 09年の衆議院選挙で「幸福実現党」より出馬した、『金田一少年の事件簿』でおなじみの人気マンガ家・さとうふみや氏。これまで公の前に現れることのなかった同氏が、作家生活20周年を迎えた今、自身の信仰とマンガ作品について始めて赤裸々に語ってくれた──。

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幸福の科学総裁・大川隆法氏の霊言シリーズ『もしドラッカーが日本の総理だったらどうするか?』

──まずは漫画家を志したきっかけはなんですか?

さとうふみや(以下さとう) 中学の頃、未来の自分を描けと言われ、「漫画家になって毎日締め切りに追われる忙しい日々を送りたい」みたいなことを描いた記憶はありますね。ある意味そのままになりました。最初に好きになったのはベルバラ。オスカルは今でもソラで描けます。小学生の頃は、はじめ「マーガレット」や「りぼん」(共に集英社)を読んでましたけど、少女漫画以外にも『サイボーグ009』や『宇宙戦艦ヤマト』を見てました。コミックはブックオフがない時代に300冊ぐらいもってましたから、普通のオタクでしょうね。

──幸福の科学にはいつ頃入会されたんですか?

さとう もともと霊的世界観に興味があったので、美術の専門学校に通っていた頃、好きの友達と霊界話をしてよく盛り上がってたんです。それで、ちょうどその頃、(大川隆法)総裁先生の『霊言シリーズ』【註1】が出始めて。マンガを描く時のネタの足しにしようと思って、最初は興味半分で読み始めたんです。でも読んでいるうちに、「これは本物っぽいぞ」と。

──それを読んですぐに入会を?

さとう いや、当時は入会に論文審査【註2】があって、あきらめてたんですよ。作文論文は大の苦手で。でも、マンガ家の仕事を始めて吉祥寺に職場を移した頃、西荻の研修道場に行ったら論文がなくなっていて、その場で入会しました。それが、1992年。

──先生の代表作『金田一少年の事件簿』【7】が「週刊少年マガジン」で連載を開始したのも92年。ちょうど「フライデー事件」【註3】が起きた頃ですよね。講談社での仕事に、やりづらい部分はなかったですか?

さとう 持ち込みを始めた頃に事件が起きたので、講談社の前に「幸福の科学お断り」の張り紙があったり、ファクスでの抗議があったりと、どうしたものかなぁと思ってました。それで、担当編集には自分が信者であることをすぐに伝えたんですが、「別にどうでもいいですよ」っていう反応で(笑)。

──今日は幸福の科学のペンダント付けてらっしゃいますが、『金田一』4巻の扉絵でも同じペンダントをつけた金田一の絵を描かれてますね。

さとう あれは単純に、初めての週刊連載で疲れきっていて、これを描いたら問題になって終わらないかなぁ、なんて思ってたんですよ(笑)。誰も気づかなかったんですけど、後でバレて「はっきり描くのはまずい」って言われて終わり。マガジン編集部はその辺、意外とアバウトでした。

──同作はすぐに話題になり、先生もあっという間に人気マンガ家の仲間入りをされました。これはやはり、信仰の力もあると思いますか?

さとう 初めて『金田一』の話を聞いてから半年で連載スタートというのは、確かに異例のことだったみたいですね。当時はすぐに週刊連載のジェットコースターのような日々が始まって、あまり考えてなかったんですけど、後々考えると、「これはすごいことだぞ」って。きっと神仏の援護を受けていたんでしょう。

──マンガを描くにあたり、作品に信仰が影響した部分はありますか?

さとう 一度、金田一にドナーカード登録をさせようって話がきて、「それだけはちょっと!」って。(幸福の科学の)"脳死は人の死ではない"というのは、霊的な根拠があってわかっていること。臓器提供【註4】の場合、提供者は(臓器を取られる)恐怖と怒りであの世にスムーズに旅立てなくなるし、臓器移植を受けた人に憑依してしまう。このことを知らずに、臓器提供が単純に良いこととして行われるのは、恐いですよ。

 表現としては、クライマックスの盛り上げる部分で、人間の正義感に訴えかけるように心がけてますね。悪の美学や耽美主義が嫌いなんです。因果応報、罪を犯した人間は最後に裁かれるべき。もちろん正義が時代によって負けている時もあります。でも宗教的な正義はあとで勝ち負けが決まるもの。キリストは磔にされたけど、キリスト教はこれだけ広がりましたからね。「正義は勝つ」ではなく「正義はある」です。『DEATH NOTE』【8】なんて、あれ、描いてる人は不幸になりますよ(笑)。

──な、なるほど。先生は、教団ではオリジナル作品を描かれていますね。『降魔法輪(ごうまほうりん)』【9】を描いたきっかけはなんですか?

