2006年09月05日
◎言論の自由への重大な脅威だ=加藤紘一議員宅放火事件で市民ら声明:長沼節夫(ジャーナリスト)
敗戦記念日の8月15日、かねてから小泉首相の靖国神社参拝を批判していた自民党の加藤紘一衆院議員の自宅が放火・全焼した事件でジャーナリストの斎藤貴男、評論家の佐高信氏ら7氏は9月5日午後、東京・霞ヶ関の弁護士会館で記者会見を開き、「言論封じのテロを許すな」とする共同声明を発表した。会見では出席した7氏が「呼びかけ人」になった理由などを語った。発言要旨は次のとおり。(肩書は声明末尾の氏名欄で紹介されているので、記事中では敬称を略し氏名のみ)
・斎藤貴男=事件当初から街を歩いていても不安の声が聞こえてこない風潮が不気味だ。小泉首相は夏休みだったとかで、最近になってコメントしたが、「マスコミに責任がある」とも付け加えたに呆れる。私には事件を歓迎しているようにさえ見える。
・きくちゆみ=「9.11」の後、ブッシュ米大統領が「テロに付くか私に付くか」と問いかけた時、真っ先に支持表明したのが小泉首相だった。危機感を感じて会見に来た。
・佐高信=加藤さんも私も秋田に自宅があり他人事と思えない事件だ。故小渕首相はハトでも汚れたハトだったが、それでも「批判する人も必要だ」と言ってくれた。問答無用の世の中は危険。問答有用の立場で闘い続けないと私たちもメディアも消滅する。
・石坂啓=日本には言論の自由があると言ってもタブーがあり、ここ数年そのハードルが高くなり、以前、書けたことがいま、書けなくなったと感じる。
・西川重則=金大中氏が大統領当選後間もなく、「日本はまだ戦前が終わってない」と言った言葉が忘れられない。急速に言論封じが進んだ1930年代的な時代の予兆さえ感じる。
・小倉利丸=1961年嶋中事件以来、言論テロの前に私たちは前進できず、じりじり後退しているようにさえ感じる。加藤事件はその象徴だ。沈黙することによってこの状況を許してはならない。
・内田雅敏=このアピールでお終いということにはしない。声明を燎原の火のように広げたいし、行動のきっかけとしたい。
なお事務局によると、同声明への賛同署名の呼びかけは主にネットを通じて行い、5日午前現在で802人が署名した。記者も802人の1人である。署名希望者は「レイバー・ネット」その他の市民運動サイトにアクセスすること。
※ ※ ※
▲共同アピール 加藤紘一氏宅放火事件
私たちは「言論封じ」のあらゆるテロを許さない
六十一回目の敗戦記念日となった八月十五日夕刻、元自民党
幹事長加藤紘一氏の山形県鶴岡市にある実家と事務所が全焼し
た。敷地内で腹部を切って倒れている男が発見され、男は東京
都内の右翼団体幹部であることが判明した。簡易鑑定では、火
の気がなかったとされる実家一階奥の寝室で金属製の缶二個が
見つかり、周辺からは油類が検出された。状況はこの男の放火
であることを示している。確保された男は一命をとりとめたが
取り調べに応じられない状態で、真相はなお多くの点で捜査の
解明をまたなければならない。
十五日早朝、小泉首相はA級戦犯が合祀される靖国神社に参
拝した。中国、韓国などアジア諸国からの非難、国内では賛否
両論のなかでの強行だった。加藤氏は自民党内で首相の靖国参
拝に疑問を呈し、メディアでも「参拝するべきではない」と批
判を繰り返していた。男の所属する右翼団体は、過去にも天皇
訪中に関連し宮沢首相(当時)の私邸前で割腹自殺未遂事件を
起こしている。
この放火は加藤氏の言動を敵視する者による、まぎれもない
「言論封じ」のテロである。
近年、右翼は靖国問題をめぐる活動を活発化させている。
昨年は小林陽太郎富士ゼロックス会長宅に銃弾が郵送され、
今年一月には自宅玄関前に火炎瓶が置かれた。今年七月には日
経新聞東京本社に火炎瓶様のものが投げ込まれた。
