【2022年版|陸上短距離100m200m400m】中学生・高校生向け種目別おすすめ練習メニュー

陸上競技短距離走をやっていると練習メニューの組み方で悩むことが多くなると思います。
毎日練習しているとメニューが同じになったり、なんだか物足りない感じたりする日もあることでしょう。

部活であれば、先生やキャプテン、ブロック長が組んでくれたメニューをただなんとなくこなすだけになります。

しかし、練習メニューの組み方や意味を理解すれば、練習効率や練習効果を上げることができます

今回は、『陸上競技100m200m400mの基本的なメニューの組み方』をご紹介します。
初心者から上級者に向けて、短距離の基本となる練習メニューの組み方をお伝えします。

一人で練習している選手でも今回紹介する内容を意識してメニューを組めば、より効率的で無駄の少ない練習できることでしょう。

【短距離走初心者編】100m200m400m練習メニュー

最初に陸上経験1年未満の初心者選手のための練習メニューをご紹介していきます。
初心者のうちは身体が競技特性に慣れていないため、負荷をかけすぎるとケガに直結します。

そのため、初心者がまずやるべきメニューはトップスピードを出す練習を取り入れて、負荷をかけ過ぎずにフォームを崩さないことを優先したスプリントフォーム形成メニューです。
トップスピードを上げて長い距離を走れる持久力を付けるといった『走るための基礎能力』を上げるための練習メニューで、スプリントの土台となる能力を付けることをメインテーマとします。

また体幹周りのトレーニング(補強)を入れて、徹底的に筋力アップを行います。
初心者のうちに基礎的な練習を怠ってはいけません。理由は今後の競技人生で伸び悩む可能性が大きくなるからです。

少しずつ自分のできることを増やしていきましょう!

【初心者100m専門練習メニュー】瞬発力を重視した練習パターン

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
60m×3×2 ダッシュ
120m×3 ダッシュ
アクティブレスト ジョグ
150m×4 ウェーブ走
SD ダッシュ
200m×3 テンポ走
off rest off
ポイント:
7割程度のパワーでフォームを意識して走る。
最後まで走り切る体力を付ける。

距離を200mまでに抑えて負荷がかかりすぎないように調整したメニューで、距離を踏みすぎないので疲労の蓄積が少なく、初心者にありがちな「シンスプリント」や「疲労骨折」の筋肉疲労による故障を回避できます

150mを中心にすることでコーナーの遠心力を意識した走り込み練習も可能です。

150mや200mであれば、初心者でもなんとか走り切れる距離でしょう。
初心者のうちは200mまでの距離で十分な負荷をかけることができます。

長い距離(300m~400m)をダラダラ走るのではなく200m程度の距離を集中して走るようにしましょう。
また、フォームを意識しながら7割程度のスピードを出せる距離のため、スピードに対して身体をどう動かせばいいのかを考えながら走ることができるはずです。

短距離走は身体をコントロールする能力が非常に大切なため、乳酸が出た状態でいかに効率よく動くかが大事です。
150m~200mの距離は、疲労困憊でフォームを崩すことを防ぎ、ケガのリスクを低くすることができるため、入部から間もない初心者や春先でスピードを上げたい選手にオススメです。

【初心者200m専門練習メニュー】瞬発力と耐乳酸トレーニングを両立した練習パターン

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
30m×4×3 ダッシュ
250m×4 テンポ走
ジャンプ系 バネ
コーナーSD ダッシュ
200m+100m×3 プラス走
10m+60m×3 加速走
off rest off
ポイント:
短い距離を中心に、ジャンプ系の練習を取り入れてバネを強化する。
初動動作に負荷を掛けて瞬発力を伸ばす。

週のうち1日をジャンプ系のトレーニングにすることで、瞬発力を含めた基礎的な運動能力の向上を狙った練習メニューとなります
ボックスジャンプ・ハードルジャンプなどの跳躍系練習(プライオメトリクストレーニング)を通して短距離走に適した身体の使い方を体得することができる練習です。

陸上では短い接地で強い反発を受ける『プライオメトリクス』の動きができなければいけませんが、ジャンプ系のトレーニングを取り入れることで瞬発力の使い方を身体で覚えることができます。
このトレーニングパターンでは平日は学校の校庭を想定しているので長い距離を設定せず、土曜日に距離を踏むようにしてあります。

土曜もショートダッシュにすれば、より瞬発力を重視したメニューになります。


【初心者400m専門練習メニュー】耐乳酸トレーニングを重視した練習パターン

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
120m×5×2 テンポ走
200m×5 テンポ走
SD ダッシュ
150×3×2 テンポ走
100×5×2 テンポ走
300m×5 テンポ走
off rest off
ポイント:
スピードは控えめに距離を増やす。
ロングスプリンターに必要な耐乳酸能力を鍛える。

