記者
1989年 | 入社。阪神支局を振り出しに計3支局(神戸、横浜支局)で県警・司法を担当 |
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1997年 | サンデー毎日で未成年の売春、カルト教団、「芸能界と闇社会」などについて連載 |
2001年 | 社会部で防衛庁(当時)による情報公開請求者への違法な身元調査などについて調査報道し、02、03年の新聞協会賞をそれぞれ受賞 |
2004年 | 英オックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所に客員研究員として社費留学 |
2006年 | ワシントン特派員として連載「テロとの戦いと米国」「ネット時代のメディア・ウォーズ」を執筆。帰国後、10年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。編集委員に |
2012年 | 毎日新聞と琉球新報の記者交流制度で琉球新報・編集委員として那覇に赴任 |
2013年 | 17年夏までエルサレム特派員。その後、休職して現地の大学院で修士号を取得、併設のシンクタンクでテロ・紛争について研究 |
2019年 | 復職し、編集委員 |
好きなことを仕事に
「防衛庁による情報公開請求者リスト作成に関するスクープ」で、新聞協会賞を受賞した際の特集紙面
隠された事実発掘へ 情報デモクラシー 12年間の報道
大治記者の新聞協会賞受賞と毎日新聞社が取り組んだ情報公開報道の歩みを伝える特集紙面
私の現在の仕事は、編集委員として連載記事などを書くことです。
入社当時といえば、思い起こすのは内定者懇談会です。ベテランの男性記者が、「記者の仕事は3日やったら辞められない」とやけに熱く語っていました。当時はバブル全盛期。私は第一志望だった損害保険会社からすでに内定をもらい、興味本位で出席していました。でもその記者の話はとても面白くて、引き込まれました。
帰り道、ふと考えました。内定をもらっている損保会社は当時、就職先として人気ナンバー1で、ゼミの教授や家族も大喜びしていました。でもあの先輩記者は「どうせやるなら、好きな仕事をやれ」と言うのです。人気企業=目指すべき会社、と漠然と考えていた私は、今思えば、「周囲の評価」で仕事を選ぼうとしていたのです。「でも、本当に損保でいいのか。好きな仕事……」。車窓を眺めながら、自分が本当に好きでやってきたことは何だろうかと過去の足跡に思いを巡らせてみました。そして、あることに気づいたのです。当時私は、ゼミの先輩らを次々と訪ね、彼らの勤務先への評価やその話しぶり、表情、自分が感じたことなどをノートにびっしり書きためていました。それは、就職活動で必要な情報をはるかに超えたもので、今思えば詳細な取材ノートです。「これこそが、無意識のうちに面白がってやってきたことではないか」。思いは一気に確信に高まりました。「周囲の評価ではなく、好きでやってきたことを仕事にできるような会社を選ぼう」。心はもう「新聞記者」でした。
その後の記者生活は、予想以上に私を夢中にさせました。新聞記者は、名刺一枚で誰にでも会うことができます。初任地では、自治体のトップが、つい最近まで大学生だった私の質問に言葉を慎重に選びながら答え、責任の重さを実感しました。サンデー毎日の記者をしていた時は、夫の暴力を受けていた妻が、子供を守るために夫から命がけで逃げる様子を密着取材しました。「人は、愛する家族(子供)を守るためなら強くなれるのだ」と感動を覚えました。その母親の強さを伝えることで、同じ問題に悩む被害者を支えたいと思いました。
社会部時代は、調査報道班に所属しました。私は防衛庁(当時)の担当ではありませんでしたが、雑誌記者時代に記者クラブに頼らない取材手法を学んでいたので、自分なりに取材網を広げました。そして同庁が、情報公開請求者の個人情報を違法収集していると知り、証拠の名簿を手に入れて個人情報の濫用だと報じました。当時私は、社会部1年生でまだ何の実績もありませんでしたが、同僚たちは私の取材を信じてくれて、一面、社会面トップという大展開で報じることになりました。報道を受けて国会は連日、集中審議となり、当時審議中だった個人情報保護法案は廃案となり、翌年、より厳重な情報管理を求める付帯決議などを付けた新法が制定されました。
記者の仕事は、自分の問題意識で記事を書き、読む人を励ましたり、不正を追及したりすることができます。いやなことや失敗をして落ち込むこともたくさんありましたが、記者という仕事が好きなことだけは決して揺るぎませんでした。どん底の時でも、懸命にやっていると同僚たちがいつも助け、励ましてくれました。私に入社を決意させたのも、私の仕事をずっと支え続けてくれているのも、すべて同僚たちです。「人の毎日」と呼ばれるわが社で、記者を続けていられることにとても感謝をしています。
One day
- 7:00
- 朝食。ニュース・チェック。自宅近くの公園で散歩・Meditation
- 10:00
- 東京五輪のセキュリティーについて専門家をインタビュー
- 13:00
- 書店、図書館で必要な資料や論文を収集
- 15:00
- 会社で同僚記者と連載記事について打ち合わせ
- 18:00
- 在京大使館主催のイベントを取材。関係者と会食
- 22:00
- 帰宅。その日に学んだこと、感動したこと、疑問に感じたことなどをメモやイラストにして残す
- 24:00
- 就寝
Q&A
- 学生時代に打ち込んだことは?
- アルバイト、ゼミ活動。
- 仕事をする上で大事にしていること・ものは?
- よく食べ、喋り、笑い、寝る。
- 入社して意外だったことは?
- 生涯の友、と思えるたくさんの同僚に巡り合えたこと。おもろい人が多いこと。
- 現在の仕事内容や取り組む姿勢を一言で表現すると?
- 「Stay hungry, stay foolish」(ハングリーであれ、愚かであれ) (Steve Jobs)