小林会長は「新日中友好21世紀委員会」座長として、昨年か
ら小泉首相の靖国参拝を批判していた。日経新聞は靖国参拝の
是非をめぐる論議を呼んだ「昭和天皇発言」の富田メモを入手
、スクープしていた。
事件とこれらの関連性は、実行犯が真意を明らかにすること
をしないため、推測の域を出ない。
だから卑劣なのだ。実行犯は語らなくとも、目的は達せられ
ている。事件は自由な発言への恐喝、脅しであり、言論の自由
への封じ込めに結果することだけが明白だからだ。
自由な発言が守られなくて民主主義はない。民主主義にとって
、政治テロはけっして許されてはならない敵である。
私たちは、こうした「言論封じ」を目的とした卑劣な政治テ
ロを断じて許さない。
戦後だけでも、わが国で右翼によるテロはこれまで絶えること
がなかった。1960年、浅沼社会党委員長刺殺事件。196
1年、嶋中中央公論社社長宅殺人事件。放火事件では1963
年の河野建設相宅放火事件があり、1987年には朝日新聞阪
神支局への「赤報隊」による事件があり、1989年には本島
等長崎市長への狙撃事件があった…。
今一度思い起こそう。戦前、政治家が次々とテロに倒れ、気
づいた時すでに政党政治は形骸化し、戦争へと真っ直ぐに進む
道だけが残されていたことを。
加藤氏は「政治家である以上、どんな状況でも今後も発言し
ていく」とテロに屈しない決意を語っている。しかし、政治テ
ロとの闘いをひとり被害当事者だけに委ねてはならない。民主
主義が脅威にさらされている。
勇気の結束を示すため、私たち一人ひとりが声をあげよう。
私たちは「言論封じ」のどのような政治テロも許さない!
二〇〇六年八月二十八日
呼びかけ人
石坂啓(漫画家)
上原公子(国立市長)
内田雅敏(平和の灯りを!ヤスクニの闇へ キャンドル行動実
行委員会事務局長・弁護士)
小倉利丸(ピープルズ・プラン研究所共同代表)
鎌田慧(ルポライター)
きくち ゆみ(グロバルピースキャンペーン発起人)
木村庸五(弁護士)
斉藤貴男(ジャーナリスト)
佐高信(評論家)
三瓶 愼一(大学教員)
高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会)
西川重則(平和遺族会全国連絡会代表)
横田耕一(憲法学者・九州大学名誉教授)
(あいうえお順 9月2日現在)
・きくちゆみ=「9.11」の後、ブッシュ米大統領が「テロに付くか私に付くか」と問いかけた時、真っ先に支持表明したのが小泉首相だった。危機感を感じて会見に来た。
・佐高信=加藤さんも私も秋田に自宅があり他人事と思えない事件だ。故小渕首相はハトでも汚れたハトだったが、それでも「批判する人も必要だ」と言ってくれた。問答無用の世の中は危険。問答有用の立場で闘い続けないと私たちもメディアも消滅する。
・石坂啓=日本には言論の自由があると言ってもタブーがあり、ここ数年そのハードルが高くなり、以前、書けたことがいま、書けなくなったと感じる。
・西川重則=金大中氏が大統領当選後間もなく、「日本はまだ戦前が終わってない」と言った言葉が忘れられない。急速に言論封じが進んだ1930年代的な時代の予兆さえ感じる。
・小倉利丸=1961年嶋中事件以来、言論テロの前に私たちは前進できず、じりじり後退しているようにさえ感じる。加藤事件はその象徴だ。沈黙することによってこの状況を許してはならない。
・内田雅敏=このアピールでお終いということにはしない。声明を燎原の火のように広げたいし、行動のきっかけとしたい。
なお事務局によると、同声明への賛同署名の呼びかけは主にネットを通じて行い、5日午前現在で802人が署名した。記者も802人の1人である。署名希望者は「レイバー・ネット」その他の市民運動サイトにアクセスすること。
※ ※ ※
