人間失格(読み)にんげんしっかく

日本大百科全書(ニッポニカ)「人間失格」の解説

人間失格
にんげんしっかく

太宰治(だざいおさむ)の小説。1948年(昭和23)6月から8月まで『展望』に連載。同年7月筑摩(ちくま)書房刊。いまは狂人となった大庭葉蔵(おおばようぞう)の手記を、作者が紹介するという形式をとっている。葉蔵は人間の生活の営みが理解できず、逆に互いに欺き合って少しも傷つかずに生きている人間を恐怖する。道化によってかろうじて人間と交わっている葉蔵は、世間とは個人のことだとわかりかけて少し自信をもつが、疑いを知らぬ純心な妻が犯されて決定的な打撃を受け、ついに人間失格者となる。太宰自身の体験を大胆にデフォルメして使いながら世俗への反感を表出し、大人の世界の入口でためらう年齢の若者を魅了した。作者は、作品完成後、連載中に心中した。

[鳥居邦朗]

『『人間失格』(新潮文庫)』

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精選版 日本国語大辞典「人間失格」の解説

にんげんしっかく【人間失格】

[1] 〘名〙 人間として生きていく資格を失うこと。
※ブラリひょうたん(1950)〈高田保敬語にさわってもを立てることは許されぬとしたら、それは人間失格といわねばなるまい」
[2] 小説。太宰治作。昭和二三年(一九四八)発表。純粋であるがゆえに社会に調和して生きて行けない大庭葉蔵の姿を借りて、作者の内面的真実を吐露した作品。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「人間失格」の解説

人間失格
にんげんしっかく

太宰治の小説。 1948年雑誌『展望』に連載,同年刊。東北地方豪家に生れた大庭葉蔵の少年期から青年期の生活の秘密と,生活者として失格していく過程が3つの手記の形で語られる。自己を凝視しつつ人間存在の本質を問う傑作として,評価が高い。

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デジタル大辞泉「人間失格」の解説

にんげんしっかく【人間失格】

太宰治の小説。昭和23年(1948)発表。人間の生活の営みに適応できずに破滅していく主人公を、作者自身の体験と生涯を投影させて手記の形で描く。

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