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暴力、破産…旧統一教会「信仰2世」の女性証言「脅しで献金今も」

毎日新聞 / 2022年7月13日 16時58分

12日の記者会見場。今も過去に苦しむ元信者の女性は、ついたての向こうで体験を明かした=東京都千代田区で2022年7月12日午後6時3分、春増翔太撮影

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による被害者の救済に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が12日に開いた記者会見に、母親の入信をきっかけに自らも信者になった経験を持つ「信仰2世」の40代の会社員女性が同席し、体験を明かした。「親の助けがないと生きられない年齢で(親やその信仰を)拒絶するのは難しかった」と振り返り、同連合による「献金は信者自らの気持ちでやっている」という説明を「うそばかり。私は理不尽な生き方を強いられた」と批判した。

 弁連の会見は安倍晋三元首相が銃撃された事件で、山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=が「母親が(同連合の)信者で、寄付により破産して家庭が崩壊した」と供述していることを受けて開かれた。女性は「中傷を受けるかもしれない」として、会場のついたてで姿を隠してマイクを握った。

入信した母親の教え拒めず

 母親が当時の統一教会に傾倒し始めたのは、女性が高校生の頃。母は統一教会の「教え」を女性ら3人の娘にも強要するようになった。だが、夫婦仲が悪く、父親に苦しめられていた母に同情していた女性は、母の信仰を受け入れることが親孝行になると思い、自らも教会施設に通い始めた。やがて、その「教え」を信じるようになったという。

 1995年、21歳だった女性は統一教会による「合同結婚式」を受けた。見ず知らずの信者同士を教会側がマッチングさせる仕組みで、2歳年下の韓国人男性と結婚することになった。国内で同居を始めたが、まもなく男性に暴力を受けるようになり、子どもが生まれてからも続いた。離婚を望んだが、母や教会の人たちからは「あなたの信仰が足りないせいだ」「離婚するとサタンが喜ぶ」と言われた。その後、母の面前で男性から暴力を振るわれて離婚は認められたが、教会から「再祝福を受けないか」と言われ、再婚が決まった。

 「教会には『夫婦でいなければ天国に行けない』という教えがあり、母は娘が天国に行けないと悲しんでいた。私にも罪悪感がありました」

 再婚相手はこの時も教会が選んだ韓国人男性で、女性は韓国に移住した。教会からは140万円の献金を求められたという。「相手は学歴も職業も年齢も虚偽の内容で申請していた。その人にクレジットカード類を使われ、私は夫によって自己破産させられることになりました」

 2012年に統一教会の創始者だった文鮮明総裁が死亡すると「洗脳が解けた」。13年に日本に帰国し、最初に相談をしたのは不安や悩みごとを受け付ける「いのちの電話」だった。

 「高校生の時は親に従わなければいけない家庭環境だった。親に『信じないとご飯あげない』と言われれば……言われるんです。はねつける強さはありませんでした。(今は信仰をやめたが)誰にも相談できないのが『2世』の状況です」

 帰国後、母からは執拗(しつよう)に追いかけられたが警察に相談し、縁を切った。姉妹とも離散状態になっているという。

弁護士ら「2世を含む被害、後を絶たない」

 弁連の代表世話人を務める山口広弁護士は、12日の会見で「(女性のような)2世は親がなぜそうなったか理解ができない。それがどれほどつらいことか」と訴えた。弁連には、全国の元信者らから今も同連合に献金を迫られたなどとする被害相談が寄せられており、21年は47件(総額3億3153万円)に及ぶ。

 同連合の田中富広会長は11日に記者会見し「過去に献金トラブルもあったが、09年からコンプライアンス(法令順守)を徹底した。今は献金の強要はしていない」と説明。山上容疑者の母親についても「母親の寄付は本人の意思に基づく」と述べていた。

 だが、この発言をニュースで知ったという前出の女性は「うそばかり。実際は『地獄に行く』などの脅し文句を使って献金をさせるケースが多い」と話した。弁連の認識も同じだ。

 実際に近年、民事裁判でも同連合の09年以降の献金の違法性を指摘し、返還を命じる判決は出ている。

 元信者の女性が献金の返還を求めた訴訟では20年2月、東京地裁が「献金の要求は、不安や恐怖をあおる不当な方法だった」として勧誘した同連合側に約470万円の返還を命じる判決を下し、同連合などの上告が棄却され21年に確定した。

 山口弁護士も、不当に1000万円超を献金させられたと訴える70代女性の相談を受けて今年1月に同連合に返還請求をしたところ、同連合がほぼ全額を返金することで合意したケースがあったという。

政治家に「被害者を生む団体への支持避けて」

 こうした現状を受け、弁連では国会議員らに、同連合や友好団体に支持を表明するような行為を慎むよう求め続けてきた。18年には全国の政治家に向けて、19年には国会議員に向けて要望書を提出した。

 21年9月には、直前に同連合の友好団体が開いた集会にビデオメッセージを寄せた安倍晋三元首相に対し「『お墨付き』を与えることになる。安倍先生の名誉のためにも慎重に考えていただきたい」という抗議文も送った。ただ、議員会館の事務所に送った抗議文は「受け取り拒否」で返送されてきたという。

 山口弁護士がこうした警鐘を鳴らすのは、同連合が政治を利用しようとしていると考えるためだ。同連合が政治家との接点を持つ理由を①捜査の手が及びにくくする②布教に際して信者らの信用を得る③同性婚反対など同連合の主張を実現する――ためと指摘し、政治家による支持は「新たな被害者を生み出しかねない」と危惧する。

 前出の40代女性も「教会の創始者が、岸信介元首相やゴルバチョフ元ソ連大統領と面会している写真を見て『ああやっぱりすごい人なんだ』と信じる動機付けになった」と振り返った。

 弁連は12日に公表した声明で、事件への非難と安倍氏への弔意を表明。その上で「信者やその家族らの苦悩や葛藤、困窮などの悩みに接してきた当会としては、(2世が同連合を恨む)実情を憂えてきた。こうした問題に社会としてどう取り組むべきかが問われている」と呼びかけている。【春増翔太】

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