▲共同アピール 加藤紘一氏宅放火事件
私たちは「言論封じ」のあらゆるテロを許さない
六十一回目の敗戦記念日となった八月十五日夕刻、元自民党
幹事長加藤紘一氏の山形県鶴岡市にある実家と事務所が全焼し
た。敷地内で腹部を切って倒れている男が発見され、男は東京
都内の右翼団体幹部であることが判明した。簡易鑑定では、火
の気がなかったとされる実家一階奥の寝室で金属製の缶二個が
見つかり、周辺からは油類が検出された。状況はこの男の放火
であることを示している。確保された男は一命をとりとめたが
取り調べに応じられない状態で、真相はなお多くの点で捜査の
解明をまたなければならない。
十五日早朝、小泉首相はA級戦犯が合祀される靖国神社に参
拝した。中国、韓国などアジア諸国からの非難、国内では賛否
両論のなかでの強行だった。加藤氏は自民党内で首相の靖国参
拝に疑問を呈し、メディアでも「参拝するべきではない」と批
判を繰り返していた。男の所属する右翼団体は、過去にも天皇
訪中に関連し宮沢首相(当時)の私邸前で割腹自殺未遂事件を
起こしている。
この放火は加藤氏の言動を敵視する者による、まぎれもない
「言論封じ」のテロである。
近年、右翼は靖国問題をめぐる活動を活発化させている。
昨年は小林陽太郎富士ゼロックス会長宅に銃弾が郵送され、
今年一月には自宅玄関前に火炎瓶が置かれた。今年七月には日
経新聞東京本社に火炎瓶様のものが投げ込まれた。
小林会長は「新日中友好21世紀委員会」座長として、昨年か
ら小泉首相の靖国参拝を批判していた。日経新聞は靖国参拝の
是非をめぐる論議を呼んだ「昭和天皇発言」の富田メモを入手
、スクープしていた。
事件とこれらの関連性は、実行犯が真意を明らかにすること
をしないため、推測の域を出ない。
だから卑劣なのだ。実行犯は語らなくとも、目的は達せられ
ている。事件は自由な発言への恐喝、脅しであり、言論の自由
への封じ込めに結果することだけが明白だからだ。
自由な発言が守られなくて民主主義はない。民主主義にとって
、政治テロはけっして許されてはならない敵である。
私たちは、こうした「言論封じ」を目的とした卑劣な政治テ
ロを断じて許さない。
戦後だけでも、わが国で右翼によるテロはこれまで絶えること
がなかった。1960年、浅沼社会党委員長刺殺事件。196
1年、嶋中中央公論社社長宅殺人事件。放火事件では1963
年の河野建設相宅放火事件があり、1987年には朝日新聞阪
神支局への「赤報隊」による事件があり、1989年には本島
等長崎市長への狙撃事件があった…。
今一度思い起こそう。戦前、政治家が次々とテロに倒れ、気
づいた時すでに政党政治は形骸化し、戦争へと真っ直ぐに進む
道だけが残されていたことを。
加藤氏は「政治家である以上、どんな状況でも今後も発言し
ていく」とテロに屈しない決意を語っている。しかし、政治テ
ロとの闘いをひとり被害当事者だけに委ねてはならない。民主
主義が脅威にさらされている。
勇気の結束を示すため、私たち一人ひとりが声をあげよう。
私たちは「言論封じ」のどのような政治テロも許さない!
二〇〇六年八月二十八日
呼びかけ人
石坂啓(漫画家)
上原公子(国立市長)
内田雅敏(平和の灯りを!ヤスクニの闇へ キャンドル行動実
行委員会事務局長・弁護士)
小倉利丸(ピープルズ・プラン研究所共同代表)
鎌田慧(ルポライター)
きくち ゆみ(グロバルピースキャンペーン発起人)
木村庸五(弁護士)
斉藤貴男(ジャーナリスト)
佐高信(評論家)
三瓶 愼一(大学教員)
高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会)
西川重則(平和遺族会全国連絡会代表)
横田耕一(憲法学者・九州大学名誉教授)
(あいうえお順 9月2日現在)