長めの距離を中心にした練習メニューです。陸上競技をやっていなければ絶対に走らないような距離です。
スピードレベルを落として、長い距離を走り切る体力とそれに必要な効率的なフォームを習得することがポイントとなります。

短距離走は最大出力も大事ですが、レベルが上がるほどエネルギーをいかに効率的に使うかというのが大切になってきます

初心者のうちに効率的な走りをイメージした練習をすることで速く走ることができます。
また、これくらいのメニューがしっかり走り切れるようになれば、もう初心者は卒業です。

【短距離走上級者編】100m200m400m練習メニュー

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次は種目ごとの専門性の高い練習メニューを取り入れましょう。
陸上競技はどれだけ特化した能力を持っているかで勝負が決まります。

上級者が試合でいい結果を出せるかどうかは専門性を持っているかどうかです。

ある程度の実力がついたと思っているのに、なかなか試合で結果が出ないってときには、練習メニューに専門的な内容を取り入れていきましょう。

 

【上級者100m専門練習メニュー】ショートスプリントの爆発力を鍛える練習パターン

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
250m×3 テンポ走
30×5,60×4,
80×3,100×2
坂ダッシュ
アクティブレスト ジョグ
SD ダッシュ
200m×4 ウェーブ走
60mバウンディング バネ
off rest off
ポイント:
最大パワーの加速を意識する。中間疾走で減速しないスプリントフォームを身に付ける。

加速力とトップスピードを高めるための練習メニューです。
短い距離で一気にパワーを出すには坂ダッシュやバウンディングが有効です。

高いスピードレベルでも動きをコントロールするために、リラックスして高いスピードを出すことを意識しましょう。

【上級者200m専門練習メニュー】筋持久力を鍛える練習パターン

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
コーナーSD ダッシュ
300m×3 ウェーブ走
アクティブレスト ジョグ
120m×3×2 テンポ走
変形ダッシュ ダッシュ
250m+200m+150m テンポ走
off rest off
ポイント:
最大スピードを維持することを意識する。

スピードの維持に重きを置いた練習メニューです。
長い距離を走って、乳酸がたまった状態でさらに距離を踏むことで筋持久力を鍛えることができます。
ロングスプリンターだけでなく、100m専門の選手であっても筋持久力を鍛えることで後半の失速を抑えることができるようになります。

【上級者400m専門練習メニュー】効率的なフォームの形成と耐乳酸能力を鍛える練習パターン

曜日 負荷 メインメニュー 補強 ターゲット
350m×3 ロングダッシュ
150×5 テンポ走
アクティブレスト ジョグ
60m×10 坂ダッシュ
ドリル 動き作り
200m×7 テンポ走
off rest off
ポイント:
長い距離で負荷をかけて体力を向上させる。リラックスした状態の維持を目的とする。

長い距離の中でトップスピードを維持する練習メニューを繰り返します。

200m以上の距離で自分のスプリントフォームを確認しながら走ります。

400mは無酸素運動の限界と言われています。省エネで走らないと急激な失速に直結します。

そのため耐乳酸トレーニングをしっかりやり込んで、400mでバテないようにしましょう。


練習メニューの基本的な作り方

練習メニューを組む時にはいろいろな事を考えて総合的に決める必要があります。
まずはそのなかでも練習の基本となる概念的な部分をご紹介します。

選手や学校によってメニューの考え方はいろいろあるので、これもひとつのパターンだと思って下さい。

練習計画は3ケ月間、1カ月間、1週間で作る

練習メニューを組む時には、長期中期短期の3つの期間を区切って、構成することが基本です。

専門的にはマクロサイクル(長期)メゾサイクル(中期)ミクロサイクル(短期)と言います。

設定する期間は選手によって違い、マクロを1年とする場合もありますが、学生の場合は1シーズンとなる3~6ケ月を長期として設定することをお勧めします。
ここでは、長期を3ケ月間、中期を1カ月間、短気を1週間と設定した場合を想定します。

長期のメニュー(3ケ月)

なぜ長期の練習メニューを決めるかと言うと、『今やっている練習の成果が出るのが約3ケ月後』だと言われているからです。

長期のサイクルではザックリとした練習の方向性を示すので、練習メニューというよりも目標にだと言えます。
長期で考えるポイントは『何を練習の軸とするか?』です。
長期のサイクルのなかで練習の方向性を決めることで、日々の練習メニュー作りの軸ができます。
「3ケ月後にできるようになっている能力」をポイントとして決めてるといいでしょう。

