花や旬の食材で季節を感じられるように、「季節感」を覚える漢方薬の処方がいくつもあります。日に日に暑くなりつつある時期にお送りする今回は、熱中症予防に活躍する五苓散(ごれいさん)をはじめ、夏に活躍する漢方薬をご紹介します。
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著者プロフィール
松田 正(みさとファミリークリニック[埼玉県三郷市]院長)●まつだ ただし氏。1987年日本大学医学部卒。1991年日本大学大学院医学研究科博士課程修了。1990~92年にかけて米国アイオワ大学心臓血管研究所に留学。日本大学医学部内科学兼任講師を経て、2006年にみさとファミリークリニックを開業。もともと漢方薬は全く使用していなかったが、大野修嗣氏(元日本東洋医学会副会長)との出会いから、漢方の可能性に目覚める。大野氏に師事しながら、頭痛をはじめ内科・小児科領域の様々な疾患に対して漢方薬による治療を実践している。
連載の紹介
松田正の「急性疾患にこそ漢方薬を!」
「漢方薬は急性疾患にこそ有用!」という松田氏が、漢方薬の効果を速やかに引き出す「タイミングと用量のコツ」を交えながら、明日の急性期診療にすぐに役立つ漢方薬の使い方を紹介します。ぜひ読者の先生方にも試していただき、ご感想やより良い使い方のご提案をお待ちしています。
この記事へのコメント(2件)
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松田 正(2022/06/29 21:33)
ご質問ありがとうございます。 この様な不思議な薬効が漢方薬の面白さではあるのですが、一方で作用機序が十分に解明されていないことで、かつての私が感じた様に「うさん臭くて信用できない」と思われる大きな原因であると認識しています。今回の様に不思議に感じたことを率直にご質問頂けることは、とてもありがたいことと感謝申し上げております。ちょっとお返事が長くなりますが、お付き合い頂ければ幸いです。 五苓散は作用機序の解明がかなり進んでいる漢方薬の一つです。詳細な内容は、第12回・急性胃腸炎のコラムをご参照ください。 漢方医学では「水毒(すいどく)」と言う概念があり、体内の水分の偏在を意味するため、脱水も溢水もこれに含まれます。動物実験において、腹腔内に生理食塩水を注入し溢水状態にしたマウスに五苓散を投与すると尿量が増えますが、逆に脱水状態のマウスに五苓散を投与すると尿量が減少することが分かっています。つまり、五苓散は、体内の水分量が多い時には利尿薬として作用し、脱水状態では尿量を抑えて体内の水分を保持しようとする、ホメオスタシス(恒常性)を能動的に維持することが可能な薬剤となります。これが、排尿を促すだけの西洋薬の「利尿薬」とは全く異なる、「利水剤」のネーミングの由来です。 高山病の予防は、海外においては「利尿薬」であるアセタゾラミドが使用されていますが、発汗過多や脱水の状態で利尿薬を投与するリスクは大きいと私は考えています。一方で、「利水剤」である五苓散は高山病の予防に禁忌なく使用が可能で有用性も高いことが分かっています。なぜなら溢水・脱水に関係なく体内の水分のホメオスタシスを維持することが可能な薬剤だからです。 熱中症、高山病、片頭痛などの発症メカニズムは未だに全容は謎に包まれています。五苓散の薬効機序を研究することで、これらの疾病機序が解明される糸口となる可能性を私は強く信じています。「漢方薬は不思議だけど面白い」と思って下さる先生方が増えてゆくことを願っています。 ご質問ありがとうございました。
漢方初学者(2022/06/29 09:02)
いつも大変興味深く拝読させていただいております。 今回の、五苓散は体から水を追い出す処方にもかかわらず、脱水を予防できるというのは矛盾しているように思うのですが。 初歩的な質問で申し訳ありません。