安倍元総理が銃撃され死亡した事件で逮捕された男は、「母親が宗教にのめり込み破産して恨んでいた」と供述しています。11日その宗教団体が会見を開き男の母親が信者で献金していたことを認めました。富山県内に住むこの宗教団体の元信者がチューリップテレビの取材に応じ、多額の献金で崩壊した家庭は複数あると証言しました。

元信者:
「知った当時は、こんな教えがあるんだってうれしくなって、だけどやっていくうちにいつも『お金お金お金』なんです。献金献金。実際、現実を振り返れば家庭はぐちゃぐちゃでしたね。でもこれは『通らなければならない道』だと聞いていたので。反対されるのも摂理って聞いていたので、そういうことなんだなって」

こう話すのは、富山県内に住む女性です。


今月8日、奈良市で安倍元総理が街頭演説中に銃撃され殺害された事件。

殺人の疑いで送検された元海上自衛官の山上徹也(やまがみ・てつや)容疑者(41)は警察の調べに対し、「母親が宗教団体にのめり込んで破産した。宗教団体と安倍元総理につながりがあると思った」などと供述しているということです。

そして11日、母親が入信していた宗教団体、かつての「統一教会」、現在の「世界平和統一家庭連合」が会見を開き、山上容疑者の母親が信者で、献金していたことを認めました。

世界平和統一家庭連合 田中 富広 会長:
「破綻されたこの家庭の諸事情は私どもも知りません。ただ、破綻されたことは知っています。その後、このご家庭に高額献金要求したかということについて記録上一切残っていません」

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母親は1990年代後半に統一教会の信者となり、生活が経済的に破綻したといいます。しかし、詳しい献金の金額は明らかにしませんでした。同じ時期に信者だった県内に住む女性はこう話します。

元信者:
「いくらお金があるかと聞かれる。そんなに貯金はないって言うと、生命保険を解約したり、カードローンですかね。借りられるところまで借りるっていう。自分がやらないと。まあ強迫観念といわれたら強迫観念になるのかな」


女性は借金を重ね、高価な「つぼ」を購入するなどして、10年間で合わせて1000万円近く献金したといいます。巧妙なマインドコントロールで献金せざるを得ない状況に追い込まれたというのです。

元信者:
「(団体を)知らない人はどうしてこんなに(怪しいと)騒がれているところに行くんだろうと思うと思うんです。でもやっぱり入り口はそういうところから入らないことが多いので、それがわかったときにはすでに『これしかない』という気持ちになっているので、あとから(宗教と)わかっても、すべてにおいて説明される。『これはこういう意味がある』と言われると納得してしまう」

一方、世界平和統一家庭連合は11日の会見で、現在はコンプライアンスを徹底していて献金のトラブルは過去のことだと話しました。

世界平和統一家庭連合 田中 富広 会長:
「過去、献金に関してトラブルあったのは周知の事実です。2009年ときの当時の会長が記者会見し、声明文を発表している。それ以降の案件でトラブルはない」

しかし、霊感商法の問題に取り組む弁護士は…

全国霊感商法対策弁護士連絡会 代表世話人 山口 広 弁護士:
「全く白々しい発言だと思います、(信者は)従わざるを得ないんですよ、信者としてはノルマなんですよ、目標だとはいいつつノルマ、絶対に達成するべきノルマなんです、したがって死ぬ覚悟でやれと、何回もそんな資料を見ました。多い人は10億、20億の被害でもありましたし、そういうお金を裁判で取り戻したこともあります。現実にたくさん見ていますし、今も相談を受けているケースがあります」

県内に住む元信者の女性は、山上容疑者のように、家族が信者となり、多額の献金をして家庭が崩壊したケースはほかにも複数あると話します。

元信者:
「実際、みなさんお金の工面で苦労している人が多かったですね。家を売ったり、自分の親の財産まで何とかしようとしたりもありました。人を殺すのはよくないことですし、許されることではない。でも犯人のそのときの気持ちを思うと、切ない思いになります。そのときに何か違う方法で手立てはなかったのかなと思いますね」