☆長期サイクルの例☆
・体幹を使った走りを身に付ける。
・100mの前半を速くする。
・トップスピードを上げる。
・ストライドを伸ばして歩数を100mで1歩を減らす。

中期のメニュー(1カ月)

長期のメニューでは方向性を決めましたが、中期のサイクルでこれをもっと具体的なメニューに落とし込みます。

たとえば、長期で『前半を速くする』と決めたとしたら、中期ではそれを3つに分割して、

・1ケ月目はスタブロを押す練習を中心にする。
・2ケ月目は前傾を保つ練習を中心にする。
・3ケ月目は中間疾走につなげる練習を中心にする。

上記のように中期のメニューを3つ組み合わさることで長期の目標をクリアできるように設定します。
目標とする結果(数値的な目標)が得られそうな練習メニューを考えて、それをいつまでにクリアさせるのかを決めるのが中期のメニューです。

短期のメニュー(1週間)

一般的に練習メニューと聞くと、この1週間の練習メニューを指すと思います

1日ごとにそれぞれ「何をどうやるか」を決めて、1週間で一回りするような練習メニューを作ります。

例えば、「1ケ月目はスタブロを押す練習を中心にする。」にアプローチした月間の第1周目の練習メニューは下記の通りです。

曜日
練習 ランメニュー スキルメニュー ランメニュー スキルメニュー フィジカル シミュレーション 休養
メニュー インターバル SD インターバル SD  体幹 TT OFF
距離 200 50 200+100 30 100
セット数 5 3
レスト 10min walk

このようにコンディションや練習の進み具合を考慮しながら毎週作っていくのが短期のメニューです。
セット数やレストも目的によって変わりますし、体調が悪ければその日のメニューを変更することもあります。この短期のメニューを4つ(1ヶ月間が4週間あるから)組み合わせると中期で設定したメニューになるようにしましょう


【100m200m400m共通】短距離専門の具体的な練習メニュー

メニューを作る時にはどういう練習メニューを組み合わせるかを考えます。

しかし、そもそもどんな練習があるのかを知らなければ練習メニューも広がりません。

短距離の練習はSDとショートダッシュとランメニューが基本となりますが、それら以外にも様々なメニューがあるのでご紹介します。

TT(タイムトライアル)

実際の試合を想定したシミュレーション練習となります。
練習の成果を確かめる指標になりますので、スタブロと雷管を使ってできるだけ試合に近い形式でタイムをとりましょう。
週に1回やっているところもあれば、3カ月に1回くらいしかやらないところもあります。
実践的な練習でもあるので、TTでは常に試合をイメージしましょう。

SD(スタートダッシュ)

スタブロ(スターティングブロック)を使う練習をSDと呼びます。10~60mくらいの短い距離で、スタートの技術を磨く練習です。
技術練習となるので、何セットやるとかに拘るのではなく、納得いく動きでやる方が良いでしょう。

ショートダッシュ

30~100mくらいの距離のダッシュのことです。
『30+50+100』のように伸ばしていくパターンが多いですが、短くしていくパターンもあります。
基本は瞬発系のトレーニングですが、インターバルを短くすれば持久系トレーニングにもなる陸上競技短距離走の基本的な練習と言えます

インターバル

短距離の練習はインターバルトレーニングが多いです。

設定されたレストタイムを守って、ランメニューを行うことを指します。
『200m×5』『300+100+200+100』などいろいろありますが、このような練習メニューはインターバルの一種です。

『200×5』みたいな単純なものもあれば、スピードを重視した場合には『120×4×2』のようにセットを区切って回復させて負荷を高めるパターンもあり、バリエーションは多く存在します。
距離やセット、レストタイムの組み合わせで、様々な効果を調整できるので、短距離の練習メニューの基本となっています。

レペティション

インターバルと似たようなものですが、レストを多くとって、マックスの状態で繰り返し走る練習メニューです。
リフレッシュして走るので、1本1本の精度を高くできまが、本数を多くすると練習時間がかかってしまいます。

テンポ走

テンポ走はスプリントフォームを意識する練習メニューです。
70%程度の出力で、フォームを意識して走る練習メニューのことをまとめてテンポ走と言います。

坂ダッシュ

グランドや競技場ではなく、コンクリートの坂道で行う練習メニューです。
距離や勾配によって負荷を変えられるフレキシブルな練習メニューとなっています。

加速走

助走をつけてタイムを計る練習メニューです。60mの加速走であれば、70m走ること(10m+60m)になります。
中間疾走を意識してトップスピードを上げる練習でもあり、リレーの指標にもなります。

補強

体幹トレーニング全般を指します。

腹筋や鉄棒、バランス系の練習メニューとなります。