さとう 幸福の科学でマンガ雑誌を作りたいという企画が持ち上がった時に、知り合いから頼まれたんです。「じゃあ、オカルト作品でいいんじゃない?」くらいのノリで、悪魔払いの話にしました。当会の秘儀である「エル・カンターレ ファイト」も、初めは描いちゃマズイかと思って別の名前の呪文にしてたんですけど、逆に周りの方から「描いていいっスよ!」と言われて、つい……(笑)。

──幸福の科学でマンガを描く際は、信仰を広めることを意識されます?

さとう 「広めるぞ!」というよりは、「誰が読んでも面白いもの」を意識しましたね。もちろん、そういう布教的意識のあるマンガだってあってもいいと思いますけど。菊池としを先生【註5】なんてどストレートにそれを出してますし。菊池さんの描く地獄の表現力は本当にすごくて、総裁先生から「これは怖いねぇ」って褒められたらしいですよ(笑)。

──では漫画ではなくプライベートで周りの人間に信仰を勧めたりはしないんですか?

さとう 布教っていうのは営業的才能が必要なんですよ。"引きこもり商売"の私がそれをやると、漫画が描けなくなっちゃうので難しいところがある。せいぜい映画のチケットを配るくらいですね。その映画だって忙しくて観に行かなかったことがあるくらい。当会はそういうとこわりと自由なんですよ。だから自分は「あの作家さんは幸福の科学だよね」って言われる程度の布教力しかありませんから(笑)。
(構成/大熊 信)
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さとう・ふみや
1965年、埼玉県生まれ。高校卒業後、専門学校で油絵を学ぶ。趣味で続けていた同人誌が軌道に乗り、初めて持ち込みをした「週刊少年マガジン」から作家デビュー。95年には自身の代表作『金田一少年の事件簿』で第19回講談社漫画賞を受賞している。ちなみに、Wikipediaにある本名、「文子(あやこ)」は"ふみこ"の間違いだそう。

【註1】『霊言シリーズ』
亡くなった人間の霊、もしくは存命の人物の生霊を降霊し、大川総裁を媒介して話を聞く儀式を収録した書籍。松下幸之助や坂本竜馬だけでなく、創価学会名誉会長池田大作氏の守護霊の霊言なども書籍化されている。

【註2】論文審査
90年頃まで、幸福の科学への入信希望の理由をまとめた論文を提出し、その内容が受理された者のみが入会することができた。幸福の科学が"インテリ集団"と呼ばれた理由のひとつであり、初期の頃は総裁自らが添削を行っていたそう。

【註3】「フライデー事件」
91年に、講談社より発行されている週刊誌「フライデー」が幸福の科学批判や暴露記事を掲載し、教団側が抗議をしたという一連の争議のこと。

【註4】臓器提供
「脳が死んでも肉体から魂が抜け出していない」という理由で、幸福の科学では脳死を人の死と認めていない。被提供者が提供者と食の好みが似てしまうことがあるのも、憑依されているからだそう。

【註5】菊池としを先生
漫画家。ホラー表現には大川総裁も一目置くほど(?)。某有名少年漫画誌で幸福の科学の教義を色濃く反映した作品を連載していた。現在は月間リバティで活躍中。

【7】『金田一少年の事件簿File』(全26巻)
天樹征丸ほか作、さとうふみや画/講談社(04~05年)/609~735円
「週刊少年マガジン」にて92~01年まで連載されていたマンガシリーズの文庫版。04年以降は新シリーズが不定期で発表されており、11年4月からはまた、新たなシリーズとして再開する予定。


【8】『DEATH NOTE』(全13巻)
大場つぐみ作、小畑健画/集英社(04~06年)/各410円(13巻のみ680円)
「週刊少年ジャンプ」にて03~06年まで連載された作品。死神・リュークが落としたデスノートを悪用し、次々と殺人を犯す「夜神月=キラ」を、「神」と崇める者が現れるなど、"悪の美学"思想が見られる。


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【9】『降魔法輪』
さとうふみや/幸福の科学出版(01年)/650円
「コミックエンゼルズ」に収録された、オリジナル作品。当時講談社との専属契約が切れていたため、寄稿することが可能に。主人公の友人に憑依した悪霊は、当時のピップエレキバンCMのパロディとして描いたそう。


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