紙の本
『その日』があることは幸せなことであろうか
2008/10/05 22:06
14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰しも死ぬことについて考えたことがあると思う。それは生きてきた時どきのおりに、自分であったり、愛するひとであったり、家族であったり、親であったりする。重松清著『その日のまえに』は生きること、死ぬこと、のこされること、歩きだすことを描いた作品です。
『ひこうき雲』僕は小学6年生の時、クラスのみんなに嫌われていた岩本隆子(ガンリュウ)のことを思い出す。ガンリュウは重い病気で入院していた。僕は担任の先生とクラス委員の美代子と男子3人とお見舞いに行った。同級生の死。「もしも神さまがいるのなら ― そして、ひとの命の行方を神さまが決めるものなのだとしたら、」(54頁)
『朝日のあたる家』高校教師のぷくさんは42歳。中学生の娘と二人暮らし。8年前、夫は会社の帰り地下鉄の駅で倒れ、虚血性心不全で亡くなった。「平凡。平和。平穏無事。そんな言葉でまとめられる毎日の、冗談みたいなもろさを、ぷくさんは知っている。だから―ジョギングを始めた。」(70頁)
『潮騒』余命3ヶ月の宣告を受けたその日、佐藤俊治(シュン)は30年前に住んでいた町、夏休みによく行った“かもめ海水浴場”を訪れる。シュンは同級生の石川(でめきん)にがんを宣告されたことを告げる。「時間は永遠に流れる。過去も未来も無限につづく時の流れの中で、自分の人生は四十二年前に始まり、そして間もなく、不意に終わってしまう。」(129頁)
『ヒア・カムズ・ザ・サン』高校生のトシくんは、父親を赤ん坊のときに交通事故で亡くし母ちゃんと二人暮らし。母はすごく甘ったれで、臆病な息子にがんであることを言えずにいた。そんな時、母ちゃんはカオルくんと知り合う。「素直に。静かに。感情の高ぶらない悲しさって、ある。初めて知った。涙が、頬ではなく、胸の内側を伝い落ちる。」(204頁)
『その日のまえに』去年の秋、妻、和美の病気がわかり、余命が告知された。年が明け最後の外出に僕と和美は結婚して最初に住んだ町を歩く。「僕には、信仰する宗教はない。それでも、もしも ― 神の代わりになるものを世の中で選べ、と言われるのなら。僕は、いまの和美を選ぶ。」(243頁)
『その日』
『その日のあとで』健哉と大輔と三人の生活が始まり三ヶ月がたった。7月に入って間もない頃、大学病院の師長の山本さんから「和美さんの手紙を預かったんです。亡くなる少し前に」と、電話がかかってくる。「便箋は一枚きり。三つ折りにした便箋を開く前に、目をつぶり、ゆっくりと深呼吸をした。目を開いた。………」(329頁)
この連作短編集は最後の作品『その日のあとで』で終結します。自分の生きてきた意味や、死んでいく意味について考える『その日』があることは幸せなことであろうか。文庫版のためのあとがきは強烈でした。重松氏の作家としての使命感に感銘を受けました。
紙の本
重松さんの作品には、いつも泣かされます。
2009/02/14 21:39
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松さんの作品には、いつも泣かされます。
感情移入しやすいのでしょう。登場人物が、年代的にもちょっど同じくらいのため、時代背景が実体験と重なります。
本書は7編の短編集で、テーマは「死」について。
「生」と「死」を分けるもの、それはいったい何なのでしょう?本書の中で、「生きているものは時間が流れるが、死んでるものは時間が止まる」という表現があります。止まった時間、生きている者にとっては次第に記憶が薄れていくための時間でもあります。
本書は短編集ですが、最後の方の「その日の前に」と「その日」、「その日の後で」は連作。しかもそれ以外の短編もすべて、少しずつ重なる内容となっています。
「その日」とは、死ぬ日。
日常生活がこれほど大切な時間だということを読んでいて気がつきました。
死は、日常生活を突然止めてしまうものだからです。
お金も名誉もこの世のもの。
あっちの世界に行くときに、自分は何を残せるのか・・・考えてしまう作品です。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
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死について。
2015/10/25 01:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:海月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
少しずつつながっている短編集。身近な人を亡くしてゆく・亡くした人たちの物語。余命宣告をされた奥さんの「その日」にむかって物語は進んでゆきます。そしてその日、その日のあとも生きていく僕。
泣きながら一回目を読んで、二回目は大事に読みました。
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あたりまえの日常の大切さ・・・
2015/10/21 00:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松清さんの本はいつも本当に泣いてしまいます。
これももちろんです。
命の尊さ、せつなさ・・・言葉では言い表せないけど、こころにくるものがあります。
そして、最後は本当にうまいです!参りました。
あたりまえの日常って本当に幸せで、それがあたりまえでなくなることの辛さ、どう向き合ってどう乗り越えるか・・・
日々のあたりまえの生活がとてもありがたく幸せに感じることができます。
紙の本
みんなに有るその日
2021/01/22 19:14
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投稿者:もこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
テーマは重いのに、読み終わったあと、とても前向きな気持ちになりました。
一日一日を家族のために大切に生きて行こう!と思いました。
全ての話が繋がっているのも、大切な「繋がり」のような気がしています。
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死を巡っていつつのケース
2020/12/10 00:58
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投稿者:Masetto - この投稿者のレビュー一覧を見る
本人の、家族の、友人や同級生の死にまつわる話が五編。 事故死もあるけど主に癌でしばらくの時間の後に死がやってくることがわかっているケース。 いつつのケースの登場人物が直接の知り合いとは限らないけど なんとなくつながっている感じ。 ま、世間はそんなものか。。。 なんといっても家族を失うことは大変辛いことだと思うけど それぞれがいろいろな思いを持つ様子がとてもよく描かれていた。
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死がテーマ
2020/01/18 11:11
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投稿者:Sota - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集なので、内容が浅いように感じていましたが、表題作からは、それまでの短編も絡んできて、夢中て読みました。そして、石川のコピーと和美の手紙で号泣しました。
やはり、重松さんは、泣かせます。
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つらかった
2017/10/16 07:08
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投稿者:L - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなにページをめくる手が重くなる作品は初めてでした。誰にも必ず訪れる死を考えさせられました。「忘れてもいいよ」は泣きました。
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泣ける感動小説
2017/09/17 21:15
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投稿者:ポッター - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネットで調べて読みました。まだ将来のある人々が亡くなる事を本人、残された周りの人の視点から描かれた作品。
「その日」を迎える場面の際は、思わず涙しました。日常を健康に過ごせる事に感謝。
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涙
2015/11/13 16:33
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投稿者:れん - この投稿者のレビュー一覧を見る
すごく感動して、涙なしには読めませんでした。
色々なことを考えさせられる作品です。
重松さん、最高!
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「その日」と向き合う
2015/01/30 23:06
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投稿者:コサック誠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「その日」はデリカシーなく言ってしまえば「死を迎える日」なのだろうけど、もっといろんな意味や感情をそれぞれにもっていていいんだろうなと思う。
今はまだ元気だと安心していても、ときどき親の老いを感じる年頃になった。
そんなとき「ヒア・カムズ・ザ・サン」の息子
のことを思って涙が出てくる。
他の話も胸にズシリとくるけれど、一番感情移入してしまう。
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本屋大賞を見て、読みました。
2014/10/30 22:09
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投稿者:shingo - この投稿者のレビュー一覧を見る
本屋大賞を見て、読みました。
死を扱った短編集。丁寧でストレートに描いています。テーマは重いですが、それを読ませる文章がうまいと思いました。
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お盆の花火
2015/11/16 23:31
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一話の「ひこうき雲」がしっくりこなくて、だいぶ放置してしまったけど、完読。二話目からはぐいぐい引き込まれ、そしてほぼ泣き通し。作品の余韻に泣くというのではなく、大切な人をつれさっていく「死」を考え、作品ごとの去る者と残される者の心情を思うと涙が出てしょうがなかった。そんな中で、ちょっと明るいエピソード。トシくんが語る「母親の定義」と花火大会を開催する石川さんの去った者へのなかなか粋なレクイエムの方法。新盆でも迷わないための大きな大きな迎え火。それがお盆の花火の本当の姿なのかも。うつくしいね、でめきん。
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死と向き合わせてくれる作品
2015/02/26 02:42
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投稿者:よっぴぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
半年前に母が急逝をしました。あまりにも突然のことで百か日法要が終わっても事実として受け止められずに、何をしても母の事を想い出しては涙が溢れる日々でした。そんな時にこの本と出合い、迷った挙句に読みました。読みながら、涙線崩壊しました。もっと早くに読みたかった、本当にその日のまえに読みたかったけれど、誰もが真剣に向き合わないといけないことなのだと納得させられました。
紙の本
不慮の死を迎える本人と家族の苦悩。
2009/03/31 14:11
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松作品は命の尊厳をテーマにした物語が多いけれど、本作もやはり生と死を見つめた7つの物語である。最後の3篇、表題にもなっている「その日のまえに」と「その日」と「その日のあとで」は、それぞれのタイトルからも分かるとおり、連作になっている。しかし他の4作「ひこうき雲」「朝日のあたる家」「潮騒」「ヒア・カムズ・ザ・サン」はそれぞれ独立した短編物語となっている。・・・のだけれど。物語の最後に、まるで並べられたドミノがスタートを目指してパタパタと倒れるように、後ろから7つの物語が紡がれていく。こういった演出はさすがとしか言いようが無い。
人はみな「その日」を迎える。いつかは迎えるのだけれど。老いもせず、その日が来てしまったら。突然「告知」という形で余命を区切られてしまったら。本人の苦しみ、家族の苦しみ。まだ幼い子供たちを残して死ねない、死にたくない。誰もがそう思うことだろう。でも不条理にも、死は向こうから圧倒的な存在感を伴ってやってくる。どんなに嘆き悲しみ叫んでみても、刻一刻と命の炎は弱まっていく。死は全ての人間に与えられた、唯一にして絶対の平等だと言う者もいるが、こういう物語を読むと果たしてそうなのだろうかと疑問に感じてしまう。
歴史上誰一人、死ななかった者はいない。生あるものは甘んじて「その日」を受け入れなければならない。しかしそれを日々リアルに実感しているかと言えば、全くそんな事は無かったりする。しかし世の中には、こんな理不尽な死を迎えなければならない人たちが、たくさんいるのだ。自分に今、生ある事が。そして大事な人達の生に囲まれている事が、奇跡のようにさえ思えてくる。この奇跡を、たった今生きている事を、大事にしなければいけないな、と痛感させられる。
しかしどうにも、ココロが重くなってしまう。すごくリアルに明日は我が身と思えてしまうから、一生懸命に生きよう、というよりあせりと恐怖さえ浮かんでしまう。正直気持ちが沈んでいる時には、読むのをお勧めする事はできない。自分と大事な人の命の尊さをもう一度しっかりと見つめなおしてみよう、と思う時にぜひ手にとってもらいたい一冊です。
読書メーターのレビュー
2019/09/30
873
投稿元:
タイトルにいう「その日」は、当然「その日」のこと。ここからして、もう涙に向かう用意がなされている。読む前から通俗的な感傷が横溢すること、あたかも大衆演劇のそれのごとく(これが言い過ぎなのはわかっている)、シチュエーションの予定調和への展開も予想される。そう、まるで「フーテンの寅さん」のようにだ。書く方も、読む方もそれを重々に承知したところに物語が紡がれ、完結に向けて流れてゆく。それでもやっぱり不覚にも涙してしまう。こんな見え透いた手法に騙されるなよと思いつつ。そう、それこそが重松の世界である。
2014/12/23
534
投稿元:
⭐️⭐️⭐️またまた子供の本棚から拝借しました。重松さんの作品はまだ二作目ですが、死を扱う場面が多くて正直苦手な感じがありました。本作も前半では同じ感触でしたが、表題作からその前の短編もバラバラのようで全て繋がっているのがジワリと分かってきました。表題作から以降は図らずも涙が溢れてしまいました。後書きの恩師との別れにまだ涙が止まりません。名作です。
2014/03/08
530
投稿元:
40歳を目前にして、読んだ。この連作短編集には、その年代の人が死ぬ話で構成されていて、ズシンと響いた。送る側、送られる側。また歩き出す事。最近、中年になって、自分の健康に自信が持てないのもあって、いろいろ考えてしまった。中年で病気に倒れる人も多いし、僕自身の「その日」について、思いめぐらした。
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